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秋山草堂〇〇七部屋・映画「リビング・デイライツ」

DATA

リビング・デイライツ

1987年度作品
監督 ジョン・グレン
脚本 リチャード・メイボウム
   マイケル・G・ウィルソン
音楽 ジョン・バリー
主題歌「THE LIVING DAYLIGHTS」A-HA

出演
ジェームズ・ボンド
 …ティモシー・ダルトン
カーラ・ミロヴィ
 …マリアム・ダボ
ゲオルギ・コスコフ将軍
 …ジェローン・クラッベ
ブラッド・ウィティカー
 …ジョー・ドン・ベイカー
レオニード・プーシキン将軍
 …ジョン・リス=デイヴィス
カムラン・シャー
 …アート・マリク
ネクロス
 …アンドリアス・ウイスニウスキー
ソンダース
 …トーマス・ウィートリー
Q
 …デズモンド・リューウェリン
M
 …ロバート・ブラウン
フレデリック・グレイ国防大臣
 …ジェフリー・キーン
ゴーゴル将軍
 …ウォルター・ゴテル
マニーペニー
 …キャロライン・ブリス
フェリックス・ライター
 …ジョン・テリー

あらすじ

ボンドの手によって、西側への亡命に成功したソ連の高官コスコフ将軍。
彼によれば、KGBのプーシキン将軍が、西側スパイの大規模な暗殺計画を企てているという。
Mは、プーシキン暗殺をボンドに命令するが、ボンドはこの話が腑に落ちないでいた。
ボンドが知っているプーシキン将軍は、そんな事を計画するような狂人ではないのだ。
任務を引き受けながら、ボンドは独自の調査を始めた……。

解説

シリーズ15作目。
四代目ボンド、ティモシー・ダルトン初登場の作品です。
長年続いたムーア・ボンドのイメージを軽く吹き飛ばしてしまうような新鮮な魅力と、初期の作品(特に「ロシアより愛をこめて」)を彷彿させるシリアスさとロマンティックさを感じさせてくれる作品です。

フレミングの原作から離れていく一方だった映画007シリーズ(もちろん部分的には原作を使ってはいましたが)でしたが、この作品では原作短編「ベルリン脱出」のメインプロットをアバンタイトルが終わった本編冒頭に持ってきての、いきなりのシリアスな展開にワクワクしますね。
亡命を成功させる為に、敵スナイパーを狙撃する任務なんて、ムーア・ボンドならちょっとあり得なかったシチュエーションじゃないですかね(見られるものならムーアボンドでも見てみたかったですが)。
タキシードの襟を立てて、真っ黒の服になるギミックも地味に格好良く、外を伺うダルトンの暗く鋭い表情も絶品で、どこか「ロシアより愛をこめて」の例のアニタ・エクバーグの口のシーンを思い出す名シーンになってます。

また、原作ではお馴染「スマイアート・シュピオナム(スメルシュ)」の名称も、映画では初期の作品でチラッと名前が触れられて以来、久しぶりに復活。
原作好きは、それだけでワクワクさせられますな!

キャスト面では、何と言っても、ダルトンの魅力。
ダルトン・ボンド初お目見えのファースト・カットから、「この人物はジェームズ・ボンドだ」と見るものを納得させるあの眼差し。
とにかく、シリアスなシーンや怒ってるシーンとかの決めの表情が抜群に格好良いです。
また、ふとした優しい表情もまた良くて、シリアス寄りのこの作品は、そんなダルトンの魅力満載な訳なのです。

ただ、その一方で、驚いた顔やにやけた顔がちょっとだらしなくて、その立ち居振る舞いも重いというか鈍いというか、いささかスマートさに欠ける嫌いがあるのは否めません。
そんな弱点も、個性とも取れない事もないのですけどね。

ヒロインのマリアム・ダボも、どこかオードリー・ヘップバーンを彷彿とさせる清楚な雰囲気が、魅力的です。
痩せぎすで露出度も低くセクシーさとは程遠い彼女でしたが、ナース姿は合っていてなかなか良うござんした。
ダルトン同様、ちょっと鈍くさそうなのも愛嬌ってとこでしょうか。

後半のアフガン・ゲリラのシークエンスは、全体のまとまりの点でも、物語の分かりやすさという点でも、正直カットした方が良かったと思われますが、それ以外は(細かい欠点はあれど)概ね文句のない内容です。
ある意味、自家中毒気味だったシリーズの新たな可能性を拓いた作品だといえるでしょう。

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