No.30
クリスマスローズ
Christmas Rose / 学名
Helleborus キンポウゲ科

華やぎの気分に満ちた名をもつわりには
藪かげや落葉樹の下などにひっそりと咲いている花。
寒く,風通し悪く,日照の少ないところを好むというから,
目立つことの嫌いなわたしみたい!
「雪起こし」という別名があるほどに,春浅く,まだ寒さの残る時期に見られる。
上品である。高雅である。○○さんのように清楚で,
泣いているのか,恥じているのか,なぜか,うつむき加減につつましげに咲く。
花ことばは「慰め」。
見て慰められるよりは,しっかりね,と慰めてあげたくなるような繊弱さ。
白のほか,ピンク,紫,黒なども見られる。
クリスマスの時期でもないのに…,という向きもあろうかと思いますが,
クリスマスのころに咲く種はヘレボレス・ニゲルといい,
これは白い花である。
さて,「ニゲル」とはニグロ,ニガーから連想されるように「黒い」という意味。
花弁は抜けるような純白なのに,なぜ「黒」なのか。
それは,花ではなくて根のことをいうらしい。この根は黒く,毒性があり,
中世にはこれを薬用に,あるいは魔除けに多用していたようだ。
学名のヘレボレスでわかるように,原産地は地中海沿岸で,
ヘレニズム時代からある由緒正しい花。
アテナ女神やアフロディテ,ダナエやアリアドネ,それにたくさんのニンフたち,
プロメテウスやヘラクレス,オデュッセウス,…あのギリシアの神々や英雄たちも
この花を見ていたかなあ。そういえば,
ギリシアのアテネに行ったことのある人は
パルテノン神殿わきの空き地の石くれの陰に,シクラメンとともに
この花がポツリと咲いていたのに気づいた人がいるかも知れませんが…。