[エッセイ]すすき野の四季 | ![]() |
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ヒナゲシ(ポピー)に飾られた道 | |||
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すすき野郵便局の前の通りをもみの木台方面へ、交叉点にでたらさらに虹ヶ丘団地へ通じるバス通りに沿って、いまを盛りにとりどりのポピーが五月の風と戯れています。どなたのこころづかいか、大事にこれを栽培してくれた人びとに感謝、感謝です。ポピー、またはヒナゲシの名で親しまれて愛されているこの花、美しいその色はもちろんのこと、花弁が薄く、痛々しいほどに弱々しく可憐で、風になぶられて花弁をゆすっていると、たまらなく手を添えて助けてあげたくなる、そんなケナゲな花。そう、花ことばを調べてみたら「慰め」「いたわり」「思いやり」とありました。なんだか、地域の福祉にたずさわるわたしたちに縁が深そう…。 |
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一方、この花にはたくさんの別な呼び方、表記の仕方がありますね。それだけいろいろな人のいろいろな思いがこもっているということでしょうか。まず思い浮かぶのは、与謝野晶子の歌、 ああ皐月 仏蘭西の野は火の色す 君も雛罌粟 われも雛罌粟 この「コクリコ」(雛罌粟)がヒナゲシのことですし、ケシを「芥子」と書くこともあります。「芥子粒」「芥子人形」などのように使われ、一般的には細かいことをあらわしているようですね。また、ちょっとロマンチックで悲しさをそそられる「虞美人草」もこのヒナゲシ(ポピー)のこと。中国の古典『三国志』をお読みになったことのある人ならよくご存知の逸話で、楚の項羽は漢の劉邦との最後の決戦に際して、絶世の美女・虞妃をともなって臨みます。劉邦の大軍にすっかり取り囲まれ絶体絶命のピンチ、いよいよ、ということになり「四面」に「楚歌」を聞きながら虞妃は自刃して果てます。その天のものとも思われる美しい屍体のうえに、ポッとなよやかな花が咲いた。人びとはその花を「虞美人草」と読んで貞節を尊んだ、といった話。 夏目漱石にも『虞美人草』という作品がありますが、どうやら特に意味はなく、ひょいと思いついてつけた題名というに近いようです。さて、あなたならこの愛らしい花をどう呼びますか。 |
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(文・写真/菅野) |