続・あつぎの花めぐり

身近な季節の花を散文と写真で紹介するコーナー 

紹介者: (サークル愛川自然観察会) 山口 勇一

 

2009年 1月〜201012月は バックナンバーでご覧ください。

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2011年  1

 

マンリョウ77:マンリョウ(万両)の戦略 小鳥の餌となる実は色鮮やかで光沢があり、柔らかく、水分を含んだものが多い。鳥は空を飛ぶために身が軽くなくてはならないことから、食餌された食べ物は短時間で消化管を通り糞として排出される。一方で、恒温動物として体温を維持するために多くのエネルギーを必要とするため絶えず栄養価の高い餌を食べ続けなければならない。餌の少ない冬場に、小鳥たちの需要を満たす餌としてマンリョウをはじめとした液果がある。集団で飛来し、あっという間に食べ尽くすことがある。
好物を提供する側にとっては、小鳥たちに気づかせるため実を鮮やかに目立たせることが効果的だ。果肉の栄養分を提供する代わりに、消化しないままに消化管を通った種子を遠くに運ばせる戦略なのでる。ヤブコウジ科の常緑低木。集落周辺の林内などに普通に生育。

 

 

スイセン78:冬に咲くスイセン(水仙)
 スイセンには様々な園芸品種があり、春になるとあちこちの花壇を彩り、愛好家も多い。
園芸植物は人の肥培管理のもとで生育しているのが普通であるが、花壇から逸出し野生化し、自生するようになったスイセンがある。暖地の海岸付近の各所に群落をつくり、花の名所にもなっているところもある。これはニホンズイセンと言う耐寒性の品種で、1月に入ると咲はじめる。日本古来の在来種かと思いきや地中海沿岸原産で、中国を経由して中世に移入された園芸種である。厚木、愛川、清川では堤防や集落周辺の畑道などに点在しているのを見かける。
花の中心にある黄色い筒状の部分を副花冠と言い、スイセンの仲間の特徴である。全草が有毒だが、鱗茎(球根)に特に毒成分が多い。ヒガンバナ科の多年草。

 

79:白い毛を付けたコボタンズル(小牡丹蔓
 冬の枯れ枝に残るコボタンズルの実は、物語の中の白いひげの翁を連想させる房状の白毛が付いている。冬の低い日差しを向かい側から受けるとひときわ輝いて見え、冬ならではの風物詩だ。野外散策での小さいがホットな発見の一つになる。この白毛は種子を飛散させる役目を担い、やがて春風の中に舞っていくことだろう。
コボタンズルはキンポウゲ科のつる性植物で、同じ仲間にボタンズル、センニンソウ、などがある。いづれもつる植物で、他の樹木を覆いつくすように伸び、初秋になると白い花を密生させて咲くことからよく目立つ。厚木、愛川、清川では丘陵地や林縁の他、市街地の植え込みでも見かけることがある。テッセン、クレマチスなどの園芸種も同じ仲間である。

 

2011年  2
80:春の香りのフキのとう(蕗の薹)
 陽だまりの土手や水辺にフキの蕾が顔を出している。立春を過ぎたころから立ちを始め、花茎を塔のように伸ばしながら黄緑色の花を咲かせていく。「ふきのとう」と呼ばれる所以である。長いものでは30pにもなる。
厚木、愛川、清川では丸い蕾の段階を「ふきのたま」とも言い、春の香りを届けてくれる一番手で、本格的な春の近いことを告げるものである。フキは独特の苦味と香りが好まれ、旬の味覚を求めて林縁や川辺の陽だまりにフキ採りに出かける人もいる。
 野菜として店頭に並ぶ長いフキは東北以北に自生する大型のアキタブキの葉柄で、各地で栽培されている。なお、同じ「フキ」を名乗るノブキやツワブキはフキとは別な属の植物である。キク科フキ属の多年草、雌雄異株。

 

アオキ81:アオキはみどりの木(青木)
 アオキは名前のとおり、葉も茎もあお色(緑色)である。日陰でもよく育つ低木で、厚木、愛川、清川では人家近くの林内で普通に見られる植物である。葉は大きく肉厚で光沢があり、実は2p程の楕円形で冬の時期に真っ赤に熟す。葉も実も美しく耐寒性にも優れているので、庭木としてもよく植えられている。
 雌雄異株であり、雌花と雄花では形や色の違いが明瞭である。春の開花時には見逃さず観察されたらいかがか。
 筆者が子供のころ、近くの山に入ってアオキ刈り、枝を束ねて運び、牛を飼っている農家に持っていくと、緑の少ない冬場の牧草代わりの飼料として喜ばれ、お駄賃がもらえるということがあった。園芸種には葉にの入ったものや黄色い実のものがある。ミズキ科の常緑低木。

 

セイヨウアブラナ82:セイヨウアブラナ(西洋油菜)
 アブラナは食用油の「菜種(なたね)あぶら」の原料となる在来植物で、昭和40年ごろまでは水田の裏作として厚木、愛川、清川でもあちらこちらで栽培されていた。田園の早春の風物詩として黄色く広がる菜の花畑を記憶している人もいるだろう。
 「菜の花」と言えばかってはアブラナの花を指していたが、現在ではアブラナ科の花の総称として使われているようだ。ハクサイ、コマツナ、チンゲンサイなども同じ仲間で、収穫されず採り残された畑で黄色く咲いている姿を見かけることもある。
セイヨウアブラナの仲間は明治時代に北ヨーロッパから移入されたものとのこと。その中から、強い繁殖力を持つようになったものが野生化したものであると言われている。越年草。

 

2011年  3

アケビ83:アケビは開け実(木通)
 アケビはつる植物で、手入れの行き届かない林内や林縁樹木の高いところにまで絡まっていることが多い。
 早春に新芽の伸展とともに雌雄異花を咲かせる。どちらも花びらは紫色で3枚。雄花は6本の雄しべがみかんの房状に、雌花はバナナの形をした69本の雌しべが放射状につき、すぐに見分けられる。
雌花の柱頭(先端部)には、甘みを持った粘着性の液体が付いており、花粉がここに付着する。受粉した雌しべは成長して秋になると10cm前後の果実となり淡紫色に色づく。食べごろは縦に割れ目が少し入ったころである。
小葉が5枚のアケビに対して3枚のものをミツバアケビと言い、厚木、愛川、清川ではこちらの種の方が多く見かける。アケビ科の半落葉性つる樹木。

 

 

タチツボスミレ84:身近なスミレはタチツボスミレ(立坪菫)
厚木、愛川、清川には20種類を超えるスミレ類が自生していると言うと驚く人もいられるかもしれない。さて、何種類を見分けることができるでしょうか。スミレ類は花期が短いが、4月初旬をピークに種類によって微妙に開花時期に違いがある。また、場所によって自生する種類も異なる。市街地でも何種類も見ることができ、時にはアスファルトの割れ目にけな気に咲いているのを見かけるのもある。同じ道を何回か歩くうちに何種類もの発見があるかもしれません。
 身近で最も数が多いのがタチツボスミレで、あちこちで群生地を見かける。スミレ科スミレ属には他にアオイスミレ、ノジスミレ、コスミレ、ヒメスミレ、スミレなどがある。園芸種のビオラはスミレ属の学名Violaを日本語読みしたものである。

 

 

2011年  4月

オオアラセイトウ85:オオアラセイトウはアブラナの仲間
 オオアラセイトウは近年、厚木、愛川、清川ではありふれた春の植物の一つとなってきている。中国原産の外来植物で、ハナダイコン(花大根)、ムラサキハナナ(紫花菜)、中国名を日本語読みしたショカッサイ(諸葛菜)などの名前で親しまれている。
本種の属するアブラナ科の植物は4枚(四数性)の花びらが十字形に開いて咲くことから十字架植物との呼び名もある。多くの種が秋に発芽し冬を越して本格的な春が近づくにつれて枝葉を伸長させながら開花する。同じ仲間のダイコンは白、アブラナは黄色と、花の色はバラエティに富んでいる。種子を生産し終わると夏になる前に枯れていく。
また、モンシロチョウが盛んに産卵に訪れる。春の風物詩だ。若い葉は幼虫(青虫)の好物の食草となっている。越年草。

 

 

ヒメオドリコソウ86:ヒメオドリコソウ(姫踊子草)
 ヒメオドリコソウがあるならオドリコソウもあるのだろうか。厚木、愛川、清川には両方とも自生している。
 ヒメオドリコソウは全体に小型で、節間がつまっていて葉が重なるように付き、花も小さい。明るい草むらにホトケノザやオオイヌノフグリと混生していることが多いが、場所によっては周囲を埋め尽くす程に群生することもある。ヨーロッパ原産の外来植物である。
対して、オドリコソウは日本在来の自生種で、前種より大型である。花は大きて白色に近く、節を取り囲んで多数の花が輪のように付く(輪生)。この様子が踊り子に例えられ種名となったものである。湿った半日陰を好む植物で、こちらの種の自生地は少ない。シソ科、越年草。

 

 

カントウタンポポ87:カントウタンポポ(関東蒲公英)

 名前のとおり関東地方に分布するタンポポである。ちなみに、エゾタンポポ(蝦夷)、トウカイタンポポ(東海)、カンサイタンポポ(関西)など古来より各地方に独自に定着している種類がある。厚木、愛川、清川には、本種の他に外来種のセイヨウタンポポがあり、稀にシロバナタンポポ、アカミタンポポがある。
カントウタンポポは住みにくい市街地を避け、自然度の高い郊外で集団を形成して生活圏を維持している。それに対し市街地に見られるものはほとんどがセイヨウタンポポで、人の生活圏内でもたくましく生きていける能力を持ち、カントウタンポポの代役を担っているようだ。地域の自然度を推し測るバロメータとして、散歩の折にこれらのタンポポの自生分布を調べてみてはいかがでしょうか。キク科の多年草。

 

 

2011年  5月

 

アカメガシワ88:アカメガシワ(赤芽柏)
 アカメガシワの和名は、春の芽吹きから初夏のころまでの若葉が鮮やかな赤い色をしていることと、葉の形がカシワに似ていることから名付けられたものである。
厚木、愛川、清川では、山地の高いところを除いて、日当たりのよいところにはどこでも普通に見られる落葉広葉樹である。
葉や若い茎を虫眼鏡で見ると放射状に赤く輝く星状毛(針のような毛が放射状なったもの)が見られ、興味深い。これが葉の赤色の正体である。ぜひ一度見てほしい。
さぞかし秋の紅葉も赤色と思いきや、黄色の色づきの美しい黄葉(こうよう)である。
材は柔らかく軽いため、マキや炭としての価値は低く、用材の用途もない。この時期、樹洞からヒラヤマコブハナカミキリが発生することがある。トウダイグサ科の亜高木、雌雄異株。

 

ギシギシ89:ギシギシ(羊蹄)
ギシギシとは妙な名前と思う人もいるのではないだろうか。この植物を見て、一言でその特徴を言おうとすれば、ギッシリと実がついているとか、ギシギシと鳴りそうだとかと表現するのにふさわしい姿をしている。たくさんの花や実を付けた植物は多いが、ギシギシは正にギッシリ感があり、名前のいわれであると推測できる。よく見ると実は果穂の節に輪生し、一つ一つの実に突起の付いた3枚の翼があるせいでもあろうか。手に取ってみてはいかがでしょうか。
厚木、愛川、清川では道端や空き地、休耕地に普通に見られる。強い酸味があるが、山菜や、(よう)(てい)(こん)と言う生薬としても用いられている。似た仲間に、ナガバギシギシ、エゾノギシギシ、アレチギシギシ、スイバなどがある。タデ科の多年草。

 

 

ツクバネウツギ90:ツクバネウツギ(衝羽根空木)
 5月、厚木、愛川、清川の低山から山地帯にかけての雑木林では、ツクバネウツギの淡いクリームがかった白色の花が垂れさがるように咲く。
 花は合弁花の特徴である筒状で、先は上唇2、下唇3枚に開いた花弁の形になっている。花筒内面に橙色の網目模様が目立つ。2個が一組になった花を咲かせる。葉は小さく、樹高も2m程で、全体に優しさを感じさせる植物である。
 (つく)羽根(ばね)とは5枚のガク片が羽根衝きの羽根のように反り出たプロペラ状になっていることから名づけられたものであろう。
スイカズラ科の落葉低木。似た仲間にオオツクバネウツギがあるが山地性で花期は早く4月に咲くことから区別できる。

 

 

2011年  6月

 

モミジイチゴ91:モミジイチゴ(紅葉苺)
 モミジイチゴは、山野にごく普通に生える高さ1mほどの棘のある落葉低木で、葉がモミジの葉に似ていることから名付けられた。
厚木、愛川、清川ではキイチゴとも呼ばれるが、木に生(な)ることから「木苺」と考えがちだが、木に生る苺は他にもある。黄色い実が生ることから「黄苺」の方が意味合いは近い。
筆者は子供のころ、近所の仲間と連れ立ってこの苺を採って歩き、半分は頬張り、半分は蓋付きの弁当箱に入れ持ち帰り、甘酸っぱいその味を楽しんだ。箱の中でつぶれて溜まった果汁は何にも増して美味しかったことを覚えている。早春にヤマブキに似た白い花を開き、実は5〜6月に黄熟する。
バラ科の落葉低木。同じ仲間にクマイチゴ、ナワシロイチゴ、ニガイチゴなどがある。

 

 

 

ウツボグサ92:ウツボグサ(靫草)
 ウツボグサは、畑道や田んぼの畔など田舎の風情が今なお残るような、自然度の高い日当たりのよい草地に生えていることが多い。こうした環境は近年、高茎な外来植物の進出に押され、端正な姿をしたこの花を見かけることも稀となった。
花穂は太く節の詰まった形をしていて、節を取り巻くように紫色の唇状の花を付ける。靫(うつぼ)とは武士が矢を入れて持ち歩いた用具のことで、長い竹かごで作り、その外側を熊、猿などの毛皮や鳥の羽で覆ったもので、花穂の毛ば立ったようすから「靫草」と呼ばれるようになったとのこと。花のあと、葉は緑色なのに花穂だけが茶色く枯れることから、別名に夏枯草(かこそう)と言う生薬名もあり、利尿や消炎などに民間療法として用いられる。シソ科の多年草。

 

 

アカツメクサ93:アカツメクサ(赤詰草)
四つ葉を探したり、花をつないで遊んだクローバーと言えばシロツメクサのことを指すが、同じ仲間で、近年あちこちで見かけるようになったアカツメクサがある。
「ツメクサ」は「爪草」ではない。江戸時代に、オランダからガラス器を船で日本に運ぶときに、割れないように緩衝材としてガラス器の間につめた「詰め草」から来ているとされている。
アカツメクサ(赤詰草)の花は、赤い小さな花が多数集まり一つの花のように見せている。全体にシロツメクサよりやや大型で、葉や茎には、薄い毛が生え、葉の中央には白いV字型をした斑紋がある。
飼料として南欧から輸入されたものが、その後野生化したと言われている外来植物。マメ科の一年草。

 

2011年  7月

ヤブミョウガ94:ヤブミョウガ(藪茗荷)
名前に「ミョウガ」がついているが食用のミョウガとは分類グループが異なる。ヤブミョウガはツユクサの仲間である。葉の形が似ていることから名付けられたもので、葉の付き方や花の咲く位置、手ざわりなど全く異なる。
厚木、愛川、清川では湿った日陰に群生していることが多く、大きいものは1mに達するものもある。花穂は円錐形で、階段状に白い小さな花を多数つける。実は秋に熟し、やがて株は冬枯れしていくが、青藍色の光沢のある実をつけたまま霜の降りた草むらに立ちつくしている姿を見ることがある。
ヤブミョウガは種子で増える他、地下部は冬を越すと、地下茎を四方に伸ばし繁殖する2段構えの繁殖方法を持っている。ツユクサ科の多年草。

 

 

 

 

ネジバナ95:ネジバナ(捩花)
ネジバナは、ラン科ではめずらしく、日当たりのよい芝生や土手、公園などの人間の生活圏に近い所で普通に見ることができる小型の植物である。
名前の通り茎がねじれていて花がらせん状に連続して付くが、さて、左・右どちらに巻くか、ねじれ具合はどうか、確かめていただきたい。きっと発見があるかも。また、花は小さいためその可憐な姿は虫眼鏡での観察がお勧めで、花弁は5弁が淡紅色で、唇弁(下向きの花弁)だけが白く下向きに反曲して、園芸植物のカトレアによく似ている。
別名をモジズリとも言うが、厚木、愛川、清川ではネジリンボウと言う人もいる。花期は6月〜9月。白花もあり、シロネジバナと言う。

 

 

ヤマユリ96:ヤマユリ(山百合)
花は大きく、花弁は白色で赤褐色の斑点があり、先端は反り返る。開花すると強い甘い香りが周辺に漂い、この時期の風物詩の一つだ。花は普通数個付けるが、大きな株で茎が扁平になり帯化現象を起こしたものは100個前後の花を付けることがある。
丘陵地の林縁や日当たりのよい土手に生える。草刈り後に刈り残してある株を見かけるが、花の大きさや香りは野にあって魅力的で、また、神奈川県の「県の花」でもあることからの、刈る人の優しさであろう。
筆者は小学校のころ、通学路の学校坂でこの花を取って帰る際に赤褐色の花粉が服に付き、洗濯でも落ちないと母に嘆かれたことがある。また、堀って持ち帰ったユリの根(リン茎)を、煮てもらって食べた味も覚えている。ユリ科の多年草。

 

2011年  8月

 

コマツナギ97:コマツナギ(駒繋)
日当たりの良い、乾燥した川原、土手、道端などに生える草本状の小低木。根や茎が馬(駒)を繋いでおいても抜けないくらい丈夫なことからこの名が付けられた。
葉は奇数羽状複葉(複数の小葉が先端と左右に羽状に付いている葉)でマメ科に多く見られる葉の形である。葉を枝からこき取って両手で軽く揉み、その手のひらを頬にあてるとチクチクする。葉に細かな針状の毛が生えているためだ。子供のころの遊びの思い出である。日中の畑道で、暑さにめげずに健気に咲くピンク色の花を見ると、汗を拭き、ほっと一息入れたくなる清涼感がある。
近年、厚木、愛川、清川には2mを超す巨大なコマツナギが出現している。中国原産で、道路工事後の法面の緑化植物として使われたものが逸出し、広まったものである。

 

 

ヒヨドリバナ98:ヒヨドリバナ(鵯花)
背丈は1m〜1.5m程で、日当たりのよい草原や林道わきなどに生育している。白い(時にやや赤紫色)大きな花序は目立つ。雌しべの先が糸状に長く分岐した形も特徴的である。名前の云われはヒヨドリが鳴き始める頃に開花することから名付けられたとのことであるが、厚木、愛川、清川では一年中ヒヨドリを見かける。鳴き方に違いがあるのだろうか。
同じ仲間のヨツバヒヨドリ、サワヒヨドリとは葉が輪生しないことで区別でき、フジバカマとは葉が三裂しないことで区別できるので、葉の付き方に注目して比べてみてはいかがか。
しばしば葉に黄色の斑点があらわれる株を見かけるが、ウイルスに感染しモザイク症状を呈したものである。キク科の多年草。

 

 

ヒルガオ 99:ヒルガオ(昼顔)
 明るく適度に湿り気のある草原、空き地、休耕地などに生育するつる植物で、アサガオとは違い鑑賞用に栽培されることはほとんど無い。また、日中いっぱい開花していることから「昼顔」の名がついた。
桃色で径6p程の花を咲かせアブなどに受粉させているが、結実することはほとんどない。実も種子もできないのに開花に大きなエネルギーを費やすのは何故だろうか。地下茎で増え、繁殖力は旺盛で駆除が難しく、農家にとっては嫌われ者の雑草となっている。ヒルガオの花言葉は「絆」。 根もツル状に組み合っているからだろうか。
同じ仲間は多く、アサガオ、ユウガオ、ヨルガオ、コヒルガオ、ハマヒルガオなどがある。また、サツマイモもヒルガオ科である。多年草。

 

2011年  9月

クズ 100:クズ(葛)
 くず湯、くずきり、くず餅、いずれもクズの根から精製したデンプン(くず粉)をもとにしたもので、風邪引きや胃腸不良の時の栄養補給としても食べられている。また、葛根湯と呼ばれる生薬はこの根を指す。さらに、蔓で生活用品を編んだり、葉を家畜の飼料としたりと、昔から様々に利用されてきている。
 クズの繁殖力は旺盛で低木林などを覆い尽くしている光景は珍しくはない。子供のころ、山仕事の手伝いで「くずふじ」と呼ばれるこの蔓を使ってマキやソダ(燃料用木の枝)を縛った。藤より柔軟性があり縄より丈夫で重宝なものだった。
 花は甘い香りを放ち、離れた位置からでも気づき心地よい気分になる。散歩の折などに是非、体験してほしい。マメ科蔓植物。

 

 

ゲンノショウコ101:ゲンノショウコ(現の証拠) 
 果実は燭台のろうそくに似ている。発射台のロケットのようにも見える。果実が弾けるところを見たことがありますか。種子を飛ばすと瞬時にお神輿(みこし)のような形になる。弾けそうな果実を見つけ、無理やり弾けさせて遊んだことがある。
 ゲンノショウコはどこにでも見られ、道端や草むらに茎が地面を這うようにして生育している。花弁が赤紫色のベニバナゲンノショウコもたまにある。
 「現の証拠」が語源で、優れた健胃整腸剤として服用後速やかに効くことから名付けられたものである。ジュウヤク、センブリ等とともに民間薬の代表的なものである。似た仲間に帰化種のアメリカフウロがある。フウロウソウ科の多年草。

 

 

102:ススキ(薄)
 ススキはどこにでも生え、株立ちする高茎な植物である。葉の縁にある(きょ)()と呼ぶのこぎり状の突起はガラス質でできていて刃物のように鋭く、ススキ原を通り抜けるだけで切り傷を負う厄介な植物である。
 昔、人々は入会地(いりあいち)と言う地域で共有するススキの草原を共同で管理し、草ぶき屋根の材料や有機肥料などに使うススキの生産を行っていた。また、厚木、愛川、清川の市街地から離れた里の地域では、ススキの穂が出たと言って初秋の挨拶をし、今年の十五夜さまはいつだろうと暦を見たりと、ススキの姿に季節の移り変わりを体感するなど、今でも日常の生活に密着した存在になっている。
よく似た仲間にオギがある。一目で見分けるには株立ちするかしないかがポイント。イネ科の多年草。

 

2011年10月

ヤブカラシ103:ヤブカラシ(藪枯)
 ヤブカラシはつる性の植物で、植え込みや灌木などに巻きひげを巻きつけながら伸び、藪のように覆ってしまうその生態から名付けられた。
 葉は鳥足状複葉と言い、五枚の小葉が鳥の足を開いた形に付いている。また、花の付き方は二岐集散花序と言い、中心軸の先端は小花で終わるが、中心軸から2方向へ茎が分岐し、分岐した茎は先端に小花を付けながら更に分岐を繰り返していくという規則的な形になっている。
小花は径3o程で、花びらと雄しべは開花後早くに脱落してしまうが、花床から分泌される蜜を求めてハナムグリやセセリチョウ、ハチなどで終日賑わっている。が、花後、実を見ることは稀である。ブドウ科の多年草。

 

 

シモバシラ104:シモバシラ(霜柱)
茎が傾いていても花穂はまっすぐに立ち、密に並んだ花はほぼ真横を向いて咲く。個々の花を見ると、釣り鐘状の花冠から雄しべと雌しべが長く突き出し、清楚な白い花にしてにぎやかな感じもある。
初冬になると地上部は立ち枯れるが、根は水分を茎に送り続ける。このため茎の縦方向の割れ目から染み出た水は厳冬期には結氷し、横に伸びる様々な形の氷の造形美が見られるようになる。花も「霜柱」を連想させるが、シモバシラの名前の云われは「茎に発生する霜のような氷」にある。厚木、愛川、清川では山地の中腹に多くの群落地がある。秋の花の時期に場所を特定しておき、冬の霜の時期に再訪することをお勧めしたい。シソ科の多年草。

 

 

カシワバハグマ105:カシワバハグマ(柏葉白熊)
カシワバハグマは裏山から山地にかけてのやや明るい林内に普通に見られるキク科の多年草である。茎は直立し、茎の中央部に510枚ほどの葉が集まって付いている形から、山道で出会うとすぐそれと分かる。
葉の形がカシワ(柏)の葉に似ていることと、頭花(小花が集まって一つの花に見える花)をつくっている10個ほどの小花の白い花びらが裂けて細長く伸び先端が巻いた形をしているため、頭花の形が仏具の払子(ほっす)に使うヤク(牛に似た動物)の毛(ハグマ=白熊)に例えられたことが名前の由来である
 同じ仲間に、オクモミジハグマ、キッコウハグマ、コウヤボウキなどがあるが、いずれもカシワバハグマに似た白い花をつける。秋の山歩きの観察ポイントの一つに加えてみてはいかがか。

 

2011年11月

イシミカワ100106:イシミカワ(石実皮)
やや湿り気のある日当たりの良い土手などに生え、他の植物の上をはって伸びる蔓状の植物である。茎には下向きの刺がある。葉は三角形で表面の緑は淡く白い粉を吹いたようである。葉柄は楯状につき、托葉(葉柄の付け根にある付属の葉)が茎を抱いている。花穂は枝先に苞葉(花穂を取り囲む葉)に乗る形でつく。花弁はない。
果実は、がくが肥大して肉質となって種子を包んでいる。光沢のあるコバルトブルーを呈する姿は丸いお皿に盛られた和菓子のようだ。
普通の植物に比べると、特異な特徴が多く、出会ったときにはイシミカワの生き様に注目して観察して見ると、他にも気づく点があるかもしれない。
タデ科の1年草。似た仲間にママコノシリヌグイがある。

 

 

107:キチジョウソウ(吉祥草)
 キチジョウソウは住宅地近くの藪や竹林の林床などの日陰に生えるユリ科(新説ではスズラン科とも)の植物で、古い屋敷では庭にも植えられていることがある。
寒さに向かうこの時期に落ち葉に埋もれた株の根元に、長い葉に隠れるように咲くため花を見ることを逸しがちである。このため、その家に吉事があると花が開くという俗説が生まれ、この名がついたとのこと。
淡紅紫色の花は可憐で、花の乏しいこの時期、新鮮な雰囲気を感じることができる草花である。
キチジョウソウの花は両性花(雄しべ、雌しべの両方ある花)を咲かせるが、よく見ると同じ花穂に雄花(花粉を出すだけの花)も咲かせている。株をかき分けてじっくりと観察みてはいかがでしょうか。常緑多年草。実は冬に赤熟する。

 

 

ニシキギ108:ニシキギ(錦木)
若枝は緑色であるが、やがて板状の薄いコルク層の翼が枝の四方に十字状にできる。翼は年々大きくなり4年目位まで続づく。発達した翼はカミソリの刃のように見える。 
秋の紅葉はモミジやナナカマドに劣らぬ赤色を呈し、豪華な錦の織物のように艶やかで美しい。
和名の云われは定かではないが、翼が幕末の官軍の錦の御旗を連想させるからとも、鮮やかな紅葉からとも言われる。
果実は紅葉の始まりと共に熟し、熟すと二つに裂けて開き赤橙色の皮に包まれた種子が2つぶら下がる。この皮をむくと真珠のような光沢のある種子がでてくる。
翼が顕著ではないものを「コマユミ」として区別することもある。似た仲間にツリバナ、マユミなどがある。低山に自生するニシキギ科の落葉低木。

 

2011年12月

ハダカホウズキ109:ハダカホウズキ(裸酸漿
 冬枯れした草むらでハダカホウズキと出会うと、たちどころにその実の魅力の虜となる。茎も葉も枯れていても、真っ赤で鮮やかな光沢のある丸い実がイルミネーションのように多数釣り下がっている光景は、人目を引きつけるに十分で、初冬の風物詩のひとつと言える。
 山地の林縁などに生え、草丈
1弱で茎はよく分枝する。夏に葉腋から24個の花柄を出し直径8oほどの花が下向きに咲く。晩秋になると直径1cmほどの実が赤く熟す。和名の云われは液果と呼ばれる実がホオズキのような袋状の萼(がく)に包まれず裸のままであることによる。実は有毒である。 ナス科。似た仲間で実が赤くなるものには、ヤマホロシ、マルバノホロシ、ヒヨドリジョウゴなどがある。

 

ビナンカズラ110:ビナンカズラ(美男葛)

ビナンカズラは昔、武士が粘液状の樹液を水で抽出したものを頭髪剤として用い、髪型をきめて美男子を装ったことからその名が付けられた。別名サネカズラと言う。
 野山に広く生え、葉は厚手で表面に光沢があるつる植物で、市街地では生垣に植えている家もある。筆者は鉢植えで盆栽仕立てにして実のなるのを楽しんでいる。
葉の影に隠れて目立たないが、夏に葉腋(ようえき)から花柄を出し、直径1.5cmくらいの淡黄白色のをつける。雌雄異株(しゆういしゅ)で、雌株では長い柄の先に、肥厚した中心部を取り囲んで実が多数着生する。光沢がある紅色の直径6mmほどのもので、初冬になっても落ちず、果序全体ではで45cmくらいの集合果となって下垂する。マツブサ科の落葉つる低木。

 

マルバノホロシ111:マルバノホロシ(丸葉保呂之

マルバがあるなら「丸葉」でないものもあるに違いない。県内ではやや標高の高いところにヤマホロシがあって、こちらの葉は細長い。
マルバノホロシは林縁の潅木などにからまって生えている植物だが、実のない時期は目立たないつる性の多年草である。
 花期は89月で花は直径約1p、淡紫色の花びらは反り返って咲く。
実は冬になっても落ちずに残り、ひとつの果序に直径約8mmの光沢のある赤い球形の液果が10個ほど下垂する。雪の降った後の山里歩きで、真っ赤な実が白い雪の中に見え隠れする光景やつややかな赤い輝きは、宝物を見つけたような気分になる。出会った人にしかわからない喜びである。似た仲間にヒヨドリジョウゴがある。これも冬に赤い実を付ける。見分けのポイントは葉や茎に毛があるか否かである。ナス科、有毒。

 

2012年 1月

コウヤボウキ112 コウヤボウキ(高野箒)      

 ウヤボウキは明るい雑木林や山道の脇などに普通に生えている。高さは数十pで茎は細く草本(草の仲間)のように見えるが落葉低木である。花は秋に、2年目に成長した枝先に咲き、白く細長い花びらの先を巻くようにして可憐な姿を見せる。
厳冬に見かけるコウヤボウキは、葉の落ちた枝に白い冠毛を放射状に伸ばした総果が残っていて、寒さの中に咲く花のように見える。綿帽子となって種子を飛ばすのはしばらく先のようである。冬の散策の道すがら出会う楽しみの一つである。名前のいわれは高野山で細い枝を束ねて箒にしたことからとのこと。別名タマボウキ(玉箒)とも呼ばれる。正倉院には奈良時代に作られた箒が,御物の一つとして現存しているそうだ。似た仲間に、ナガバノコヤボウキ、カシワバハグマなどがある。キク科。

 

ヤシャブシ 113ヤシャブシ(夜叉五倍子)
 冬の風物詩の一つに、種子を飛ばし終わり役目を果たし終わった実を付けたままたたずむ木々の姿がある。ヤシャブシもそうした木の一つだ。
ヤシャブシ(夜叉五倍子)の名の由来は、熟した実が夜叉(仏教説話に出てくる神)に似るイメージと、実にタンニンを多く含み、五倍子(フシ:黒色の顔料)の代用として使われて来たためといわれている。早春の葉が出る前に花を開く。雌雄同株、雌雄異花で、雄花序は垂れ下って咲き花粉を飛ばし終わると間もなく落ちてしまう。雌花序は直立または斜立し、一つの芽から2個付ける場合が多い。果実は若いときには緑色だが、秋に黒褐色となり、種子を散布する。ヤシャブシは崩壊地や林道ののり面などに真っ先に侵入してくるカバノキ科の落葉高木の一つだが、ミヤマヤシャブシ、オオバヤシャブシの方が多く見かける。

 

オモト 114オモト(万年青)
オモトは厚木、愛川、清川では林内のやや乾いた斜面などに自生する。革質で厚みのある葉が株立ちし、夏に葉の間から花茎を伸ばし、淡い黄緑の花を咲かせる。実は丸く直径1cmほどになり、秋に赤く熟し正月を過ぎても艶のある実を見ることができる。
観賞用としても古くから栽培され、江戸中期には大流行し、斑が入ったものや反り返りのあるものなどさまざまな種類に改良されたことが記録に残っている。現在も多くの品種が栽培されている。葉の緑と実の赤の対照が魅力のもとになっているようだ。
名前のいわれは諸説あるが、四季を通して葉が緑であることから「万年青」と表記する。また、万年も家が栄えるようにとの縁起物にもなっている。ユリ科(最新の分類体系ではスズラン科)の常緑多年草。有毒。

 

2012 2

セイヨウアブラナ115セイヨウアブラナ(西洋油菜)
 アブラナは、厚木では昭和の半ば頃ごろまで水田の裏作として広く栽培されていた。ナタネ油を絞る菜種を生産するためだ。一面に広がる菜の花畑はレンゲ畑と共に春の風物詩となっていたが、水田が住宅団地や工場用地に変わり、また、安価で様々な種類の食用油が出回って来たために姿を消してしまったのだ。野菜畑に見られる菜の花は、白菜や小松菜、カブなどが収穫されず(とう)だちしたもので、捨てられる運命にある。
 
河川敷や荒廃地に群生する菜の花は、アブラナの栽培品種にキャベツなどが自然交配を重ね、野生でも繁殖できる形質を獲得したもので、セイヨウアブラナと呼ばれ、近年あちこちで見かけるようになった。節分前後から開花しはじめる。散策の道すがら鮮やかな黄色と甘い香りに春の到来を実感できるのでは。アブラナ科の越年草。

 

冬芽オニグルミ116オニグルミの冬芽(鬼胡桃)
 冬の自然観察として冬芽に関心をもって見て歩くのも面白い。硬い鱗芽をヘルメットのようにかぶっているものや、綿毛の頭巾をかぶっているもの、裸で寒そうに先端を丸めているものなど、植物によって様々で個性的だ。寒い冬を耐え、やって来る春の芽生えや開花に備えた冬越しの知恵なのだ。
 よく見ると葉になる葉芽と、花になる花芽、両方を備えた混芽がある。慣れてくると結構見分けられ、春への期待も高まり、観察の楽しさが湧くにちがいない。
写真には、動物の顔が隠し絵のように見える部分がある。前年の葉が茎から離れ落ちたあとで葉痕(ようこん)と呼ばれる。さて、どんな動物が何匹いるでしょうか。冬芽と共に葉痕の観察もこの季節ならではのテーマだ。オニグルミは厚木ではどこにでも生えている。クルミ科の落葉高木。

 

117ヤブツバキ(薮椿)
 ヤブツバキは、厚木では藪のような環境の林内で普通に見かけることができる。椿の見本園などにある園芸種はどれも花びらを全開に反らして誇らしげに咲いているのに対して、本種の花びらは反り返ることはなく控えめで、花もうつむき加減だ。この奥ゆかしさが和の風情に通じ、茶室に趣を醸す茶花の一つとして用いられる所以かも知れない。
 立春を過ぎ春めいた陽気になると咲き始める。メジロが集団で吸密に訪れ、花にぶら下がるように取り付いている光景に出会うことがある。
 子供の頃、大きなシャボン玉ができるようにと、椿の若い実をすりつぶし石鹸水に混ぜ麦わらのストローで遊んだことがある。
実からとれる椿油は食用油や整髪料として有用されている。ツバキ科の常緑広葉樹。

 

20123

カンスゲ 118カンスゲ(寒菅)
 唱歌「茶摘み」の歌詞にある「・・あかねだすきに菅(すげ)の笠」の「菅」はこのカンスゲでる。葉が固く丈夫な性質を利用して、昔から笠や蓑が作られている。名前のいわれは、葉が常緑で冬でも光沢のある緑色を保っているので「寒(かん)」スゲとなったようだ。
 厚木周辺では沢沿いの日陰の斜面などに普通に群生していて、大きな株立になっているものもある。まだ冬の気配が漂う早春に、花茎を高さ30cm前後に伸ばし、先端に褐色から汚白色のブラシのような雄花穂を、それより下に細長い棒状の雌花穂を枝のように付ける。地味な花が多いカヤツリグサ科スゲ属の中では比較的目立つ花である。水が温み始めたらちょっと冒険して山間の水辺まで足を運んでみてはいかがでしょうか。カンスゲの他にも、普段見かける自然とは違う春の営みが発見できるかも。

 

シュンラン 119シュンラン(春蘭) 
 シュンランは雑木林の斜面などやや乾いたところに生育していることが多い。葉や株は一見ヤブラン(ユリ科、花期は初夏)に似ているが、葉が硬く、縁に細かな鋸歯(ギザギザ)があり区別できる。
 白い薄膜状の鱗片に包まれた花茎の先に横向きの花をつける。花びらは黄緑色であるが、真中にある唇弁と呼ばれる花びらには白地に赤紫の斑点が入る。開花すると外側の3弁で三角形をした姿になり、可憐さとともに気品が漂う。山道で出会うと足を止め、正面から覗き込みたくなるほどの魅力を持っている。
 東洋ランの代表的植物で、花の色や形に変異のある株が珍重され、愛好家がいる。近年、乱獲や生育地の環境の変化から、同じラン科のキンランやエビネ等と共に数が減りつつあることは残念である。和名は春に咲くランから名付けられた。

 


ヤマハンノキ120ヤマハンノキ(山榛木) 
 春の一番乗りを争う植物と言えばヤマハンノキもその一つだ。彼岸前は気温がまだ低く葉の伸びる時期はしばらく先だが、明るい春の陽ざしに誘われるように雄花が長い紐状になって垂れ下がってくる。よく見ると同じ枝には丸みを帯びた小さな雌花も咲こうとしている。 
どちらも小花が多数集まった集合花で花びらはない。受粉を媒介するのは昆虫ではなく風任せだ。したがって雄花からは大量の花粉をまき散らす必要があり、大きな花穂になっている。筆者は子供の頃、近くの山でこの木を揺すり、黄色い花粉が煙のように舞い上がるのを楽しんで遊んだことがある。 
ヤマハンノキは山地の崩壊地や新しい林道ののり面などに真っ先に侵入してくる先駆植物の一つである。似た仲間にハンノキやケヤマハンノキがある。カバノキ科の落葉高木。

 

 

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