漆工索引 翠簾洞ホームページ入口

 と 漆工

竹を主材に漆工を始めて10余年
試行錯誤の中から得た技法の覚書や
折に触れて感じたことなどを書きました

しかし
他人には興味が無かろうと思いながら
ひまつぶしに書いたようなものです
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翠簾洞 素舟齋 

素材としての竹

2012/10/22

竹といえば必ず節があります。そして幹は円筒状の空洞になっていますから、私は桿と呼んでいます。3層になっているという表皮は極めて薄いのですが、縦に並んだ細くて固い繊維で出来ていて、しかも油分を含んでいます。従って木目が無く、横から力を加えてもボキッと折れずに、まず桿がつぶれてそれから縦に裂けて曲がります。

竹にはこのような性質があるため素材として扱う上で大きな制約が二つあります。一つは、表皮には油分があるので、硬化した漆が何か固いものにぶつかると剥げ落ちることがあります。一箇所剥げると周りが連鎖的に剥がれていきます。もう一つは、これは木材にも見られますが、環境の湿度が極端に下がると漆を塗った丸竹でも音を立てて裂けることがあります。

しかし、糸を付けない凧は揚がらないように、これらの制約を踏まえて制作するのもまた楽しいことです。

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竹材の採取と保管

2012/10/23

桿の直径の百倍余りも高いとろこまで養分を送るのですから、竹には沢山の水気が含まれています。筍が出る頃は桿を切ると水が滲み出すほどですが、極寒の季節はほとんど成長しないので水分が少なくなります。素材にするにはこの頃に、3年ほど育った竹を選んで採取します。

取ってきた竹をまず水洗いして汚れを落とし、虫が入った穴などが無いか入念に調べます。出来れば、更に練炭の火などにかざして熱し、桿に入っているかも知れない虫卵を殺しておきます。熱しているうちに桿の表面に油分が出て来たら厚い雑巾などで拭き取ります。ただしこの場合に熱しすぎると桿が破裂して使えなくなります。
 桿の破裂は、節などに小さな穴を開けて桿の内部で膨張する空気圧を逃がせば防ぐことが出来ます。しかし穴を開ければ、当然、桶や花器などの液体を入れる道具は作れなくなります。

こうして虫卵を殺したり表皮の油分を拭き取ったりしてから、なお数年は雨露を避け風通しのよい日蔭に保管して十分に涸らします。涸らすことで竹の水分が抜け、材質が硬くなります。

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竹を切る

2012/10/24

何を作るにも最初の作業は適当な寸法に竹を切ることです。竹は固くて普通の鋸を使うと直ぐに切れなくなるので、竹挽き鋸という竹専用の鋸が売られています。しかし、このホームセンターなどにある竹挽き鋸は粗挽きには効率が良いのですが、刃が厚くて精密用には適していません。私は細かい作業になると、精密鋸として売られている「ピラニア鋸」を使っています。

鋸を使う時に、切り始めた方向からそのまま最後まで切り落とすと、必ず最後の表皮がささくれてしまいます。これを防ぐには一度に切り落とさず、最後を適当に残して反対側から鋸を入れて切り落とします。私は切断面に養生テープをしっかり貼り付けてその上から切るようにしています。また、鋸を引く時に、あまり力を入れないでゆっくり使った方が綺麗に切れるようです。

立てた時に傾かないように、桿に垂直に竹を輪切りにするのはなかなか難しいです。万力などでしっかりと固定出来ればうまく切れるのでしょうが、手で押さえて片手で切ると失敗が多くなります。TVで見ると職人さんはいとも簡単に切っていますが、あれは長い年季が入っている職人芸なのでしょう。
 寸法などの制約があって切り直しが出来ない場合は、耐水ペーパー#100を両面テープで厚めのガラスに貼り付けて水平に置き、両手で垂直に保ちながら水研ぎをして修正します。

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丸い竹に四角い穴をあける

2012/10/25

適当な道具がない素人が鋸で丸い竹を縦に切ることはほとんど不可能です。職人の伝統ワザは知りませんが、私は鉈や切り出しを叩き込んで割る以外に方法がないと思っています。だから竹筒の一部を窓のように切り取るのは至難の業ですが、何とかしなければなりません。

桿の直径よりも短い窓を開けるときは鋸が使えません。そこで、まず四角い窓の4隅に、桿の中心に向けてドリルで穴を開けます。この場合の注意点は、ドリル径の半分だけドリル先を内側に立てることです。次に桿の横方向(輪切りの方向)の穴の間に、隣の穴とつながるくらいなるべく多くの穴を横一列に開けます。穴がつながっていないところは、あとから手彫りで削ってつないでいきます。こうして目的の窓の上下の端に、横にビーズを列べたような切り口が出来れば8割方窓が開いたようなものです。

次に窓の縦枠に沿って縦に切る取るのですが、これも一刀両断というワザはありません。筒になっている竹ならば、中に支えの丸棒を入れて鑿(のみ)などを入れれば割れるでしょう。しかし大抵の竹細工では節を残しています。そういう時は支えの丸棒が使えませんから、開ける窓の中程から竹を少しずつ削るようにして剥ぎ取っていきます。一旦窓が開くとあとは案外簡単に拡げられます。窓の縦縁に近づいたら切り出しなどで削る方が綺麗に上がります。

縦枠は荒っぽいながらも大体の枠が出来ましたが、横はアーチ状に乱杭状態です。ここは木工鑢(やすり)や金鑢で研ぎ落とすほかありません。この際に守らなければならないことは、鑢を必ず表皮側から内側に押して研ぎ出すことです。逆方向に引いて研ぐと表皮が剥がれてささくれになります。

仕上げは耐水ペーパーで水研ぎします。この場合も粗目の耐水ペーパーを使う時は、必ず表皮側から内側に押しながら研ぎます。

水研ぎのあとは、十分に乾燥させてから、細目のサンドペーパーで空研ぎして仕上げます。

なお、水研ぎでも空研ぎでも、作業する窓の幅に見合った板に適宜のサンドペーパーを貼り付けて使います。
 サンドペーパーは表面が平滑な板に、両面テープで貼り付けています。

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漆工と陶芸

  予定稿

陶芸教室と称するものは近所にも沢山あるが、漆塗りの教室はマスコミ等でもほとんど見たことがない。

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以下  続けるつもりです

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