拭き漆工房 翠簾洞 素舟齋
私が作っている盆栽乃至凡栽の中で最も古いのがこの黒松です。前の所有者から考えれば半世紀以上も経っているでしょう。しかし、漆工品を始めてからは土いじりをする時間が激減して、ここ数年は水遣りがやっとでした。そうした根詰まりの窒息死寸前で、2012年5月に7年振りに植え替えをしました。
附 黒松育培経過に跳ぶ
単身赴任中の仙台で総務部長より彼の父の遺品として種々の鉢ものとともに頂いた。故人は染料化学の権威だった方とのこと。
仙台では定年退職になるまで守衛所脇の棚に置いていたが、剪定・植替え等はしなかった。
退職後、自宅に持ち帰り、土替えや鉢換えをやっていたが、年次の記録は取っていなかった。
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植替え 根切り
今までの樹形では螺旋型に枝が並んで樹形が出来なかったので、
半懸崖にして植替えた。
作業前
鉢抜き
根ほぐし・根切り・植え替え
植え替え後
枝切り、針金掛け。懸崖らしく枝を上向きに流すように作る方針。
作業前
枝切り・整枝・針金掛け
二の枝、四の枝を抜いた。
作業後
半懸崖作り
植え替えから半年後の樹容
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元旦初雪
前々から思っていたのだが、半懸崖ではどうも樹形造りが難しくて落ち着かないので、下がっている枝を曲げ起こして改作しようかとも考えた。しかし幹曲げに自信がないので見合わせていた。
今年の植え替えで再び普通の模様木仕立てに戻すことにした。
抜いてみると数本の長い根が鉢底に廻っているが、鉢に当たる面の根が白い割りに、それを崩すと中は絡んでいない。根元の苔を外してみると根張りは樹を起こした方が立ち上がりがよい。むしろ立ち上がりに一つの見所が出来た。
根土は余り落とさないようにして、根直下だけ串で突いて塊を軽くほぐした。直根のような気になる根もなくて、鉢に植えた時に程よくなる程度に周囲の根を丸く切り落としただけで終わった。
鉢に沿って回り込んだ長い根が1、2本あったが、短く切り揃えておいた。
土は桐生砂の大粒を鉢底に敷き、赤玉土と桐生砂に炭を約7:2:1程度で合わせた。勿論粒度は大中小をそれぞれに使い分けた。
枝の剪定は三つ又に出ていた一本を切っただけに終わった。幹の角度変更により当然枝の方向変換が必要なのだが、折しも雨が降り出したのでそのままになった。
半懸崖の名残りで、幹と枝葉が逆流れになった
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みどり摘みをした。全体のかたちは一応みられると思って剪定は全然していない。特に突出した枝もないし、不要な枝も見当たらない。
[前] みどり摘み [後]
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摘み取ったみどり(新芽)
秋になっても鋏を入れる余地がない。葉色もよくこのまま冬を越すことにする。
年賀状用に撮影した。
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春先の植え替えが出来なくて今になった。
水が届かなかったのか新芽も伸びが遅く葉にも元気が感じられなかったので、とにかく梅雨前に植え替えることにした。
植え替え前
鉢抜き
予想通り根はすっかり廻っていて土は乾いている。
根ほぐし・根切り
根をほぐすと長い根は50センチくらいも伸びている。交差したり大きく弧を描くようにして上に戻り込んだりしているが、水が涸れているためか太くても素直に真っ直ぐになる。
植え替え
土は硬質大赤玉土を底に敷きその上に置いた根が隠れる程度に被せた。次に赤玉土中粒を入れ箸で突き込んだ。上土は草花用混成土と川砂を5分に合わせ炭屑を少し混ぜた。更に箸で突き込んだ。
植え替え後
なるべく根の白黴様の菌を残すように気を付けたが、髭根を殆ど切り取ったので、前の鉢の岩ヒバを差し込むように植えた。
如雨露で2杯ゆっくりと水を掛け充分に赤玉土が湿るようにした。表土が平面になって見た目は綺麗だ。
樹勢を弱めるか、枝を詰めたような蒸散制御効果が出るか分からないまま、漸く伸びてきたみどり摘みをしておいた。
短葉法に倣って葉を半分に切り落としたいところだが樹勢を弱めると思ってそのままにしておいた。
植え替えは成功して樹勢がよくなったようだ。そこで久し振りにもみあげをやった。矢張り手入れするとサッパリとしてよい姿になる。
もみあげ後
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この年は記録なし
春の手入れをしていないので樹容は荒れ気味だが、枯葉の整理と草取りだけにしておいた。
今年は暑気が激しく雨が少なめで水遣りに気を使ったが樹は元気なようだ。
整理前
整理後
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みどり摘み
昨日みどり摘みをやったが伸びているのは1本だけで、どれも摘めないほど短くてミドリらしいみずみずしさもない。ミドリを摘んでもいつものような樹液が溢れてこない。これはもう間違いなく根詰まりだ。
植え替え前
鉢抜き
底網のアルミ線を伸ばしたら樹を持ち上げただけですっぽりと鉢から抜けた。黴のような白い共生菌もよく育ち、しっかり根が廻ってまるで大きな金鍔のうようだ。
根ほぐし
根掻きを刺すと鉢底に沿って四角く巻いた根が綺麗に層になっている。鉢の深さの3分の2ほどはそんな廻り根で、何周もしているから伸ばせば随分長いだろう。
根切り
この廻り根は全部切り落としてしまった。上部もすっかり髭根で固まっているが、塊を解しているうちに髭根はほとんど切れてしまった。結局棒根が主になり細い根は僅かしか付いていない。
植え付け
土は鉢底と赤玉を1層ずつ敷いて、その上に赤玉中粒5、川砂3、黒土1、草花用混成土1、炭屑少々を混ぜて箸で突き込んで植え付けた。根に共生菌が付いている岩檜葉を鉢の隅に植え込んでおいた。
植え替え後
ちょっと厳しい植え替えになったが、枯れることはなかろう。
葉色に艶がありなかなか元気なようだ。松は水はけ良くたっぷりと水をやるのを好むということに気づき、鉢の岩桧葉の巻き具合を見て十分に水を遣ったのが良かったのだろう。枯れた葉を取り除いただけで剪定はしなかった。
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手入れは悪いが去年の小雨多照にもかかわらず結構元気なようだ。
樹高がないので長い葉が混みすぎる感がある。少し短葉法をやって枝を整理したいところだ。
もうとっくに夏至が過ぎたのにみどりらしいものが出てこないで、新葉が拡がってきた。
枝芯が長く伸びないのは樹容上結構なのだが、みどりが出ないのは異常気象のせいか根が弱っているのか。昨年の植替え前のみどりも元気がなかったが、樹も老化したのかな。
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