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秋山草堂〇〇七部屋・映画「カジノ・ロワイヤル」

DATA

カジノ・ロワイヤル

2006年度作品
監督 マーティン・キャンベル
脚色 ニール・パーヴィス
   ロバート・ウェイド
   ポール・ハギス
音楽 デヴィッド・アーノルド
主題歌「You Know My Name」クリス・コーネル

出演
ジェームズ・ボンド
 …ダニエル・クレイグ
ヴェスパー・リンド
 …エヴァ・グリーン
ル・シッフル
 …マッツ・ミケルセン

 …ジュディ・デンチ
フェリックス・ライター
 …ジェフリー・ライト
ルネ・マチス
 …ジャンカルロ・ジャンニーニ
ソランジュ
 …カテリーナ・ムリーノ
ディミトリオス
 …サイモン・アブカリアン
モロカ
 …セバスチャン・フォーカン
ミスター・ホワイト
 …イェスパー・クリステンセン
ヴァレンカ
 …イヴァナ・ミリセヴィッチ
ヴィリアーズ
 …トビアス・メンジース
マダム・ウー
 …ツァイ・チン
グラフィン・フォン・ウォーレンスタイン
 …フェルシュカ
カミノフスキー
 …ラザー・リストフスキー
トメリ
 …ウルバノ・バルベリーニ
ギャラルド
 …チャーリー・レヴィ・レロイ

あらすじ

殺人許可証を持つ“00”に昇格したボンドは、テロリストの資金源を追う過程で旅客機爆破の陰謀を阻止した。
テロリストの資金運用のために旅客機爆破を仕組んでいたル・シッフルは、その所為で莫大な損失を抱え込む事となり、カジノでそれを埋め合わせようと企む。
ボンドはル・シッフルを破産させる任務を負って“カジノ・ロワイヤル”に乗り込むのだった……。

解説

シリーズ21作目で六代目ボンド=ダニエル・クレイグ初登場作品。
原作の骨子をそのまま使いながら、ちゃんと現代の作品に仕上がっている所が見事です。
映画21作目でここまでフレミングの原作を大切にした作品が作られるとは正直思っていなかったので、初めて見た時は感動的ですらありました。
“外套と短剣”物語を見事に甦らせた製作者の英断に拍手を送りたいです。

ボンドとヴェスパーのラブストーリーと、ル・シッフルとの対決と言う二つの要素からなる原作のストーリーを上手く使って、ジェームズ・ボンド=007の誕生秘話的に纏め上げた脚本の上手さ。
原作には無いアクションシーンを付け足すためのプロットの膨らまし方の上手さにも唸らされます。

役者もいいです。
まず、何といってもNEWジェームズ・ボンド=ダニエル・クレイグの圧倒的な格好良さ。
外見からして先代ボンドたちと明らかに雰囲気が違うのですが、性格的にも先代たちがボンド映画のお約束に守られて結構余裕があったのに対し、クレイグ・ボンドは例えるなら豹のようなしなやかさと獰猛さを合わせ持ち、獲物を狩るハンターのような雰囲気を常に漂わせているところが、なんとも言えずワクワクさせてくれます。
彼の鍛え上げられた肉体から生まれる説得力とそれを上手く活かしたアクションシーンがとても良いです。
性格的にも荒っぽく血の気の多い人物として描かれていて、今までの映画のボンド像とはかけ離れていますが、原作のボンド像にはピッタリで原作に忠実なこの作品にはベストのキャスティングだったとさえ思えるほどのハマりようです。
その上、荒っぽいだけではなく、繊細な面や可愛げのある所を時折垣間見せ、ボンドをとても魅力的なキャラクターに演じています。

ヴェスパー・リンド役のエヴァ・グリーンも良いです。
勝ち気で儚げなヴェスパーを見事に体現していて、その美しさには溜め息が出ます。
ホテルのレストルームでメイクをする彼女の美しさといったら!

この作品は、ボンドとヴェスパーのラブストーリーの側面も強く、二人の仲が近づいたり離れたりする様が丁寧に描かれていてとても魅力的です。
台詞もとても練られていて、役者の魅力的な演技も相まって、いつも以上の深みが感じられます。

007ファンとしては、Qやマニーペニーが出てこないのは寂しいですが、非情な世界に生きるボンドを強調する為にあえて出さなかったという理由もよくわかるし、この作品に限れば出さなくて正解だったと思います。

これまで何度か路線変更を繰り返してきた007シリーズですが、21作目のこの作品で初めて本当の意味での再スタートが出来たと言える傑作だと思います。

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