教師の子ども「見取り力」を自ら鍛える

〜授業の省察方法と次時への生かし方〜

                           上智大学総合人間科学部

                            教授 奈須 正裕 先生

1 授業検討の仕方

1時間の授業検討は一晩かけてが本当。現実は、20分ぐらいしかけていないのではないか。1時間の授業の中には、いろいろな出来事がある。荒い分析では、授業改善にはならない。授業が上手になるために検討するのだから、細かくする。ラフなレベルにしない。

研究授業を記録し、夏休み1日かけて検討する。このあたりが問題という点は出しておく。

 

2 単元について

 単元のながれの確認

原田 いりこを食べた。大きなボールに入れ、小皿で取り分けて食べた。

奈須 指導案は先生のつもり 実際にしたかどうか

活動のための発問 活動した? させるために何をした?

原田 いりこを食べた子どもの反応は「にがい」「からい」「歯にはさまる」など、ポジティブではない。

原田 いりこの消費量の減少を伝えた。

子どもは、最初から料理などつぶやいていた。

考えさせては話し、もんもんとしていた。

奈須 子どもの生活経験や知識の中で、何が足場となって単元が成立していると思うか。子どもの目線で見ると、通のいりこを名産品として自覚しているか。子どもにとっては、目にしている、当たり前の物。全国では特徴的なことも、その地域では珍しくないこともある。(日産の坐間工場)

     なぜ先生がいりこを出したのか?子どもと共有できていたか?

     よく食べていておいしい物という意識 おいしくなくても名産など

  原田 子どもにとってはよく目にしている 季節ごとの変化など

  奈須 「そうか、先生はびっくりした。先生が育ったところではない。」と子どもに話

てみては・・いりこは通だけ。他にはない。

     問題意識が弱い。先生が考えようかと言うから考え始める。

     家が工場の子どもを教材にする。

     その子の工場の写真を教材にする。

  原田 子どもが生活の危うさを感じ不安にさせるのではないかと思ってしなかった。

  奈須 自分にとって切実な問題 自分ごととして考えることができる。クラスみんなで支えることもできる。

      15年前より減っていることを、グラフや地図で表し、掲示する。

      クラスの子の家で工場がつぶれた子がいないか配慮が必要。

      切実さ深刻さは、リスクがある。しかし、リスクは子どもを本気にさせる。

      温室で育ててはダメ。強い風、強い雨も必要。ただし、社会現実や人権など

子どもが背負いきれない物は避ける。

 いりこについて、T君の父親に話を聞く。父親のビデオ、T君は喜ぶのでは?

 親と教師に信頼関係があればしかけられる。父親に、困っていることや事実

を話してもらう。子どもがどう受け止めるのか。

 子どもと問題の出合わせ方が大事。工場に行き話を聞く。事実と対面させる

ことが大事。

  原田 2次、父親と魚市場で会わせたので、魚がどんどんあがってきて、子どもの意識がそちらにいった。いりこを作っていない工場で話を聞けば疑問が持てたかもしれない。春は動いていたのに・・

  奈須 子どもの目線で考える。「いりこを食べるとにがい。」ここでもう×。

      子どもがおいしいと思ういりこを使った料理を作らせると良かった。

      かりんではなく、かりんジャムなど。

      これを出したら、子どもがどう反応するか。子どもの反応をみて、次に進め

     る。指導案しない活動がいっぱい。これを出したら、何と言うかな。

      「おじさんは作りたいけど、魚があがらない。」「魚のせりでは高い。」

      先生が行きたい問題へ、事実、事象と出会わせる。出会いにより、子どもの側に起こってくる反応 子どもからたち現れている問題をどう進化させていくか。

      その事実と出会わせれば、いろんなことを聞き、問う。子どもに何が残っているか拾う。話させる。→授業中は子どもの発言が抑制されているので、休み時間や給食時間など、世間話のなかで、「昨日、いりこどうだった?」と尋ねる。

      インフォーマルな場での、暮らしの話、学習インタビュー

      本次をつらぬく問いは?板書は?

  原田 どんないりこの良さを伝えられるか(いりこにはどんな良さがあるのか)

  奈須 S君が言うことが分かって指名したのか。

  原田 健康に良い。おいしい、料理にかえられる。

  奈須 NさんMさんは、知らなくて深まる。みんなOKですか?って何がOKなのか?

  原田 成長を育てる。背が伸びる。がOKか。謙光内容はS君だけ。

  奈須 117Mさん 作ることだけでええん?

     先生の言っていることだけ、答えたらいいのか。先生は何を求めているのか。

先生に答えなくっちゃという思い。

     Mさんは、Nさんの料理の種類にたいして、料理だけでいいのかと聞いている。

     126「ねえ、それを教えてもらった人に、どんないいことがあるのかね。」と

いう問いは、どんないりこの良さにつながっていない。

Mさんは気づいている。ええん?名前以外にどんなことを言ったら・・と思っ

ている。料理がどんなふうにいいかを言わなければ・・NさんYさんの意識を修

    正ようとしている。(いい子だね)Mさんの気遣いをひろえていない。細かい返し方で修正していく。奥にあるものを見取る。Mさんの指摘から入ると、Mさんとの関係で入ることができる。問いに立ち向かう意識。Mさんは、進行を自分のこととしている。みんなの学を自分で進め喜びとしている。先生の言うところを言っている。

     子どもの発言で、思いがけないこと、分からないことがある。

     (先生のなかに、先生が言うこと、子どもが言うはずのないことという意識)

     子どもがよく分からないことを言った時、ボケたことを言う時は、立ち止まる。

 その子の文脈でその子の言っていることを解釈。

 突然「わかった!」と叫ぶ子がいる。さっきからやっていて今分かる。

「ずっと考えて今分かったんだね。」という言い方をする。これが子どもを大切

にするということ。

「さっきのことで分かっていない人いますか?」とみんなに聞いてみる。

「分からなくて分かったら説明できますか?」と言った子に聞いてみる。

 今ながれている流れ、違うながれに乗ってみる。その子の位置から授業をながめてみる。

 教師はぐちゃぐちゃで終わると不安になる。しかし、「いろいろお話して分からなくなった。次、どっから始めるか考えてきてくれる?」と言えばよい。

 子どもを中心にするためには止ること。小技ではなく、分からなかったら止る。

 ブレーキを踏む。遅れても、後半スピードを出して振り落とさない。

 139や144に対しては、もっと大げさに返す。

「食べ物は健康につながるんですね。」S君を元気にする。授業にかかわっている意識。

151の40代はながさないとラインがずれる。

  原田 食べる人のことを考えるようになるかな

  奈須 ついのりたくなる。無思考にのっている。おふざけモードにのっている。

     157 159 161 火に油を注ぐ 落とし穴 自然体ででる

     教師の踏み込みを考える。

     今のことに対して、次、何を生み出すか。ズレた時、ズレたポイトから最後のポイントを見据えて・・どのくらい遅くまで見ているか。

     ここでこの話をしたら、最後にどうつながっていくか。

     196で対象意識を持たせたいのであれば、「そうか、40代でも、お年寄り

     子どもでもいいのか。それぞれに良さは同じかな?年代によって同じかな?骨  

     は子ども・・でも、お年寄りにも骨粗しょう症とか・・・」

     具体的に、「こういういりこの良さがある。」何が問題か具体に則して、丁寧な押さえ込みが必要。いろいろ、何かではない。具体的に・・終末が違う。

     T君 ラインの違い 行ってはいけない。

     197 ここでこんないりこの良さが一段落ついた

     T君はこの時、手をあげていたか。

     いつT君が活躍できるか見えているか。

     ラインは単純で明晰 白黒ではなく豊かなもの

     T君にいくことで、ラインがぼける。2つの問いで授業を動かしている。良かれと思ってやっているけど、不完全。T君は大事なカード。どこで使うか。ぐっとこらえて粘る。ゆっくりときる。

     209 Yさんの発言を止めている。196の教師の言葉でYさんは言えなかった言葉があるのではないか。話の切りかわりが分からなかった。子どもがラインを追えなくなった。T君にラインがかわることを告げる。「お話かわっちゃうけど、いいですか。」「あと、しとかなくちゃいけないことはないですか。」など、ラインの切りかえを共有していないと、子どもがでにくくなっている。手をあげていいのかが分からない。

     子どもは次の時間にやることは知らない。学習の手引きがない。

    「今、こういうことなんだよ。」と意味づけ共有化しなければ、今聞かれていることだけ答える。結びつける場所が分からない。全体の構想が分からないと・・

    ラインを切りかえる宣言。「ちょっと、次のこといいですか?」板書

    全体の文脈がみられる、授業構造はシンプルに 1つの答えは1つの問で

     280 Nさんの発言をもう1回丁寧に整理していく。まず〜で、なぜかというと〜。

     287 他に何? エコ? ラインを崩す。分からないところは止る。

     ながしどころ・・40代 エコには反応しない。

     止まらなければならないところ、つかみどころは遠くをみて決める。

     1時間の授業の最終、誰の材料をどう扱うかが見えている。あいまいではない。

     迷いがない。子どもを無視することではない。細かくよめていたら、授業ライン予想

     主要な感心ごと エコ 今やる共通問題か 40代 ちょっと止るのみなど判断 ラインやゴールとの関係 今起こっていることの位置、止ってみて、違っていたらながす。止らなかった方がいいのかが分かるのは、丁寧な授業分析から

     288 具体的にきちんと押さえる。

     291 293 何か 全部が具体的に 具体がはっきりしないから言えない。

     294 先生がまとめないからNさんがまとめて言っている。

     NさんMさんで授業をしている。NさんMさんのT・T     

     303 がんばったかい あいまい 迷いがある いろいろでしたね こんなかんじ 具体的にやっていない どんな感じか?

     304 「料理を作るぞ。」ただ料理を作りたいだけではなく、300の発言で

    体に良いことは入っている。料理を作る気持ち 健康に良いことを押さえてもよい。

     371 Yさんの発言に対して 止るところ「どういうのを入れたいの?」

    

教師の思考を内生する。私がこうした時に、考えていたこと。考えていなかった

ことを内生する。自覚的に 意識的に

 こうすべきじゃない時にこうした 判断をもたらした思考をふりかえる。

 どういうふうに考えていたか。考えの筋道、応用のきく筋道となる。

 子どもの発言が分からなかった時、つき進むと子どもを傷つけ、おもしろい物を落とす。

 どうしようかな ここでこう反応すると迷ったら、遠くでの意味を考え、止か進むか決定する。

 反射的に対応してしまったら 考えず反応している自分を止るくせ

 自分の思考のルール 自分のやっていることを自覚的に制御 

うまくいく時、いかない時、その時の自分の思考を振り返る。

 あいまいさは思考・判断のブレ

       

3 単元構想の書き方 下線部 奈須先生からの提案

  1次 @(10時間)

いりこ工場へ見学に行き、そこで働く人と仲良くなり、いりこ工場がかかえる問題点に気づく

問題点

→中身がない 先生がどう気づいているか 枠にいれようとしない 書くべきことは書いて 枠にしばられると思考が止る まずは手書き

 

  1次 A(4時間)

自分が考えた、問題点を改善するための作戦を発表し合い、学級全体での取組を決定する。

自分が考えた

→どんな問題を持ち込んでくるか予想

改善

→工場の復活 改善のゴールがない ズレている

 

2次(20時間)

問題点をよりよくしていくための活動に取り組む。

・いりこがもっと売れるようにするためにいりこのよさ(おいしく食べられる方法・健康によい影響を与えること)を調べ、PR活動に取り組む準備を行う。

・いりこの漁獲量が減っている原因を調べ、環境問題に関心をもつ。環境問題を改善していくための生活の仕方を考える。

→よりよくのイメージ ゴールのズレ

 活動して何が変わるか、子どもの活動がみえてこない

 上記の2点はトップでも良い。問題改善のための作戦

 子どものひろってくる物から構造していけるか

 2つ以上ひろってくることも予想する。どんな方法で出し合っていけば2つになるのか。子どもの目線で検討しているか。

 

○地域で働く人々の思いや願いの存在に気づき、自分の将来の生活について考えるきっかけの一つとして欲しい。

→だれのこと?いりこ工場の人 それぞれの人の立場で考える はっきりしないと弱い。

 

教材・・具体的なつめ 

    ラフな教材 何が出てきてもなんとかなるようにではそこそこにしか扱えな             

      い。

      〜の良さって何?教材研究の足りなさがあいまいになったりぶれたりする。