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先ずは今までに先人や先輩達から教えられて来た鳩や鳩飼育に関する常識を考え直して見る事から始める事で ある。 先人や先輩達から教えられて来た鳩や鳩飼育に関する常識と言われる事を実践していても長距離を帰せないと 言う事は、その常識の解釈が異なっているかまたは常識と考えられている事が間違っているか、或いは常識と 考えていた以外の事で鳩が帰って来るかのいずれかだと考えられる。 |
2.人馴れした鳩は長距離を帰って来られない。 |
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大抵の場合、失敗は1つであっても鳩の成績に大きく影響するものだが反対に成功は1つ1つの積み重ねで 出来上がって行くものである事を認識すべきである。 先ずは種鳩購入の為にお金を使うより、今いる鳩達が安全に飼育出来る事にお金を使うべきである。 |
・具体的には 良く聞くのは鉄製の金網を使い、その金網が経年変化で錆付いた事を知らず、害獣が金網を破って入り込み 殆どの鳩を失ってしまった事や外壁に安価な薄い材料を使い、強風で壊れた隙間から害獣が入って殆どの鳩を 失ってしまった事などさまざまである。自分の鳩舎だけは大丈夫などとは考えない事である。 |
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長距離が帰ってこないからと言ってレースに参加して未帰還だった鳩やその両親の種鳩が駄目だと決めつけない 事である。 長距離を帰す為には良い鳩である事以外に多くの要素が重なり合って初めて帰ることを認識する事である。 鳩そのものの能力はもちろん大きな要素だが、長距離に参加する時の肉体的コンデションの良好さ以上に 精神的なコンデション(帰って来たいと思う気持ち)が大きなポイントとなって来ると思っている。 |
・具体的には 若鳩は、人間で言うと子供の時期で、舎外や訓練等で肉体的にはどんどん成長しているが、精神的な面はとても デリケートでちょっとした事でも舎外失踪や訓練失踪及びレース失踪に結びついてしまう恐れがある時期 でもあります。 此の事を理解しないで、舎外や訓練で鍛えればレースで帰って来ると思い、失踪した鳩には 能力が無かったと決め付けてしまうと種鳩のセレクトが難しくなって行きます。 例として、ある年の秋レースで若鳩3羽が失踪して連絡を頂いたので送り返して貰いました。 その3羽の若鳩を翌年の春レースに使ったら2羽が600K地区Nまで帰還し、翌々年には難レースだった 1000Kレースで1羽が帰って来ました。 此の事は若鳩時には肉体的には成鳩と変わらずとも、精神的には 成鳩と雲泥の差がある事を意味している事と理解出来ると思います。 |
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導入した種鳩が良い鳩だと思っても直系が活躍するのは10羽導入しても、せいぜい1〜2羽程度のもので ある事を認識しておかなければならない。 長距離に於いてはなおさらである。 また、活躍鳩=銘種鳩とは必ずしも当てはまらない事はご承知の事と思う。 導入する時は種鳩を購入するのでは無く、信頼できる誠実な人を「買う」事である。 誠実な人はおおむね 純粋なプライドを持つ方が多く、後々までホローして下さると思う。 |
・具体的には 鳩の雑誌を見て「此れは」と思い最初に導入したのは当舎が22歳の時でした。 当時の成績は鳴かず飛ばずで 「鳩の飼育をやめようかな」と思っていた時期でもあり、自分を奮い立たせる意味も有って当時、女優の ソフィア・ローレンが宣伝していたロードパル(原付バイク)を3台買える金額で輸入鳩を購入しました。 この鳩が当舎の基礎鳩の1羽となったペパーマン"829"の直仔76FWC1624 BC ♂ 柿目 でした。 この事が縁となり、"829"の直仔に配合する♀鳩をお願いしたら送られて来たのが基礎鳩のバンリール 78LYN592 BC ♀ 銀目 でした。 このペアの直系と根本氏経由のH・デスメットやグリズルライン等と交配しレースを楽しんでいましたが時々は 帰って来るもののなかなか安定して長距離を帰す事が出来なく、H・デスメット系の近親で長距離で活躍している 阿部宏氏へ1994年に訪問し、長距離用の若鳩をお願いしました。 そうした所、H・デスメット系で活躍している代表種鳩の仔の同腹2羽を選んで頂きましたが、血統的な特徴を 理解出来ていない時期だったので、選んで貰った同腹の2羽をそのまま購入する事にしました。 導入した2羽の内、♂鳩の方を今まで飼育していたペパーマン・バンリール・デスメットの近親鳩と2000年に 交配した所、直系に長距離で多くの活躍鳩を輩出した鳩00BB07836 B ♂ が出来ました。 この00BB07836はその年に作出した100羽ほどの若鳩の中で、一際目の輝きが目立ち、40K程の 訓練をしただけで種鳩としました。 この様に種鳩を求める時は自分の感覚や好みで選ぶのでは無く、譲って下さる人にお任せした方が成功する確率が 高くなると思っています。 1971年〜2015年までの44年間で他鳩舎から種鳩として当舎にやって来た鳩達は台帳に載っていて解る 範囲で273羽ほど居ました。 その鳩達の直仔や孫で600K以上帰還した割合は120羽の44%程でその中で900K以上帰還した割合は 64羽の23%ほどでした。 |
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昔と違って鳩にとって良い環境とは言えなくなった。 昔は舎外や訓練で猛禽類の被害を気にする必要は殆ど 無かったが、今は至る所で猛禽類の攻撃があり、この事を考慮しなければレース参加もおぼつかなくなって しまう。 |
・具体的には 毎年の事ですが、猛禽類の被害が甚大です。舎外をすれば時間に関係なく猛禽類が出没し、訓練をすればどこで 飛ばしても帰還するまでには猛禽類に遭遇しバラバラの帰還する事が多くなってしまいました。 猛禽類から逃げ切れる鳩を作ろうと幾ら鳩を鍛えても鳩が居なくなれば、当然レースにも参加出来ない訳ですか ら、舎外や訓練も程ほどに行う必要があると思います。 1年中舎外をしていると、活躍しそうな鳩から遣られていきます。 飛ばない鳩は遣られないからです。 訓練も舎外と同じで、回数が増えるほど、危険度は増して行きます。 以上の考えから、当舎では春レースが終わった5月初旬から6月初旬までと秋レースが終わった11月中頃から 翌年の2月中旬までの期間は一切舎外を行わないでいます。 訓練に於いてもレース前に春は1回、秋も2回ほどしか行わない様にしています。 1年12ヶ月間の内4ヶ月間は一切の舎外をしていませんが毎年の様に長距離を複数羽帰しています。 |
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日本人は「純」と言う言葉に弱い。 鳩の系統に純系などはありえない。 正確に言えば純系とはDNAが殆ど 同じで現れる特徴も同じになる事であり生き物に於いてはモルモット位なものである。 系統を否定している訳ではない。 それぞれに優れた系統は存在しているが、その系統を優秀なまま継承して 行くためには、どうしても異血鳩の交配が必要になってくる。 つまりDNAは同じにはならなくなる。 また、同じ系統でも飼育する人によって残して行く鳩達は異なって行く事から同じ系統と言いながら異なった 特性を持つ系統となり、同じ系統とは言えなくなってしまうのではないだろうか。 血統書の中で何々系の鳩である事より、長距離で活躍した記録が多く記載されている種鳩を導入する事の方が 長距離帰還への近道である。 |
・具体的には 良い遺伝子を強く残す方法として近親交配がある訳ですが、この方法は同じ様に悪い遺伝子も強まって行く訳で 近親も程ほどに行わないとレースに耐えられない鳩になってしまいます。 (虚弱・体型の詰り・主翼の縮小・奇形等) その欠点を補う方法として異血を入れる訳ですので、優秀な遺伝子を持つ鳩を導入しなければなりません。 優秀な遺伝子とは目に見える様な「鳩質」を見て判断するものでは無く、血統書の中に記載されている事柄から 垣間見ることが出来ると思っています。 故に当舎では血統書の中に長距離で活躍した鳩達が沢山記載されていて 飼い主が自身を持って薦めてくれる鳩を求めます。 帰巣本能が優れた頭脳の良い鳩はなかなか手に入らないものであり、手持ちの良い鳩は簡単に手に入ります。 |
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長距離を帰すと言う目標があるのなら、長距離で活躍出来そうな血筋の鳩以外は飼育するべきではない。 短距離から長距離まで全てのレースに於いて勝ちたいとか良い成績を上げたいとかは思わない事である。 「二兎を追うもの一兎も得られず。」である。 そもそも、短距離や中距離で活躍出来る血筋の鳩達と長距離で活躍出来る血筋の鳩達とでは管理の仕方が違って 来る。人間で例えるならば、陸上100m走の選手とマラソン選手とでは練習のメニューが全然異なっているのと 同じである。 幾ら長距離で活躍出来そうな雛鳩を作出しても、管理の仕方が短中距離用だと、長距離用の鳩達は訓練や 秋レースで早々と居なくなってしまう。 長距離用の鳩だからと言ってどの鳩も短中距離レースで遅い訳では無く、長距離用の鳩でも 中距離レースで 速いのが居るし、長距離用の鳩と言っても600Kを当日帰れる位のスピードが無ければ長距離などは帰って 来れないと考える。 |
・具体的には 元々、長距離を沢山帰したいが為に、長距離で活躍出来そうな鳩を集め、短中距離用の鳩は集めていない。 長距離で活躍出来そうな鳩を集めて配合しても、短中距離レースで活躍する鳩達も出来るがその鳩達がそれ以降の 長距離レースで活躍出来そうになければ早めに外に出してしまいます。(400KRgレースでシングル入賞 出来てもそれ以後のレースで活躍出来ない鳩など) 長距離用の鳩でも、条件が揃えば短い距離でも活躍する鳩はいるので、無理に短中距離用の鳩を集める必要も ないと考えています。 |
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鳩が長距離を帰って来るには、色々な条件が揃って始めて出来る事だと考えている。その条件とは鳩の能力は もとより、年間の管理、飼料、鳩舎、レース参加時のコンデション、等が挙げられるがそれ以外にレース時の 天候が大きく影響する事はご存知の事と思う。 幾ら優秀な鳩でも、逆風悪天候の中では長距離を帰還する事が限りなく0%に近づくものと思う。 それ故、レースを主催するブロックや連盟の競翔役員達には、細心の注意を払いレースを成功に結びつけて 欲しいものである。 「レースに参加する事」に意義が有るのでは無く、「レースで帰す事」に意義があるのではないだろうか。 仮に、難レースになっても天候以外の条件が揃えば、帰って来る確立は0%ではなくなって来るはずだと 思っている。 それ故、日々の管理に手抜かりが有ってはならない。 |
・具体的には 鳥類は揚力があって始めて空を飛べる。鳥類自身が羽ばたいて揚力を作り出すか、上昇気流を上手く受けて揚力を 貰うかの何れかの方法で空を飛んでいる。 故に上昇気流が発生する低気圧下では飛び易く、下降気流が発生する高気圧下では飛び難くなる。 この事を考えないで、ただ天気が良いからと言って放鳩したのでは、一向に帰りの良いレースにはなり得ない。 当舎が所属する連合会・連盟・ブロックは西コースからの放鳩で、飛ばされた鳩達の移動と気圧の移動が一緒に なり、好条件で放鳩されるとそのまま好条件が続き帰りの良いレースになるが反対に悪い条件で放鳩されると そのまま悪条件下で飛ぶことになり、帰りの悪いレースとなってしまう。 |
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長距離で活躍する鳩達は短中距離で活躍する鳩達と比べ概ね晩熟型が多い様に思われる。 長距離用の鳩達の体格・精神は2・3才になって始めて出来上がると考えられので、長距離に参加する場合、 1才時よりも2・3才時の方が帰還する確立が高くなると思われる。 然しながら、多くの人達は1才時に長距離に参加する事が多いようで有り、この事が長距離での帰還率を下げて いる要因となっていると考えられる。 |
・具体的には 前の項目でも述べたが、若鳩時にレース失踪して送り返して貰った鳩が翌年には600Kを帰り、翌翌年には 1000Kを帰って来ている事から、長距離で帰そうと持ったら長い目で鳩を管理していかなくてはならない事が 解ると思う。 当舎では若鳩時には葡萄峠を越える200Kレースで帰ってくればそれで十分だと考えて、それ以上の距離の レースには無理しては参加しない様にしている。 また、1歳時に於いても600Kレースで帰ってくればそれで十分だと考えて、長距離レースには無理して 参加しない様にしている。 |
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長距離を目標にしている人達の最大の関心事は鳩のコンデションを如何にして良好な状態に持って行くかだと 思っていますが、幾らコンデションを上げようと努力しても長距離に参加させようとしている全ての鳩達が 良好なコンデションになって行く訳では有りません。 その事を知らないで、レースに参加すると長距離を帰って来る確立は低くなってしまいます。 在舎している鳩の中で長距離に参加できる鳩の多くを参加登録するのでは無く、6〜7割程の登録に抑え、 より良いコンデションの鳩を選んで参加する事により、帰って来る確立はグーンとアップして行きます。 |
・具体的には 当舎が長距離に参加する鳩を最終的に決定するには、6つの項目をチャックして行います。 1つ目 例年、700K鳥取GP、900K浜田CH、1000K長門GNが同じ日に行われるので、鳩の適正が どの距離なのかを血統的な面、体型的な面、及び過去の成績などを総合的に見て決定します。 2つ目 地区Nレースが終わってから飼料を与えている時、餌箱に頸を突っ込んでいる時の腰の羽毛の密着度を 観察し、持ち寄り日に近づいてきた時に密着の度合いが良い鳩を参加させ、反対に羽毛が立って来た 鳩は参加しない様にしています。 3つ目 鳩を掴んで見るのは単羽訓練時と持ち寄り日だけなので、単羽訓練時に胸の筋肉の張り具合と恥骨に 近い所にある竜骨の脇に付く脂肪の乗りをチェックし、持ち寄り日に同じ所が良くなっているかで 決定します。(単羽訓練を行わない時は持ち寄り日だけの状態で判断します。) 4つ目 持ち寄り日、初列雨覆羽根が綺麗に並び、初列風切羽根(主翼)の間に入っていない事を左右確認して 決定します。 5つ目 持ち寄り日、特に♂鳩の場合、竜骨を見て赤い斑点が無い事、或いはあっても小さい事にて決定します。 6つ目 高分速レースが予想される場合は3つ目の項目は余り重要視せず、上嘴の切れ目の開き具合でどの レースに参加するかを参考にします。 |
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長距離に参加する時に、鳩の個体を見て、掴んで手に持ってコンデションが良好な状態かをチェックすると 思いますが、それ以前のチェックも重要で、コンデションが上げって来ている状態なのか或いはコンデションが 下がって来ている状態なのかを把握する必要があります。 コンデションにはバイオリズムがあるとされ、コンデションが上げって来ている状態でレースに参加する方が 長距離で帰って来る確立が高くなると考えられます。 |
・具体的には 600kレースまではコンデションの上がり下がりを見ることは有りませんが、600kレースが終わると 選手鳩の羽数も減って来て、コンデションの上がり下がりを見る事が出来る様になってきます。 コンデションの思わしくない鳩の状態が上がって行く過程、又は反対に状態が良い鳩の状態が下って行く過程は 羽毛の密着度を見る事によって判断出来ます。 餌をついばんでいる時に鳩を上の方から腰の羽毛を見て、密着していない状態から段々と密着する様になって くれば状態が上向いていると判断出来ます。 反対に羽毛が密着している状態から段々と密着しない状態に なって行くと状態が悪くなっていると判断出来ます。 |
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この「長距離を帰すには」の記事の他に「その他」の欄にある「訓練に関して」、「長距離帰しの年管理」、 「何故鳩は帰ってくるのか」を記載し、皆さんに当舎のノウハウを公開して来ましたが、内容を見ただけで 自分の知識として終い込んでいただけでは長距離の帰って来る確立が高くなる訳でもなく、自分の鳩舎で 実践して見て、自分の鳩舎に合った方法を見つけ出す事によって初めて長距離の帰って来る確立が高くなると 思います。 今までの自分の考えに固執する事無く、色々な事を実践して貰いたいと思います。 |
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