製作年度:2010年 日本 映画 配給:ギャガ
監督:深川栄洋 出演:堀北真希 高良健吾
2011年2月 映画館にて鑑賞
作家・東野圭吾のミステリー小説の映画化であるが、数年前夜10時枠のテレビドラマ版を観た時は結構おもしろくてはまった。小悪魔な綾瀬はるかにめろめろになり、山田孝之の演じる役の不幸指数はいつに増して高く、更に食いついたら離さない武田鉄矢とガチでチンピラなのではないかと錯覚してしまいそうな渡部篤郎のキャスティングが秀逸だったのが印象に残っている。柴咲コウの主題歌もかなりよかった。ともっと再評価されてもいいドラマだったとは思ったがいかんせん内容が重いので埋もれていってしまうんだろうなとは思う。
映画版の堀北真希(序盤顔白く塗り過ぎ)も高良健吾も悪くはないとは思うが、船越さんの刑事はちょっと優し過ぎた感はある。セット雰囲気なんかは予算がドラマより上がった分年代を踏まえた空気感の再現に力を入れたようで、衣装やドヤ街、屋敷としっかり作ってある。序盤の捜査シーンなんかは韓国の刑事もの映画のようで良好。内容の方はというとドラマから入った人は始まってしばらく観ていると気が付いたと思うが、「えっ?これ刑事中心の進行なの?」と思ったはず。原作に近づけたのかは読んでいないので分からないがそういう切り口できたかとなる。鑑賞者と逃避行の成り行きを共有するドラマ版のヒューマン仕立ての方が一体感がある。事件の発端の殺しの動機なんかも変に最後に持ってきたりしていてすでに知っている身としてはもどかしさを感じるし、雪穂と亮司が一回だけ寝るところは名シーンなのに今回はない。
刑事に重点を置くのは構わないのであるが、雪穂と亮司の描写が少な過ぎてただ鬼畜の所業を繰り返す極悪人になってしまっているのが問題。いくら生い立ちが悲しいからといって同情するにも限度がある。レイプ被害にあった女性が好きな男にレイプを何回も依頼するというプロットがどうにも納得がいかない。真希ちゃんの言い分は「私はもっとひどい目にあったの、私の顔と男の顔とどっちを思い出したいの?」とかなんとか…。観ていて笑いをこらえるのが大変だった、ドSな設定も嫌いじゃないけどもはるかちゃんの方がまだ情があって思いやりがあった。ましてや被害者は女学生ばっかだし、亮司からしても幼女をもて遊んでいた父と変わらないという事態が発生してしまう。暗殺のプロが主人公のハリウッド映画だってターゲットに子供がいたら殺すのをためらったりする。ここで葛藤して雪穂を正しい方向に導いていくというところにドラマが発生するのに間のストーリーを省きすぎて唐突のレイプ魔みたいなことになってしまう。ドラマ版がもう一度観たくなるし原作をチェックしたくなる一品であった。