萩尾望都さん

「トーマの心臓」 (99/03/29)

 ユリスモールを愛していた、トーマ・ヴェルナー。彼は、学校の中でも人気者でアイドル的な存在だった。そんな彼が線路に身を投げて死んでしまうところからこの物語は、始まります。トーマって主役じゃないの?そのトーマがいきなり死んでしまって、ちょっとショックでしたね。いきなり謎を持ちかけられたというか、「どうしてトーマ・ヴェルナーは、死んでしまったのか?」というのが念頭にありました。そこに現れたのが、トーマにそっくりな、エーリク・フリューリンク。この子がすっごく可愛いんですよ(笑)そばにいたら、ずっと抱きしめてしまいたいくらいですね〜。凄い心が澄んでいる。自分の母親が寂しがりやだということを知っていて、いつかお母さんと結婚すると小さいときに決心するのです。そしてそのまま体だけ大きくなってしまったという感じでしょうか。ある日、ユリスモールの実家に泊めて貰うことになるのですが、そこでユリスが祖母にひどい扱いをされていたのを知ってしまいます。そして、その晩ユリスが寂しくて泣いているのではないか?とエーリクは、思ってしまい、泣いて彼の部屋まで慰めに行くのです。そこが泣かせてくれるというか「なんていい子なんだぁ!」って思ってしまったわけですヨ。当のユリスはというといつも通り、冷静で全然寂しくもないという素振りだったりするわけですが。

 この作品では、「人を好きになるということは、どういうことなのか?」と言うのがテーマとしてあると思います。そして、あるレベル以上に人を好きになることをためらっていた僕にとっては、凄く励まされた本です。好きな感情は、どうしようもないことだし。相手からどう思われようと関係ないんですよね。そこで、「相手に嫌われたくない」と考えてしまう人は、相手が好きじゃなくって、自分が好きなだけ。これから先、もっといろんな人を好きになっていこうと思う今日このごろでした。

 


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