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俳 句

2014年11月(1句)
2015年1月(7句)
2015年2月(84句)
2015年3月(50句)
句集「市原野」(120句)

 

今(2019年)になってみると 以上の句は五七五音に言葉を並べただけで
どうも 俳句と言えるほどのものではありませんでした
しかし 私にとっては懐かしい京都暮らしの心象として 残しておきます


 

甲午霜月  2014年11月

家の北側には鞍馬川越しに向山があり 貴船山から鞍馬山に連なっている

朝霧も 包み残して 家二軒


 

乙未睦月  2015年1月

バス停のベンチにて

バス待てば 風花舞うや 市原野

二階の窓越しに行く人を見下ろして

窓越しに 舞う雪賞でて 冬ごもり

散歩

蝋梅の かおり凍てつく 寒日和
蝋梅の ほっこり咲くや 空暗し
風冴えて 犬も帰ると あとずさり

鞍馬温泉の帰途

雪解けや 卯建の家もある 鞍馬路
バス待てば 春なお寒し 麩餅喰う
雪解けの 水なお浅し 鞍馬川

散歩

淡雪や 足あと残し 犬と行く


 

乙未如月  2015年2月

「大原道の駅」で臼取り餅を喰らう 7日

春の雪 まだ消えやらぬ 大原野

 連吟「所用にて京都・新横浜間日帰り」 10日

出掛ける

春暁も まだ明けやらず 雪を踏む
雪明かり 見廻す空に 月は無し

   雪明かり 月やいずこと 振り仰ぐ(芭蕉風)
   雪明かり 月頭上かと もとめけり(蕪村風)
   雪明かり 月はどこだと 空を見る(一茶風)

始発バス

雪を払い 乗り込むバスに 客ふたり

京都発7:35 のぞみ201号に乗る 関ヶ原付近降積雪のため減速運転

蕭条として 降る雪積もる 関ヶ原
雪蕭条 白皚々の 関ヶ原
雪荒れて のっそり進む のぞみ号
吹雪き過ぎ のっと日の差す 新幹線
新幹線 ひたすら走る 枯れ野かな
トンネルを 過ぎればここは 春の色
ひた走る 「のぞみ」の窓に 畦青む

打ち合わせ

春立ちぬ いざ家建てむ 間取りして

帰途乗換駅長津田にて

エキナカの 鯛焼きに並ぶ 男たち

新横浜発16:09 のぞみ117号に乗る

あっけなく 夕陽の沈む 枯れ野かな
春日沈み ひたすら走る 新幹線
どす黒き 雲間を染めて 春日落つ
春日落ち 急にくろずむ 関ヶ原
春日沈む 足から冷える 京都駅

地下鉄国際会館駅バス停

夕されば また冴え返る 市原野

散歩

黄水仙 きっぱりと咲く 散歩道
白雪に 糞する犬の 散歩かな
ほわほわと 朝餉のけむり 山かすむ
日が射して 牡丹雪も舞う 散歩道
日うらうら 杉の梢に 力あり

家の中で 13日

バレンタイン ケーキ焼く娘も まめまめし
春闌けて 蕾終わりぬ シクラメン
水肥注す ミニシクラメンに 蕾なし

裏庭に蕗の薹が球を転がすように出ているので 14日

地の花か そっと摘み取る 蕗の薹

娘の運転する車に乗って加茂川堤を行く 15日

うららかや 賀茂の川辺を 走る子ら

裏山

向山の 木々の梢に 春日暢ぶ
山並みの 墨絵を染める 春の色
枯れ木なれど 山の賑わい 春光る

散歩がてらに農協まで 16日

安売りの セロリを買うや 水ぬるむ

晩春 17日

枯れすぼむ ポインセチアや 春の暮
春深み 厳しさ弛む 杉木立

外套 18日

オーバーを 置いて出掛ける 春がすみ
オーバーは 邪魔なばかりぞ 山笑う
行く春や 窮屈になる 冬支度
山笑う 脱がせて洗う 犬の服

 連吟「所用にて京都・新横浜間日帰り」 20日

京都08:33発「ひかり512号」で上京

まだら雪 畦に残して 関ヶ原
柔らかく ビル照り返す 春日かな
春闌けて 枯れ田に青き 畦もあり
名も知らぬ 水涸れた川 土手青む
新富士の 煙溶け込む 春がすみ
家並みに 十字架もあり 春うらら
春日暢びて 芽吹かんとする 針葉樹
丘の辺は 茶畑なりや 春の色
山肌の 色さまざまに 春深し
春の海 のたりのたりと 熱海駅
箱根越え 山目覚めたり 春日濃く
小田原や その名懐かし 春の道

横浜線所見

鯛焼きの 餡に四種あり 買い惑う
春たけなわ マンションに干す 布団あり
鶴見川 草丈伸びて 土手青む

新横浜16:22発「ひかり479号」で京都へ帰る

トンネルを 出れば箱根も 春の宵
熱海駅 空に溶け込む 春の海
春日暮れて 滑り込むホームは 名古屋駅
春の宵 満席で走る ひかり号
春日影 沈まんとして 山しずか
暮れなずむ 夕焼け雲や ひかり号
京都近し 車内行き交う ひかり号
日が落ちて 冬まだ去らぬ 寒さかな

家の窓から望む 22日

春暖や 紫紺の山も 青み差し

孫娘 22日

別れ霜 肩淋しげな 孫むすめ

朝の散歩 23日

枯れ田にも 薄氷張る 別れ霜
紅梅や 今開くかと 見つめけり
春の雨 杉の葉色む 向山
山を見れば 笑わんとして 春かすむ

北山の帰路 23日

春の宵 待つまでもなく バス動く
袋いっぱい 菓子パン買って 春の風

午後の散歩 23日

西日差せば 山肌青む 春の風
山並みの 遠ち近ち分かつ 夕霞
門に置く 紅梅に停まる 散歩かな
門に置く 盆梅の紅 鮮烈に

朝の散歩 24日

忘れ霜 白くなれずに 露光る
別れ霜 栗の香がする 犬の糞
白も紅も 庭に梅無し 市原野
菅公が 独り占めする 京の梅
京なれば 梅は北野の 天満宮

北野天満宮梅花祭 26日

梅花祭 洟水拭きつつ テレビ見る
雨傘に 梅取られたり 天満宮


 

乙未弥生  2015年3月

雛祭り 2日 4日

三月や 日差し眩しく 明けにけり
雨上がれば 枯れ田青めく 雛祭り
雨上がり 雛まで届く 朝日かな
あかねさす 光のどけし ひなまつり
くれないの 朝日に照るや 雛飾り

ゴミ出し 5日

ゴミ出して 知らぬ親父と 声交わす
ゴミ出しや 金盞花咲く 家もあり
曇り空に まだ山起きず ゴミを出す

よもぎ餅 5日

香り佳し 見て良し餡好し よもぎ餅
夕飯の 菜が決まらず よもぎ餅
母と娘の 口論途切れて よもぎ餅

花桃 8日

花桃の 今開かんとして 雨寒し
並木成す 桃の夭夭たり 灼灼たり
傘差して 行く孫娘 桃の道

病院通い 10日

バス待てば 北風が勝つ 日向ぼこ
バス停の 肌刺す寒さ 日向ぼこ

春の雪 11日

田の草を 残して寒き 春の雪

薄氷り 12日

山の気や 田の面に白く 薄氷り

春の星 13日

満天に 春の星あり 市原野

春の雨 14日

春の雨 樋の端から ぽとぽとと
菜種梅雨 トイプードルも 眠りおり

山鳩 15日

春の山 遠くで土鳩 ぐっくうと

犬の散歩 17日

うららかや もっと行こうと 散歩犬
春の野に 放されて犬 駈け回る

川端通りと円山公園 17日

川端の 青める柳 風光る
青鷺も 塑像の如き 春日かな
花待つや 池面に揺れる 若やなぎ
鮒捕って 青鷺渡る 春の池
うららかや 公園に響く 中国語

小鳥鳴く 18日

ちりちりと 鳥鳴く春の 朝日かな

弁当買い 19日

春雨に 濡れて止むなく 傘ひらく
春雨も 大粒に降る 暖かさ
春雨や 弁当持つ手に 傘重し
ぽつねんと 荒れ畑に咲く 白水仙
荒れ畑に 昂然と咲く 白水仙

春の日 20日

春日光る そこにカメムシ あそこにも
背伸びして 咲くイヌフグリ 風光る
春の日や 犬のしとする イヌフグリ

彼岸 21日

牡丹餅の 甘きは母の 匂い哉
牡丹餅に 念仏唱える お中日
牡丹餅に 五十分並ぶ 彼岸かな
花や遅し 柳枝嫋嫋として 高野川
若やなぎ 枝たおやかに 花招く
青柳も 花差し招く 高野川

産寧坂 22日

清水に 華語かしましき 彼岸かな
客ふたり 残してバス出る お中日
バスに乗り メール打つ老婆の 彼岸かな

通院 23日

花七つ 白木蓮の 若木かな
患者みな 処方変わらぬ 花粉症

山影 26日

山影を 山に落として 春の朝


 句集「市原野」

ゆるゆると歩む草鞋や片しぐれ  2014年末

山霧も包み残すや家二軒
バス待てば風花舞うや市原野
日矢浴びて降る雪何ほど積もるらむ
窓越しに舞う雪賞でて老い深し
蝋梅のかおり凍てつく寒日和

風冴えて犬も帰るとあとずさり
北山のしぐれ気まぐれ濡れて行く
蝋梅のほっこり咲くや空暗し
バス待てば春なお寒し麩餅喰う
雪解けの水なお浅し鞍馬川

淡雪や 足あと残し 犬と行く
春の雪 まだ消えやらぬ 大原野
春暁も まだ明けやらず 雪を踏む
淡雪に 足あと続く 二人分
雪明かり 見廻す空に 月は無し

雪を払い 乗り込むバスに 客ふたり
雪蕭条 白皚々の 関ヶ原
雪荒れて のっそり進む のぞみ号
新幹線 ひたすら走る 枯れ野かな
トンネルを 過ぎればここは 春の色

ひた走る 「のぞみ」の窓に 畦青む
春立ちぬ いざ家建てむ 間取りして
エキナカの 鯛焼きに並ぶ 男たち
あっけなく 夕陽の沈む 枯れ野かな
どす黒き 雲間を染めて 春日落つ

春日落ち 急に黒ずむ 関ヶ原
春日沈む 足から冷える 京都駅
夕されば また冴え返る 市原野
黄水仙 きっぱりと咲く 散歩道
白雪に 糞する犬の 散歩かな

ほわほわと 朝餉のけむり 山かすむ
日うらうら 杉の梢に 力あり
春闌けて 蕾終わりぬ シクラメン
蕾絶えし ミニシクラメンに 水肥注す
地の花か そっと摘み取る 蕗の薹

うららかや 賀茂の川辺を 走る子ら
向山の 木々の梢に 春日暢ぶ
山並みの 墨絵を染める 春の色
枯れ木なれど 山の賑わい 春光る
安売りの セロリを買うや 水ぬるむ

春日跳ねて 汗ばむほどの 散歩道
枯れすぼむ ポインセチアや 春の暮
春深み 厳しさ弛む 杉木立
オーバーを 置いて出掛ける 春がすみ
オーバーは 邪魔なばかりぞ 山笑う

山笑う 脱がせて洗う 犬の服
行く春や 窮屈になる 冬支度
闌けて 中より外が 暖かく
まだら雪 畦に残して 関ヶ原
柔らかく ビル照り返す 春日かな

春闌けて 枯れ田に青き 畦もあり
名も知らぬ 水涸れた川 土手青む
新富士の 煙溶け込む 春がすみ
家並みに 十字架もあり 春うらら
春日浴びて 芽吹かんとする 針葉樹

丘の辺は 茶畑なりや 春の色
熱海駅は 銀波寄せ来る 春の海
箱根越え 山目覚めたり 春日濃く
鯛焼きの 餡に四種あり 買い惑う
春たけなわ マンションに干す 布団あり

鶴見川 草丈伸びて 土手青む
山並みの 色さまざまに 春深し
トンネルを 出れば箱根も 春の宵
熱海駅 空に溶け込む 春の海
春日暮れて 滑り込むホームは 名古屋駅

春の宵 満席で走る ひかり号
春日影 沈まんとして 山しずか
暮れなずむ 夕焼け雲や ひかり号
陽が落ちて 冬まだ去らぬ 寒さかな
別れ霜 肩淋しげな 孫むすめ

枯れ田にも 薄氷張る 別れ霜
袋いっぱい 菓子パン買って 春の風
山並みの 遠ち近ち分かつ 夕霞
忘れ霜 白くなれずに 露光る
別れ霜 栗の香がする 犬の糞

京なれば 梅は北野の 天満宮
梅花祭 洟水拭きつつ テレビ見る
三月や 日差し眩しく 明けにけり
雨上がり 雛まで届く 朝日かな
くれないの 朝日に照るや 雛飾り

ゴミ出しや 金盞花咲く 家もあり
母と娘の 口論途切れて よもぎ餅
並木成す 桃の夭夭たり 灼灼たり
桃の道 傘差して行く 孫娘
バス待てば 北風が勝つ 日向ぼこ

日向でも 肌刺す寒さ バスを待つ
田の草を 埋め残して 春の雪
山の気や 田の面に白く 薄氷り
満天に 春の星あり 市原野
春の雨 樋の端から ぽとぽとと

菜種梅雨 トイプードルも 眠りおり
うららかや もっと行こうと 散歩犬
春の野に 放されて犬 駈け回る
川端の 青める柳 風光る
青鷺も 塑像の如き 春日かな

花待つや 池面に揺れる 若やなぎ
鮒捕って 青鷺渡る 春の池
ちりちりと 鳥鳴く春の 朝日かな
春雨も 大粒に降る 暖かさ
ぽつねんと 荒れ畑に咲く 白水仙

春日光る そこにカメムシ あそこにも
背伸びして 咲くイヌフグリ 風光る
春の日や 犬のしとする イヌフグリ
牡丹餅の 甘きは母の 匂い哉
牡丹餅に 念仏唱える お中日

花や遅し 柳枝嫋嫋として 高野川
若やなぎ 枝たおやかに 花招く
青柳も 花差し招く 高野川
清水に 華語かしましき 彼岸かな
客ふたり バスに余りし お中日

バスに乗り メール打つ老婆の 彼岸かな
花七つ 白木蓮の 若木かな
患者みな 処方変わらぬ 花粉症
山影を 山に落として 春の朝
白木蓮 朝日に跳ねて まぶしかり

巽橋 舞妓飾って 花見かな
白川に にわか舞妓や 花の雲
夜桜の 賑わい明日は 四月馬鹿
夜桜や 濃いも薄いも 枝垂るるも
おぼろ月 枝垂れ桜に コップ酒

 

平成27年1月〜3月作

翠簾洞 素舟

2015年4月4日 初刷
2015年4月 6日 改訂
2015年4月18日 再訂
2015年4月29日 三訂
2015年5月18日 四訂
2015年6月18日 五訂