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トゥモロー・ネバー・ダイ
1997年度作品
監督 ロジャー・スポティスウッド
脚本 ブルース・フェアステイン
音楽 デヴィッド・アーノルド
主題歌「TOMORROW NEVER DIES」シェリル・クロウ
出演
ジェームズ・ボンド
…ピアース・ブロスナン
エリオット・カーヴァー
…ジョナサン・プライス
ウェイ・リン
…ミシェル・ヨー
パリス・カーヴァー
…テリー・ハッチャー
ヘンリー・グプタ
…リッキー・ジェイ
スタンパー
…ゴッツ・オットー
ジャック・ウェイド
…ジョー・ドン・ベイカー
ドクター・カウフマン
…ヴィンセント・スキャベリ
M
…ジュディ・デンチ
Q
…デズモンド・リューウェリン
マニーペニー
…サマンサ・ボンド
ロビンソン
…コリン・サルモン
ローバック提督
…ジョフレー・パーマー
南シナ海で航海中の英海軍艦デヴォンシャーが撃沈され、中国軍のミグも撃墜される事件が起きた。
英中間に緊張が走り、英海軍は中国軍の仕業と断定。報復の為に艦隊を中国に向けた。
しかし、新聞「トゥモロー紙」のあまりにも早く詳し過ぎる、この事件に関する報道を不審に思ったMとボンドは、「トゥモロー紙」のオーナー、エリオット・カーヴァーの調査に乗り出す。
開戦までのリミットは48時間。
カーヴァーに接触したボンドの前に、中国情報部の女性エージェント、ウェイ・リンも現れ……。
シリーズ18作目。
プロット的には「007は二度死ぬ」や「私を愛したスパイ」の焼き直しとも言えますが、現代的な工夫が凝らされ、只の焼き直しに終わらないタイトな逸品に仕上がっています。
前作「ゴールデンアイ」も現代的なリニューアルを試みた作品でしたが、今作は前作以上に「007映画の構造改革」を目指した作品と言えるのではないでしょうか。
シナリオ面では、007シリーズのお約束になってしまっているシーンを、要素にまで細かく分解、そして再構成して、テンポ良くだれないように配慮してあるのが見事です。
例えば、Q課のシーンを「ボンドとQの漫才」と「珍兵器コント」という要素に分解して、前者を空港でのボンドとQの会話に、後者をウェイ・リンの隠れ家でのシークエンスに割り当ててありますし、一連の「マニーペニーとの会話〜Mとの会見」の流れを移動中の車内のシーンにコンパクトに纏め、緊張感を高めています。
あの車内のシーンは何度見てもゾクゾクさせられます!
あと、音楽が良いですね!
作曲のデヴィッド・アーノルド自身、子供の時に「007は二度死ぬ」を見て以来の007ファンだと言うだけあって、ファンが007映画の劇伴に望む物を見事に提供してくれています。
ジョン・バリーメロディのおいしい所を抽出して再構成したような感じで、オリジナリティはあまり無いかも知れませんが、盛り上げて欲しい時に盛り上げてくれるので気持ちいいですね。
特にアバンタイトルの武器マーケットのエピソードで掛かる「White Knight」という曲が素晴らしく、シチュエーションと演出の良さも相まって、怒濤の盛り上がりっぷりに涙が出そうになりました(笑)。
ブロスナンも、前作の若造っぽいイメージが薄れ、時折ボンドの暗い一面も覗かせて深みを増しています。
もう、どっから見てもジェームズ・ボンド以外の何者でも無く、文句の付けようがありません。
ミシェル・ヨーも、とても魅力的です。
手放しで美人とは言い切れないアクの強い顔の彼女なのに、すごく美人に見えるのはナゼ?(笑)
悪役では、カーヴァー役のジョナサン・プライスも魅力的ですが、ワンシーンだけの登場ながら妙にキャラの立っていたドクター・カウフマンが、私的にかなりお気に入りです。
個人的にはかなり好きな作品なのですが、一つだけ大きな欠点があります。
クライマックス、ステルス艦が英海軍に発見された時点で、物語上の一番大きな危機である“英中開戦”の事態は避けられてしまっていると言う事です。
要するに、一番大きななサスペンスがクライマックスの早い段階で無くなってしまうという事なのです。
もうちょっと、“英中開戦の危機”を後の方まで引っ張るように出来なかったんですかねぇ。