コンサートレポート

インデックスに戻る

2005年


 

No.008

「木下尊惇&菱本幸二 フォルクローレ・コンサート」

05/12/16-18 焼津「てんせき舎」静岡「聖光学園」浜松「ぬいや」
 

年末に、浜松の「ぬいや」さんでコンサートを企画していただくようになって、もう何年になるだろう。「今年も、ぬいやさんのコンサートまで、無事にたどり着けますように・・・。」いつの間にか、そんな風に念じてすらいる。5年前から、やはり毎年呼んでくださる焼津の「てんせき舎」に、今回は静岡の学校でのコンサートが加わった。

 

「聖光学園」は、カトリックの男子中高校である。コンサート会場は、そのオラトリオ(礼拝堂)。クリスマス・コンサートをと、元PTAの方々から成る「塩の会」が主催してくださった。ボリビアのクリスマス・ソング「ビジャンシーコス」と、「きよしこの夜」を、プログラムに加えた。スペイン語で「Noche de Paz-平和の夜」と歌われるこの曲は、いろいろな題名と歌詞を持つ。コンサートに先立つミサでは、「しずけき」という題名で歌われた。

 

コンサートの最後に、もう一度「しずけき」を、私たちと一緒に歌っていただいた。オラトリオに響く歌声は、とても、とても、感動的であった。

06/01/21




・・

 

No.007

「ボリビアの音楽と人々の生活」

05/12/10 東京「ブリヂストン美術館ホール」
 

音楽を通じて、ボリビアに暮らす人々の生活を紹介する・・・。コンサートの企画を下さった、美術館スタッフの方が投げかけた、素朴な疑問に対する、私が準備できる答えのひとつである。

 

第一部では、舞台上に所狭しと並べられた楽器を使って、各地の土着音楽を演奏する。アイマラ〜ケチュア〜オリエンテ〜タリーハ〜アフロと、やっていても非常に面白い。第二部は、スライドを見ながらボリビア各地への旅である。私の住まいがラ・パスであったために、アンデス高原への旅が多くなってしまった。第三部は、いわゆるフォルクローレのアンサンブル。これも、なるべく各地のものを取り上げた。

 

私たちの愛するボリビア音楽は、地に足をつけて生活する人たちの、偽らざる響きそのものである。私はその立場から、誇りを持ってボリビアを紹介する。本当に力を持った芸術の担い手達が、結果的に、物質的に恵まれない人たちであるという事実を、強く再認識させてくれるコンサートであった。

    菱本幸二: quena siku   橋本 仁: quena siku
    小林智詠: guitarra    Claudia Gosalvez: violin

06/01/21




・・

 

No.006

「ソロ・コンサート」

05/12/04 東京「太田・唐澤邸」
 

現代企画室の太田・唐澤ご夫妻が、ホームコンサートを開いてくださった。まだ畑の残る住宅街に建つ、ごく普通のお宅である。夏にお伺いした時に、台所を舞台に、そして居間を客席に、と提案した。

 

当日は雨、かなり厚い雲が、あたりをいっそう暗くしている。ステージに見立てた台所から、居間に集まって下さった方々に、音楽で語りかけるつもりで出かけた演奏会場の、見事な変身ぶりに、ただただ感服。布と光を使った、素晴らしい演出である。そして、台所は台所のまま、居間は居間のまま。椅子は、横倒しにした本棚である。

 

ホームコンサートは、生活の場がそのまま音楽会場になり得るところが素晴らしい。昨年もいくつかホームコンサートを企画していただいたが、どれもこれも、新鮮な記憶に、今も包まれている。

06/01/21







・・

 

No.005

「Don Girberto Rojas 作品集」

05/11/29 赤坂「november eleventh」
 

ボリビアを代表する作曲家「Gilberto Rojas-ヒルベルト・ローハス」の作品群は、一度まとめて取り上げてみたかった。フォルクローレ・・・アンデス音楽に興味を抱いた人であれば、彼の作品を、必ずどこかで耳にしたことがあるはずだ。

 

ボリビア音楽に、俗に言う「ポピュラー」という冠をかぶせたヒルベルトは、「フォルクローレ」というジャンルの中で、実にたくさんのヒット曲を飛ばしてきた。私たちより一世代上のボリビア人たちが、「これぞ我が心の歌」と感ずるものには、ヒルベルトの作品がかなり多く含まれている。いわゆる「流行歌」もしくは「懐メロ」である。

 

今回は、オリジナルの音源を参考にして、彼のアレンジをかなり忠実に再現してみた。ケーナ・シークに、フルート2本、バイオリン、パーカッションを加えた、ちょっと厚めのアレンジ譜と、歌詞が上手く載せられたメロディーに、いくつか面白い発見をしたのが、大きな収穫である。

    菱本幸二: quena siku   小澤敏也: percucion
    芳賀文恵: flute      船岡 茜: flute
    Claudia Gosalvez: violin

06/01/21



・・

 

No.004

秋の星座シリーズ「金色の羊」

05/11/11-12 八ヶ岳「アメリカンホーム・ブーツ」

今回の「ペンション・ブーツ」コンサートは、例年にくらべて約一ヶ月遅れ。紅葉が遅かったとはいえ、八ヶ岳では、さすがにもう木々の色づきが、かなり深くなっていた。秋の星座シリーズの第3回は、牡羊座をテーマに、「金色の羊」を森に放してみた。



遙か遠くの 森の中に ほのかな光が見える

鬱蒼と生い茂った 木々のたもとから 

闇に向かって 光煙の粒が立ち上る


夜露に映る 月を食べた 金色の羊は

闇の中で ひとり静かに 時を過ごす


新月の夜 アポロンの奏でる竪琴の調べに

羊の身体は 幸せに満たされた


その時 羊は 耳をふるわせた

柔らかな毛先から溢れ出した 金色の光は 

森の隅々まで飛び散って 

やがて 森の闇へと 溶けていった


いまごろ深い雪の中、金色の羊はどうしているのだろう。秋にはそこまで気が巡らなかった。

    小林智詠: guitarra

06/01/21



・・

 

No.003

「PIKAIA祭り」

05/10/9 西荻窪「音や金時」

「PIKAIA-ピカイア」の小澤さん、渡辺さんとは、2000年に青森・函館のライブハウスでご一緒したのが最初であった。今では、ときどき私のユニットにお招きして、一緒に音楽を楽しんでいるが、その時は、こんなに長いお付き合いになるとは、お互い夢にも思わなかった・・・。昨年も、秋の「PIKAIA祭り」に呼んでいただいた。私にとっては三度目の参加である。


「PIKAIA」の音楽仲間や、小澤さんのパンデイロの生徒さん達が一同に交いするこのイベントは、とにかくユニークな出し物が多い。ジャンルに縛られないセッションも、この日のためのアレンジも、熱く、激しく、そして愉快に、爽快に楽しめる。この場でしか体感できない音楽ばかりが、この「PIKAIA祭り」には満ちあふれている。いつもと同じユニットが、いつもと同じレパートリーを奏でても、必ず「PIKAIA祭り」スペシャルバージョンとなってしまうのが面白い。プロもアマも、演奏者も聴衆も、結局みんな音楽仲間なのだ。

今年も秋が待ち遠しい・・・。

 

06/01/21

・・

 

No.002

「木下尊惇 with 松下隆二」

05/9/2-3 福岡「楽屋」「フォレストヒル」11/17-18 倉敷「音楽舘」「喜楽小屋」

クラシック・ギタリスト松下隆二さんとは、もう5年目のお付き合いになる。昨年も福岡と倉敷の、「十二月の肖像」コンサートで、ご一緒させていただいた。

 

松下さんの奏でる音楽は、とても端正である。表面的な派手さや、華美な表現を極力抑えた、内向的な美しい音が、大変魅力的に楽曲を辿る。さまざまな音色の中に、いろいろな質感が潜んでいて、それらが絶妙に選ばれながら、それぞれの持ち場へと飛んでゆく。どんなに早いパッセージであろうとも、決して音を突き放すことがない。

 

一方で、彼の組み立てる音楽は、必ず未来を向いている。楽曲の意志を図り、気持ちを察した上で、程良い緩さを残したまま、それを愛おしむかのように構築する。そしてその表情は、時に繊細に、時に熱く、臨機応変に変わるのだ。

 

「クラシック」という自らの音楽言語をふまえた上で、いろいろなジャンルの音楽に傾倒し、単に「影響される」以上に踏み込んで探求する彼の音楽は、聴くたびに、また共演するたびに、進化を続けている。松下さんの音楽は、いわゆる「クラシック」の枠には収めたくない、しかし最も正統な「クラシック・ギター音楽」であると思う。

06/01/21




・・

 

No.001

「Yae with 木下尊惇」

05/10/8 成田「風楽」10/16 双葉「ステーションプラザ」10/17 保原「泉福寺」
 

昨年の10月には、ボイスパフォーマーのYaeさんの誘いで、3つのライブをご一緒した。NHK「美しき日本〜百の風景」でご縁をいただいて以来、お互いに誘い、誘われ、楽しい記憶もずいぶんと増えてきた。

 

Yaeさんは、空間の雰囲気を作り出すのが、ずば抜けてうまい。詩を伴わない、いくつかの即興的なフレーズの断片で、空気の色を変え、漂う香りを醸しだし、次に始まる音楽に没頭するための姿勢へと、その場を誘ってしまえるのだ。そして非常に幅のある音楽の中、こちらの重ねるギターの音色にも、その時々で、実に多くのオプションが与えられる。無限の音の組み合わせの中で、楽曲はパフォーマンスの素材にしか過ぎず、そこに囚われることはほとんどない。しかし彼女の歌声は、Yaeであることを止めず、また楽曲としての個性を失うこともないのである。

 

もともと私は、歌手との共演が大好きである。神経を研ぎ澄まし、音を探り合い、一期一会の音模様を織り込んでゆくのは、非常にスリリングである。Yaeさんの、半年間の休養の後、今年からはもう少し、共演の場が増えるだろう。

06/01/20

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



・・