SteelGirl はるみん、到着!!鋼鉄の女子高生

 

「じゃあね」

「またあした」

「ばいばい」

閑静な住宅街を女子高校生が駆けていく。友人に手を振って別れを告げ、軽い足取りで自宅へと向かう少女たち。そのなんということもないごく普通の日常は、上空から降下してくる巨大...いや中型くらいのロボットに壊されようとしていた。

 

世界は狙われている。

 

このフレーズは飯が発酵して酒になり、酢酸菌の作用によって酢になり、さらに長い時間をかけて炭酸ガスと水に戻ってしまうくらいに使い古された言葉だ。正直言ってもう飽きているが、世界を狙っている輩がいる以上説明せねばなるまい。その黒幕、日本の某所にあるロボットメーカーは仮の姿、その実態はロボットによる世界征服を企む悪の集団であった。

 

「はー、宿題が3つも出ちゃうと憂鬱だね」

定番の革の鞄が高校生であることを示している。7時間目までの授業で使われる教科書はずっしりと重い。その重い鞄に体を取られるようにぷらぷらと歩いている。

彼女の名前は有明晴美、漫画家なんていいなー、と夢だけ見てたいして努力もしていないごく普通のニート予備軍であった。

「なんかでてないかなー」

コンビニで新刊が出ていないかを確認するが、残念ながら並んでいる漫画雑誌は購入済みの物ばかり。あまり気にせずに家への道をたどっていくと、不気味で得体の知れない男が、汚れたよれよれの袢纏で背を丸めて、景気悪そうに歩いている。ご近所の噂では無職でパソコンにかじりつく駄目人間らしい。名前はAD某という。

「うわあ、いやなものみちゃった」

心の中で嫌悪感たっぷりに顔をしかめるが、表に出すようなことはしない。気にしてませんよお、ってな表情で、なおかつさりげなく男から離れるように方向を変えた。

男は気がつくこともない。のそのそと動く男は何やら口をもごもごさせながら、おんぼろアパートへ引っ込んでいく。

男の姿が見えなくなると晴美はほっとして、家路に向かった。

 

AD某は廃墟のようなゴミの山の中で暗がりの中、かじりつくようにパソコンの電源を入れた。

そこには見慣れないアイコンがひとつ、自己主張するかのように点滅している。AD某はアル中のように震える手で、そのアイコンをクリックした。

「わがGTX団は、かねてより行われてきたロボットによる拠点奪取計画を発動する。電波男3.1415号は拠点奪取状況を調査し、本部まで報告せよ」

 

晴美の耳に、どこからともなくジェット機のように低く響く音が聞こえる。

飛行機のコースによっては上空を通る飛行機雲を見ることがある。飛行機の音だと結論づけた晴美はもうその音を意識から外し、今日のTVドラマのことを考える。

「そろそろイケメン俳優が出てくる頃だよね」

ドラマの中の相手役は誰なのか想像しながら、すっかりインナースペースに浸っているところを不意に現実に戻される。

「な、なになに?」

航空機の響く音がさらに大きくなって、地震のように響く。町に響き渡る轟音に周りを見回した後、はっと気づいて上を見た。

“それ”は猛烈な勢いですぐそこまで迫っていた。

着地体制で“それ”は晴美の真上で猛烈な逆噴射をかけた。

もし、吹き飛ばされたのなら、まだましだったかもしれない。

“それ”はそのまま晴美の上に落ちてきた。

「べしゃっ」と...

 

「なんだなんだ」

「何が起こった?」

ご近所の人が集まるなか、煙が晴れ、“それ”が姿を現す。

息をのんで、じっと見つめる観衆、彼らの前に現れたのはどこの出来損ないのおもちゃ?といったつまらない形の中型ロボットであった。手足は多少太さを変えてあるものの、ただの四角い柱状、関節は丸い形がむき出しである。デザイナーがいないのか、それともデザインをする余裕がなかったのか。

「これは...」

「いったいどういうことだ」

ご近所の方々がざわざわしている中、20メートルほど、推定重量100t位?のロボットはやがてディーゼルエンジン音を響かせながら動き出す。観衆が逃げ出すと、拡声器の声が聞こえてきた。

「わっはっは、大衆諸君、われらはGTX団だ、道を空けろ」

ずしーん、ずしーんとサスが効いていないような足音を響かせて歩く。まだ送電線の地中化が行われていないちょっと遅れた住宅街なので、送電線がプチプチと切られる。そうした中、中型ロボットは不意に交差点で止まった。

半球形の頭が右に左に動く。やがてお目当ての物を見つけたのか、ロボットは警察署に乗り込んだ。

すでに制服警官が大勢出てきてはロボットを見上げている。ロボットはその警官を見下ろすと、腕を警察署に向けた。

「国家権力の犬ども、きけえ、我々はGTX団、世界を征服するための拠点をここに建造することにした。犬どもは直ちにここから立ち去るがよい」

警官はしばらくざわざわと話し合っていたが、やがて一人のごつい男が拡声器をもって一人出てくる。

「あー、GTX団とやら、世界征服とはなかなか豪勢だなあ、だがおとなしく投降する気はないかー?、そのうち自衛隊も来るぞー」

大河原警部補はひょうひょうとした態度でロボットを挑発した。

「バババッ!!」

警察署に向けた腕から機銃が発射される。一瞬だけ発射された機銃弾が警察署の安普請の建物に穴を開け、ガラスを割る。

「これが返事だ、我々は手始めに警察を占拠して、ここを我らの拠点とする」

大河原は一瞬考えるともう一度拡声器を握った。

「いつまでもロボットの中にいるわけにもいかんだろ、おーい、自衛隊でも来れば長くは持たんぞ」

「わっはっは、我々は馬鹿ではない、すでに綿密な計画が動いている、自衛隊など動かんし、すぐに我らの仲間がやってくる手はずだ。持たないのは貴様らの方だ、直ちにここから出て行け、さもなければ皆殺しだ」

大河原は一時撤退を命じた。警察署長が渋々と許可を出す。

「わかった、我々は一時撤退する、うちの奥さんの弁当を取りに行きたいのだがそれくらいは待ってくれ」

「よかろう」

警察官たちは撤退を開始した。自衛隊も動かなかった。国内での武力行使には法的根拠が無いと言うことで、法律を作成しなければならなかったからである。また法律を作っても、衆議院で議論をし、強行採決して、参議院で否決されて、2ヶ月後に再可決しなければならなかったから、3ヶ月くらいは自衛隊は動けないのであった。

 

「ついに奴が動いたのね」

ロボットが去った後には、一人の白衣姿の女性が立っていた。その女性は振り返ると控えている二人の男に言った。

「ただちにあの計画を実行する、横田、三沢、スーパー義体の仕上げを急げ、そして至急素体の確保を」

「らじゃ」

二人の男が研究所に向かうのを確認して、橋本和美も足を踏み出す。

「ぐちゃ」

気色悪い足の感覚にふと下を見ると、つぶれた人間が一人。よほど強い力でつぶされたと見え、上半分はシルエットがなんとか確認できるものの、下半身はもはや地にしみ込んだ赤い模様でしかない。

「うええ、気持ち悪い」

そのうちだれかが片付けるであろうと、周りに飛び散ったものを器用によけながら、目を反らす直前、つぶれた頭の部分がかすかに動くのを見てしまった。だが、助かる可能性は万に一つもない。

「ごめんね」

と言って立ち去ろうとしたがどうにも後味が悪い。携帯電話で知り合いの医者を呼びだす。

「もしもし、私です、ひん死、というかほぼ死体が一丁、轢死体だね、大至急処理して、うざいって?、ああんもう、BJ、医者じゃないと死亡届出せないでしょうが、治療できるなら治療しといて、無駄だと思うけど、そうよ、うちの近所だからさっさと始末しないといつまでもうっとおしいったらありゃしない」

と話しているうちに、人の気配を感じる。顔をあげると自称BJがさわやかな顔で立っている。

BJ、あなたいつのまに」

「いやあ、なあに、医者ってのはとるものもとりあえず駆けつける癖が付いているものでね、手術の途中だからさっさと終わらせて戻りたいのだが」

そういいながら、てきぱきとそこらへんに散らばった肉片を観察する。ほとんどは形さえ残っていないが、頭部だけは半ば土に埋まり、白い脳みそが顔を見せている。

「む」

BJはゴム手袋をすると、その頭の一部を持ち上げた。

「どしたの?」

「うむ、これは義体化できるかもしれない」

「形残ってる?」

「ああ、急げ、人工血液に浸すのだ、ただちに人工心肺装置に接続すれば助かるかもしれない」

「あーなるほど」

橋本の研究所はスーパー義体を研究している。軍事用義体ですら相手にならない、スーパー義体の研究はNTL社会長の個人的資産によって賄われているものであった。

 

安っぽい事務所風の建物に橋本研究所と書かれた紙がセロテープで貼ってある。その中で横田と三沢がスーパー義体の完成を急いでいた。

「横田、三沢、素体確保は中止、これを使うわ」

といって指さしたのがBJが拾ってきた“これ”、何となく目玉だった物や黒髪の一部が残っているところが余計にトラウマとなりそうだ。

「よし、直ちに手術を行う、人工血液と人工心肺の準備、メスをよこせ」

BJの前にポリバケツに注がれた人工血液が置かれた。

しばらくしてACアダプタでつながれた義体用の中古の人工心肺が準備される。

そして、BJの手にはカッターナイフが手渡された。BJは舌打ちしてそれを置き、もう一度要求する。

「おい、メス」

刺身包丁が渡された。

「メスだといっとろーが」

横田がおずおずと答える。

「すみません、メスは置いてないんです、カミソリで良ければ急いで買ってきますが」

BJはまた舌打ちした。

 「仕方がない、それでは私のマントを持ってきたまえ、マントに緊急手術用の道具が一通り入っている」

「はい、わかりました」

 ばたばたと音がするが、なかなかメスが出てこない。いらいらしながらもう一度呼ぶ。

 「ええい、何をしている、急がないと患者が死ぬぞ」

 三沢が別室で叫んだ。

 「すみませーん、マントがどこにあるのかわかりませーん」

 はっと気づいたBJはすまなさそうに言った。

 「あ、すまん、あまり急いでいたので、マントを着てくるのを忘れた」

前途多難であった。

 

「返事は来ないようだな、残念だが市長はお前らを見放したということだ、悪く思うなよ」

GTX団は市に対して警察署を中心とする広い範囲の領有を宣言した。この領域の支配権を認めれば住人には手を出さない。だが、支配権を認めなければ住人もろとも破壊して、実力で領有するという物である。だが、市長は自己判断力をもたず、職員も前例がないということで、回答期限までの48時間を無駄にした。

手始めに破壊するというマンションに設置された爆弾のケーブルをロボットが掴む。そのマンションの住人であった民衆が遠巻きにロボットを見ていた。

「時間だ」

まさにスイッチを入れる瞬間、凛とした声が響いた。

「まちなさいっ!!」

マンションの屋上に人影がある。いや、それは人影だったのか、それはずんぐりとしたシルエットで何かを担いでいる。自分の身長ほどもある巨大な円筒と鋭く伸びる7本の砲身、何トンもある巨大な機関砲を担いでびくともしないその姿。

「その爆弾をすぐに外しなさい、外さなければ実力であなたを排除します」

「誰だ?、貴様は?」

その人影は歌うように答える。

「死の淵から這い上がり、気がつけば鉄の腕、その手に握る悲しみの、力はまさに悪魔の力、SteelGirlはるみん!!、ここに到着」

「......」

一瞬毒気を抜かれた敵は、しばらく唖然として、なんとか立ち直る。

「ふ、ふん、なんだかおかしいのがあらわれたな、まあいい、出でよ、ロボット戦闘員」

半壊した警察署に並ぶ車、その車をメリメリと突き破って人型ロボットがあらわれる。

その数は20台以上、大きさは人よりひとまわり大きい程度。そういえば、ギガテックスの人型ロボットの高出力タイプくらいの大きさであるというかそのまんまである。

「ふん、そんなもん、あいてにもならないわ、やあっ」

不敵にほほえむはるみん、巨大な機関砲をかかえながら、ロボットの前に飛び降りる。

「わざわざ、自らを敵の前にさらすとはご苦労なことだ、いけ、ロボット戦闘員」

“敵”を認識したロボット戦闘員が、はるみんを捕まえようと一斉に近づいてくる。

はるみんは抱えている機関砲の照準装置に目を当て、射撃目標を設定した。制御が自動戦闘制御装置に移ると、はるみんの体は自動的に敵への攻撃を遂行する。へたくそが兵器を持つと危なくて仕方がないからである。

「敵、−30度から+30度、個別識別OK,ACCS、火器管制モードに移行、必殺はるみんアベンジャーGO!」

正確に敵の範囲を認識した自動戦闘制御装置(AutomaticConbatControllSystem=ACCS)30mm劣化ウラン弾を毎分4200発の速度でロボット群にたたき込んだ。本来なら10cmの戦車の上面装甲を突き破る劣化ウラン弾は、咆吼をあげて人型ロボットの装甲を突き破り、叩き潰し、粉砕した。

「なんだと?」

砲煙が収まると、そこに動いているロボットは一台もない...どころか、その向こう側のコンクリートの建物も一緒に蜂の巣になっていた。しばらくして耐えきれなくなった建物は無残に崩れ落ちる...ま、まあ、そんな些細なことはどうでも良い。

建物の崩落による土煙が晴れると、そこには中型ロボットとはるみんだけが残っていた。

「......」

しばらくぼーっとみている敵と民衆、民衆がさわめき始めるころ、敵が動き出す。

「なんということだ、この小癪な小童は少しは骨があるらしいな、では、この巨大ロボット(自称)で貴様を叩き潰す」

「叩き潰されるのはどっちかな?、とりあえず、まだ弾が残ってるから...必殺はるみんアベンジャー!!」

残りの数百発の劣化ウラン弾が中型ロボットに叩き込まれる。さすがに100tの鉄の塊を貫通する威力はないが、踏みつぶされたブリキのおもちゃのようにべこべこに変形していく。

「おのれー!!」

中型ロボットの背中が開いて、ミサイルが発射される、いくつかは先ほどの攻撃で変形してハッチが開かず、内部で爆発する。だが、かろうじて発射できたミサイルは、はるみんめがけて一直線に飛んでいく。

「はるみん粒子砲、チャージ、いけえ」

はるみんの腕から、オレンジ色のビームが伸びた、先頭の2発のミサイルがビームをくらって四散する。ばらばらと散らばった部品の後ろからさらに新しいミサイルが現れる。

「ええいっ!!」

弾着のタイミングを見極め、はるみんが大きく跳躍した。追従しきれないミサイルは、はるみんのいた場所で次々と爆発する。

「そしてえ!」

はるみんはボロボロになった中型ロボットの足もとに駆けた。

「はるみん、スーパーパワー」

足を両腕で握りしめ、力を込める。短時間だけの使用を許されている最大出力にスイッチを切り替え、鋼鉄のフレームと大出力モーターが使用できる限界ぎりぎりのパワーを叩き出す。

「ぐうううっ」

みしみしと中型ロボットの足の外板が変形し、関節が変な方向に曲がっていく。

「やあっ!!」

はるみんが握りしめている足を一気に押し曲げた。無骨な巨大関節のベアリングが壊れ、はるみんの上から、ばらばらと野球ボール大のベアリングの玉が降ってくる。

はるみんがロボットの足から離れた。もはや制御不能の足は自力で立っていることはできない。ゆっくりとロボットの姿勢が崩れ、やがて、地響きを立てて倒れる。

 

 動けなくなった中型ロボットの上に立つと、はるみんはロボットの外板をひきはがした。いくつかのパイプを引きちぎり、無理やりに操縦席をこじ開ける。

そのなかには血だらけになった武骨な男の姿があった。

「罪を償ってもらいます」

男は動こうとしなかった。

「あなたを警察に引き渡します、出てください」

「殺せ」

「え、?」

「殺せといっておる、これが国家に対する反逆であることは分かっている、殺せ」

せいいっぱいの意地であろうことはわかる。しかし、はるみんにはただのかっこ付けとしか聞こえなかった。殺されかけ、生身の体を失くしたはるみんにとっては、くだらない意地っ張りでしかない。

「あなた、あなたのせいで私は...」

怒りが再燃した。男の首筋をつかみ、強引に操縦席から引き出す。

「殺してほしけりゃ殺してやるわよ、このまま首を絞めてやろうか、それとも私と同じようにひきつぶしてやろうか」

はるみんは自分より大きい男を片手でもちあげた。数日前まで一般人だったはるみんには人を殺すことには抵抗がある。だが、怒りがそれを上回っていた。大きな怒りがわずかな理性を上回り、首を絞める右手の力がだんだん強くなっていく。

「ぐええ」

男の呼吸音がかすれ、目玉が飛び出るほど見開かれた。みるみるうちに顔色が赤黒くなり、よだれが垂れる。

「それじゃ、ばいばい...」

「はるみん、やめなさい」

ぐしゃっと首を握りつぶそうと力を入れる寸前、無線機から声が入る。

「はるみん、犯罪者になりたくなければやめなさい」

「う...」

まだ握りつぶしたい衝動が暴れている。

「どう?、まだあなたは犯罪者じゃないの、やったら本当に表では歩けなくなるわよ」

「う」

「くだらない連中を相手にして、自分を捨てるのはやめて、あなたならわかるはず」

「......」

手の力を抜いた。男の顔色が徐々に戻っていく。

「もどってきて、はるみん、機械の体でもまだあなたは社会に戻る権利があるのよ」

はるみんは男から手を離した。無線機のマイクにスイッチを入れて静かに答える。

「わかりました、和美さん、この男は警察に引き渡します」

「よかった、ありがとう、はるみん」

はるみんは男に正対した。

はるみんの右手が男の顔をひっぱたく。

「あなたを警察に引き渡します、来てください」

男は口から血を流しながらおとなしくついていく。

男を引き摺り下ろすとはるみんは男を警察に引き渡した。

 

連行される男の後姿を見ながら、はるみんは唇をかんだ。しかし、そこに思ったような痛みは感じられない。

そのことが余計に悲しみをこみ上げさせる。

犯人を取り押さえているのに夢中の警官が、はるみんに気づく前にすっと民衆の間に身をまぎれさせた。近くにいたであろうはずの和美もとっくの昔に身を消している。

「わたしはまた、普通の生活に戻れるのかな」

自問自答した。家族や友達、そしてこれまでの平穏な生活、考えれば考えるほど、今までの生活から遠く離れるような気がした。しかしいま帰るところは研究所しかない。はるみんは重い足取りで研究所に向かう。そしてその研究所の前で信じられないものを見る。

「あ、なんで?、どうして?」

研究所の前には父と母、そして兄弟が待っていた。和美とBJは少し決まり悪そうに口を開く。

「ごめん、全部話した、いろいろと手続き上必要だったんで、親御さんに全部話しちゃった」

「いやあ、すまない、治療ということにしておかないと健康保険が降りないんだ。さすがにただ働きはしたくないのでね」

家族は微笑んでいた。はるみんは父親に飛びついた。

「父さん」

父親は予想を超える総重量に耐え切れず、そのまま地面にぶっ倒れた。

父親の頭からは血が流れていた。しかし、笑顔はそのままだった。若干ゆがんではいたが。

戻る

 

 

アクセス解析