続・あつぎの花めぐり

身近な季節の花を散文と写真で紹介するコーナー 

紹介者: (サークル愛川自然観察会) 山口 勇一

 

2009年 1月〜201212月分は バックナンバーでご覧ください。
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2013年 1月

ウバユリ147ウバユリ(姥百合)

花が咲く時すでに葉(歯)がないという洒落から姥ユリと名付けられたとのこと。果穂は冬枯れしてもなお、倒伏せず、種子の散布を続けている。

果実(刮ハ:さくか)の中には、扁平で薄い膜をもった何百個もの種子がコインを積み重ねたように整然と収まっている。成熟して3方に割れても全開せず、開いた部分も繊維で格子のように塞がれていて種子は簡単には落ちない。種子を遠くへ運んでくれるような強い風の時にだけ、種子が散布される仕掛けになっている。

やや湿った林内に生育。発芽から68年かけて成長しようやく開花する。開花した株はその年に枯死してしまう一回繁殖型の植物。ユリ科。

 

 

 

カンアオイ148カンアオイ(寒葵)

厚木周辺に自生するカンアオイの正式な和名はカントウカンアオイ。この植物はいくつかの奇妙な特徴を持つ。花は葉の陰で見えないように地面近くに咲く。開花は晩秋だが冬季を通して咲き続ける。花びらのような部分はがく片で、花びらはない。雌しべと雄しべは壺状の花の奥にあり見えない。

こうしたことから花粉の媒介は昆虫や風によるとは考えにくい。また、成熟した種子を遠くへ運ぶ仕組みもなく、生育範囲も広がりにくい。この植物の著名な研究者である故前川文夫氏は生育範囲の広がる速度を「1万年で1km」と見積もっているほどである。名前のいわれは「寒中に咲く葵」から。徳川家の家紋、ギフチョウの食草としても知られている。ウマノスズクサ科の多年草。

 

 

フユノハナワラビ149フユノハナワラビ(冬の花蕨

和名にフユとついているのは、秋に芽を出しそのまま冬を過ごした後、翌年の春に枯れる(冬緑性)ことによる。ワラビは花が咲かないシダ植物なのにハナがついているのは、胞子葉(胞子を生産する胞子のうを付けた葉)の形が花穂のように見えることと、栄養葉(光合成を行う葉)がワラビに似ていることから、フユノハナワラビと呼ばれるようになった。近づいてみると、花には到底見えない数の子に似たつぶつぶの胞子のう(胞子の入っている袋)が観察される。多年性のシダ植物で、日当たりのよい草地や庭園の樹下などに群生する。

山草愛好家によって盆栽として珍重され、また、茶花として観賞用にも用いられている。ハナヤスリ科。似た仲間にナツノハナワラビやオオハナワラビがあるが、山菜のワラビとは類縁関係は遠い。

 

2013 2

アセビ150アセビ(馬酔木)

 アセビは、厚木市周辺では山麓からブナ帯までの山地の乾燥した斜面に自生している。

 常緑低木だが寒さには強く、陽だまりでは2月から花がほころび始める。枝先から出る花序には白い壺状の花を下向きに多数開く。他の花の少ないこの時期、晴れた日には昆虫たちでちょっとした賑わいを見せる。

有毒植物のため野生動物には敬遠されていて、シカが多く生息する山地でも食害にあったアセビを見かけることはない。

漢字表記は「馬酔木」だが、これをアセビと読むのは無理があるが、奈良時代に大陸の文化を持って来た渡来中国人が、中国にはないこの植物によって中毒を起こす馬を見て、「馬酔木」と表意文字で表したものが、日本語の「アセビ」の漢字表記に用いられるようになったのではないかと想像する。ツツジ科。

 

 

オオバマンサク151オオバマンサク(大葉満作、大葉万作)

 オオバマンサクはマンサクの亜種で、厚木市周辺では大山上部他に自生している。庭木として植栽されているマンサクに比べると地味な感があるが、一番の魅力は、寒い時期から花を咲かせ、山に春の訪れの近いことを告げることにある。

がくは赤く、花びらは黄色いリボン 状で、その清楚な雰囲気から、周囲がまだ冬のたたずまいの中、山歩きでこの花に出合うと足を止め、思わず見惚れてしまうほどである。

和名の由来は「先ず咲く」が訛ったとの説がある。この花がたくさん咲く年は豊年「満作」だからとも。

 葉の形も特徴的で、左右対称形ではなく平行四辺形になっていて、花のない時期の見分けのポイントになる。マンサク科の落葉低木。

 

 

カラスウリ152カラスウリ(烏瓜) 

 筆者の家の周辺には、厳冬期の今も、寒風にさらされながらもだいだい色に輝くカラスウリがぶら下がっている。近づいてみるとさすがにこの時期には、表面は破れ、穴の開いた中身は干からびているものもあるが、変化の乏しい冬の景色の中では一服のぬくもりを感じさせてくれる。

中に入っている種子は「カマキリの頭」のような形、あるいは大きな耳を持った「大黒様」の顔に形容されることがあるが、筆者は子どものころから「打ち出の小槌」に見立てきた。人によって見え方が違うのは面白い。実を割って観察してみてはいかがか。

名前の由来は、カラスが好んで食べるから鳥瓜だとするが、カラスが啄ばんでいるところは見たことがない。ウリ科の多年草。同じ仲間にスズメウリ、キカラスウリがある。

 

2013 3

アオイスミレ153アオイスミレ(葵菫) 

 厚木市周辺には20種を超えるスミレが自生している。種類によって花の形や色の違いは勿論だが、開花の時期や順序も決まっていて、種類を追っていくと3月初めから5月まで様ざまなスミレの花を楽しむことができる。

シーズントップを切って開花するのはアオイスミレで、見ごろは3月初~中旬。花柄は短く、葉の上に花をのせるように咲き、淡い紫色の上弁(上側にある一対の花びら)はウサギの耳のように立ち、個性的な花のつくりになっている。

実は紫色の毛毬のような形で、株元近くにしっそりと付いる。他のスミレのようなたねを弾き飛ばして散布する機能はなく、たねにはアリの好む物質があり、アリに餌として運ばせ、やがて捨てさせる戦略でたねを散布する。

 葉がアオイの葉の形に似ていることが和名のもととなった。スミレ科の多年草。

 

 

アブラチャン154アブラチャン(油瀝青) 

 山地のやや湿った窪地などに株立ちして生える低木で、高さは5mほどになる。まとまって生えることが多く、山歩きでアブラチャンの林に出合うことも珍しくはない。

 葉が開く前の早春に、淡黄色の小さな花を一斉に咲かせる。わざわざこの花を目あてとして訪ねるのに十分な、春の息吹を感じさせてくれる魅力がある。

 実は径15oほどの球形で、秋に熟す。出会う度に真ん丸な実の形に感心させられる。色は地味な茶色がかった緑色である。

成分として油分を多く含むことから、昔、実から搾った油を灯油に使ったことが名前となった。「チャン」は瀝青(れきせい)という意味で、油のような有機物を表している。クスノキ科の落葉低木。雌雄異株。同じ仲間にダンコバイ、クロモジがある。

 

 

スギ155スギ(杉) 

 花粉症の一番の元凶はスギがまき散らす花粉で、春先に花粉アレルギーに悩まされる人は多い。

厚木市周辺の山々を見渡すと、スギを中心とした植林地が広葉樹林とモザイク状に分布し、山地の大きな面積を占めていることが見て取れる。特に昭和40年代に薪炭林に代わって植林されたスギやヒノキが樹齢450年に達し、大量の花粉が生産されるようになった。晴れた日には煙のように風に舞い上げられ、視界も遮られるほどの飛散量となる日もある。

スギは風媒花で、雄花でできた花粉は、雌花まで風に運ばせて受粉することから大量に散布する必要があり、たわわに付いた雄花からは、受粉のタイミングに合わせ花粉が一斉に舞うのである。一科一属一種の日本特産種。屋久杉、北山杉、秋田杉などが有名。 

 

2013 4

アケビ156アケビ(木通) 

 花期は34月。花穂の柄が途中で枝分かれしていて、個々の花の役割が分かり易い花である。雄花にはミカンの房を並べたような雄しべがあり、花粉を供給する。また、雌花にはバナナを小さくしたような雌しべが放射状に数本あって、先端は粘着性の液体で潤っていて花粉が付着しやすくなっている。

 筆者は子どもの時、秋になると近所の子どもたちと連れ立って山にアケビ取りに行った。道案内は年長者で、木に登ったり、蔓を引っ張ったりして収穫した。子どもの遊びの集団は姉におんぶされた赤ん坊から兄弟が面倒を見る就学前の幼児も混じる異年齢の構成だが、足手まといにはせず、「おめえは味噌っかすだから小っちゃいの。」などと言いながら収穫物は年齢に応じて分けた。アケビは子どもにとって魅力的なものだった。アケビ科の半落葉の蔓性低木。

 

 

ニリンソウ157ニリンソウ(二輪草) 

 ニリンソウは草丈15pほどで、まっすぐ立った茎の中央に、名前のとおり2つの花がペアになっているが、この2つは花柄の長さが違い、開花にもややずれがある。2輪がそろった姿は夫婦が寄り添う姿に例えられ、歌謡曲にもなっている。

 湿り気のある林の中や林縁の土手などに群生する。早春に花を咲かせた後、周辺が若葉の季節を迎えるころには姿を消してしまうことから、スプリングエフェメラル(春の妖精)の一つに数えられている。

  ニリンソウと間違えてヤマトリカブトの根出葉を山菜として食べ死亡する事故が報道されることがあるが、葉の形が似ているため、くれぐれも間違えないように。採集は目利きのある人と同行するのがいい。

キンポウゲ科の多年草。同じ仲間にイチリンソウ、キクザキイチゲなどがある。

 

 

ヤマブキ158ヤマブキ(山吹) 

 「やまぶき色」はこの花の色から例えられたもので、オレンジ色と黄色の中間色を言う。また、江戸時代には小判を隠語で「やまぶき色」と言っていたそうで、鮮やかな金色のイメージと重り合う色だ。林縁や道路の法面などに株立ちする低木で、たいがいの場合、枝先は斜面の下側方向に垂れている。

 有名な和歌の逸話からヤマブキには実がつかないと一般的には思われているようだが、花や花後に残るがくに比べると小さく不釣り合いだが、ちゃんと実をつける。

 筆者は子どもの頃、この茎の白いスポンジ状の髄を細棒で突き出し、口にくわえその感触を楽しんで遊んだ。太いのが欲しくて根元付近を切るが、意に反し茎の高い位置の方が太い髄が得られたことを覚えている。バラ科の落葉低木。

 

2013 5

フジ159フジ(藤) 

 フジの花穂は逆さまに垂れ下がっているが、個々の花の上下の向きはどうなっているのだろうか。よく観察してみると小さな蕾の時には確かに逆さまだ。大きくなって開花するころには正常な花の向きになっている。蕾みの成長とともに花柄をねじり、花の向きを変えているのだ。マメ科に特徴的な花の形を「蝶形(ちょうけい)花冠(かかん)」と言い、蝶のように左右対称な形をしているので、花の上下はすぐに分かる。甘い香りの花とともに、蕾の向きにも注目して観察してほしい。

 フジは丈夫で柔軟性のあるつる植物で、昔は薪やそだ(小枝を束ねたもの)を縛るのに使われていた。太めのつるは裂いて細くしたものを用いた。筆者は子どものころ父の山仕事の手伝いでつる取りをしたことがある。素性のいい真っ直ぐなのがねらい目だった。山野に普通に自生。

 

 

クルミ160オニグルミ(鬼胡桃) 

 健康食品のうたい文句で、クルミほど多くの効能が挙げられているものは他にない。悪玉コレステロール値を下げ、善玉の値を上げるとか、心筋梗塞・脳梗塞・動脈硬化などの生活習慣病の予防に効果的とか、細胞を守る抗酸化作用、ストレスを癒す力、せき止め効果、便秘改善効果 、不眠症改善効果、美肌効果 など正に万能である。

周囲の果肉を腐らせ中身のクルミを洗うのが面倒。割って可食部を取り出すのも大変。渋みと脂っこさかあっておいしいとも言えない。でもなぜか、クルミには魅力がある。

雄花は緑で長いひも状に垂れて咲き、雌花は上向きに咲きビロード状で赤い。

筆者は小学校の帰りのみちくさ場所で、落ちているクルミを石でたたき、砕けた殻と中身を分けながら生食した思い出がある。野山に普通に見かける落葉高木。クルミ科。

 

 

ハンショウヅル161ハンショウヅル(半鐘蔓) 

 花が半鐘(火事の時に打ち鳴らす鐘)のような形をしているところから名付けられた。

多くの植物では一番外側にあるがくは地味で目立たないが、ハンショウヅルのがくは大きく、色も鮮やかである。下を向いて咲くため花の外側が表面になることから、がくを発達させ昆虫の目を引くようになったのである。

 つる植物だが巻きひげを持たず、葉柄を周囲にある灌木の枝に絡ませて自らを固定する。巧妙な手段の持ち主だ。

林縁や郊外の道端などに生えている。光沢のある茶紫色の花は人目にも留まりやすく可愛らしい。観察会仲間では人気が高く、翌年にも自生地を訪れ再会を楽しみにする人もいる。キンポウゲ科の落葉つる植物。同じ仲間に、センニンソウやシロバナハンショウヅル、園芸種のクレマチスなどがある。

 

2013 6

クリ161クリ(栗) 

クリの花は地味な薄黄色だが、満開時には樹冠全体を覆い尽くすような勢いで多数の花を咲かせることから、クリの木の存在はすぐに気付く。クリの仲間(ブナ科)は風媒花で地味な花が多いが、クリは虫媒花であるため目立つ必要があるからだろう。独特の匂いに誘われ群がる昆虫たちの数も多い。ミツバチも4月のレンゲから5月のニセアカシア、そして6月のクリと蜜源を渡り歩いている。

 写真中央の小さい花が雌花、クリの赤ちゃんだ。雄花は長いブラシ状の花穂にびっしりと咲く。野外で実物の観察をお勧めする。

山野に自生するものは「山っクリ」と呼ばれ栗の実は栽培種より小型。筆者は子どものころ、茶色く熟れた「(かね)っクリ」になるのが待ちきれず、「(しら)っクリ」を生で食べた。こりこりとした甘い味を覚えている。ブナ科の落葉高木。

 

 

スイカズラ162スイカズラ(忍冬) 

花を口にくわえて吸うこと甘い味がする。人が直接蜜を吸うことができる数少ない花である。スイカズラは「吸い葛」の意である。近寄るとやさしい甘い香りもある。

花は筒状で、花びらの先は上下に分かれ上唇はさらに4つに分かれ先端を反らして咲く。開いた人の手のひらを正面から見ているような形である。

咲き始めは白色だが徐々に黄色くなるため一つの枝に2色の花が同居することがある。このため異名は金銀花。また、半落葉性でわずかに葉を付けたまま冬場を耐え忍ぶ事からニンドウ(忍冬)とも言う。実は秋に黒熟する。

スイカズラ科のつる植物。丘陵地、市街地などでふつうに見ることができる。

 

 

ツユクサ163ツユクサ(露草) 

 写真から、花びらは2枚ではなく3枚あることがお分かりですか。雄しべが長、中、短の3タイプあるのがお分かりでしょうか。また雄花と両性花を区別できますか。実物をじっくり観察してみてください。ただし、この花は昼までにはしぼみ苞の中にしまわれてしまいます。そのようすも観察してください。昆虫の訪問がないと雌しべの先と長い雄しべが丸まって自花受粉をすることがある。

ユクサはいたる所に生え、ありふれているので、ちょっと眺めて済ませがちであるが、よく見ると面白い面が色々ある。

 筆者の母は蛍草(ほたるぐさ)と言っている。他に帽子花(ぼうしばな)、青花(あおばな)などの別名があるようだ。中学校の理科では手に入り易いため気孔の観察に葉の表皮を使うことがある。ツユクサ科の1年草。

 

2013 7

ナワシロイチゴ 164ナワシロイチゴ(苗代苺)

 初夏は木イチゴのシーズンで、この時期の楽しみの一つになっている。子どもの頃にイチゴを目あてに山遊びに行った記憶のある人もいるのでは。モミジイチゴ、クサイチゴ、クマイチゴ、ニガイチゴなど口にできる木イチゴは種類も多い。モミジイチゴの黄色以外はいずれも赤色である。

ナワシロイチゴの名前は、苗代づくりの時期(昔は今より遅い)に熟すことから付けられた。日当たりの良い傾斜地などで普通に見られ、他の草の上に覆い被さるように生えている。味は甘酸っぱく美味しい。

花も要観察。紅紫色の花弁は開ききらずに上部で閉じたまま先端部から雌しべが頭だけ出す。花弁が落ちると雄しべが現れ、雌雄の成熟期をずらして自家受粉を避けている。バラ科の這性落葉低木。

 

 

ベニバナボロギク 165ベニバナボロギク(紅花襤褸菊)

 ベニバナボロギクは1950年ごろに初めて確認されたアフリカ原産の帰化植物で、以後主に森林伐採跡地に群落を形成して広がってきている。森林域に侵入する外来種は珍しく、近くに生育地が無いと思える場所でも伐採が行われるとすぐにやって来る。種子散布能力と高い発芽・定着力を持っているのであろう。

 伐採直後に芽ばえる1年生の在来種はほとんどなく、日本の森林では伐採に相当するような環境変化が生じにくかったのであろうか、長い進化の過程で本種のような能力を身に付けた1年草は生まれなかったのだ。本種はこのすきを突いて広がったものと言えよう。
 茎は太いがやわらかくシュンギクに似た香りがあり食用になる。花は紅色で、しおれたように下を向いて咲く。よく似た仲間に北米原産のダンドボロギクがある。キク科。

 

 

ミソハギ166ミソハギ(禊萩

 厚木地域で盆花と言えばこのミソハギを指す。現在のように水田が区画整理され、用水掘りがコンクリート化する以前は水田の周辺に普通に生えていた植物である。

お盆の祭壇を飾る花としてボンバナ(盆花)やショウリョウバナ(精霊花)の別名があるが、現在では見かけることが少なくなり、忘れられつつあるようだ。数年前にわざわざ我が家にもらいに来た人がいて、昔の風習を大事にしている人がいることに感心したことがある。

和名の由来は、この花穂で精霊棚に水をかける風習が(みそぎ)を連想させるところからミソギハギ(禊萩)、田んぼ周辺の溝に生えることからミゾハギ(溝萩)などの説がある。

ミソハギ科の多年草。同じ仲間に茎を抱く点で区別できるエゾミソハギがある。

 

2013 8

オオケタデ167オオケタデ(大毛蓼

 オオケタデは、種類の多いタデ科の中でも群を抜いて大きく、一年草にもかかわらず高さ2m近くになる。農家の庭先や畑の一隅などに除草を免れて背の高くなった株を見かけることがある。濃い桃紅色の大きな花房垂れ下がるように咲く姿は、真夏の炎天下が似合う植物である。

アジア原産の帰化植物で、江戸時代に移入され薬草として栽培されていたものが野生化したようである。筆者の自宅の庭にも50年以上前から数年に一度の頻度で生えて来るが、他の植物との生存争いは数の力に頼ることなく、また、毎年種子を作らなくても世代を繰り返すことができるようである。大型植物の有利さであろうか。

小花は米粒大で、種子が成熟するまで桃紅色を保つ。種子は径3o程で黒く光沢がある。

 

 

キツリフネ168キツリフネ(黄釣船)

 キツリフネは、山地の谷あいや谷戸田近くの湿った半日陰地に生育する。葉腋から細長い花柄が伸び黄色い花が帆掛け舟を吊り下げたように咲くことから和名となった。

花が不安定な状態で横向きになることによって、花粉や蜜を求めるハナバチなどの昆虫は花の奥まで必死で潜らならず、キツリフネにとっては花粉と雌しべの接触の効率を上げることができ確実に受粉できる。神わざと思えるような進化の不思議さだ。

同じ仲間のツリフネソウは赤紫の花で距(しっぽのような部分)が渦を巻いているが、本種の距は渦を巻かずに単に下方に垂れ下がるだけである。違いを比べるのも不思議さの発見になる。成熟した紡錘状の実が指で触れると弾けて種を飛ばすのも面白い。ツリフネソウ科の一年草。園芸植物のホウセンカも同じ仲間である。

 

 

ヒオウギ169ヒオウギ檜扇

 ヒオウギは、幅広い剣状の葉が行儀よく左右に開き、扇のようになっている。「檜扇」とは奈良時代の公家が手にしていた扇のことで、これに似ていたためこの名前が付けられた。

山野の草地に自生する多年草で、花びらはオレンジ色で赤い斑点がある。午前中に咲き夕方にはしぼむ一日花である。夏の山道でこの花に出合うと一時の清涼感に浸ることができ、いい気分になる。

果実は袋状で成熟すると破れ、光沢のある漆黒色の種子が現われる。万葉集の和歌に枕詞(まくらことば)として多く用いられている「ぬばたま」はこの実のことで、これが「黒」とか「夜」などを導くように詠われている。筆者は、学生の時の古典の勉強は忘れたが、「ぬばたま」だけは印象的に記憶に残っている。

アヤメ科の多年草。

 

2013 9

ハッカ 170ハッカ(薄荷)

日当たりが良くて湿り気のある用水掘の縁や休耕田などで見かけることが多い。葉っぱをこすると喉や鼻孔がスーッとする清涼な香りがある。香りのもとはメントールと言う成分で、ガムや飴に入られていてお馴染みだが、菓子、化粧品、歯磨き粉、軟膏薬、虫よけ、消臭剤など万能的に利用されている。

シソ科ハッカ属の植物を総称してミント類と言っているが、ハッカは成分の含有量が多く、香料を採るために栽培され、日本から世界各地に輸出されていたとのことだ。

筆者が子どものころ我が家では野外トイレの近くに植えられていた。トイレの消臭効果があったのだろうか。

多年草。栽培品種は多い。ペパーミントはヨーロッパ原産のセイヨウハッカのこと。また、ヤマハッカは別属で香りも異なる。

 

 

アキノエノコログサ171アキノエノコログサ(秋の狗尾草)

近縁種のエノコログサよりも全体的に大型で、肥沃な路傍や放棄畑などに生育する傾向がある。エノコログサの花期が夏に終わるのに比べ、秋まで開花しているのでアキノエノコログサである。2つを比べると、本種は花穂が長く先がたれる。葉の表面や葉鞘の縁に短毛が密生する。実がやや大きいと言ったあたりが区別点である。 

 筆者は子どものころこの草をネコジャラシと呼び、子猫をじゃらすのに使った。花穂の柄は長く丈夫で弾力があり、都合の良い遊び道具だった。子猫が飛びついたり寝そべったりしながら爪を立てるのはネズミを捕る練習だと聞かされていた。

名前のいわれは子犬(狗)のしっぽに似ていることからエノコロ(狗尾)となった。イネ科の一年草。同じ仲間にキンエココロ、ザラツキエノコロ、オオエノコロなどがある。

 

 

ヒガンバナ 172ヒガンバナ(彼岸花)

ヒガンバナは秋の彼岸の頃に花を咲かせることから名づけられた。日本の秋の風情を彩る花だが中国原産である。古い時代に日本に持ち込まれた史前帰化植物の1つであるとされている。
 花は咲くが種子は稔らない。せっかく大きく派手な花を咲かせるのに不思議だが、染色体が3倍体であるためだ。地下にはチューリップに似た球根があり、球根を次々と増やして増殖する。繁殖力は旺盛で各地に群生地がある。

 秋に突然に地面から花茎を伸ばし数日で開花する。が葉は見られない。花と葉が別々の時期に出るからだ。花の咲いていたあたりを冬に訪ねてみると、艶やかな緑色の葉が茂っているはずだ。

 ヒガンバナ科の球根植物。全草有毒。マンジュシャゲ(曼珠沙華)とも言う。

 

 

 

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