YTC.S・S   スゥイートスポット

        テニス教の鹿鳴館




コンテンツ

 

サークルの系譜             3

多彩なる創立時の猛者たち       10

緑薫る那須高原            15

軽井沢のハイレグとアマゾネス軍団    22

アバンチュールは新島で?       25

バトル・オブ・ザ・バーベキュー    30

ちょっとハワイにお嬢さま      38

テニスよりハロウィンパーテイー?   41

SSはテニス界の梁山泊?       51

クリスマスパーテイーは六本木で..   57

アンヌプリのダイヤモンドダスト    65

交流試合には勝たない「SS」?    70

納会は合同コンパでドンチャカ     72

第七試合は山荘のバーベキュー     80

 

S・S通信              95〜149





歴史の交差点
 今昔余話


  里の風
小柏氏800年 の軌跡

小柏氏の系譜と戦国武将

 御荷鉾山の
 つむじ風
神サマ常次郎

 羊太夫の伝説と多胡費の謎

 赤穂義士と
 聖神信仰


新編 古事記
高天原の侵略

 吉野ヶ里遺跡と徐福伝説


八咫烏の
くりごと


 あまのじゃくの
 羅針盤


アクセスカウンター
テニス教の鹿鳴館
 サークルの系譜
 多彩なる創立時の猛者たち       
 

緑薫る那須高原            

 軽井沢のハイレグとアマゾネス軍団   
 アバンチュールは新島で?
 バトル・オブ・ザ・バーベキュー  
  
 ちょっとハワイに…お嬢さま
 テニスよりハロウィンパーテイー?   
 SSはテニス界の梁山泊?
 クリスマスパーテイーは六本木で
 
 

“新島騒ぐ・飲む軍団”の代表幹事・ジャンボは、帰京後もサーさんの家に何度も電話をかけていた。
サーさんがうっかり電話番号を教えてしまったのだ。海水浴場で手帳に住所の交換をしていた。

皆は住所と名前だけを書き電話番号は書かなかった。ただスーさんと他に1人〜2人が電話番号を書いたようだった。サーさんは、ジャンボからの電話に対し、最初の1回だけは出たようだが、その後は逃げ回って?一切出ないようにしていた。

多い時は毎晩のように電話がかかって来る程だったが、いつも留守番にしておいて、何とか逃げきることに成功した。その為、ジャンボはオーさんの所にも電話して来て「いつ電話しても居ない」と愚痴をこぼした。

「仕事が急がしいんじゃない」等と答えて、お茶を濁すより他になかった。オーさんは電話番号を書いた覚えはなかったが、その後、ジャンボが新島の写真を送ってきた折にでも教えたのだろう。

 

忘年会の約束もあったので、その後ジャンボとは何度か連絡を取っていた。忘年会について「騒ぐ軍団」は、12月23日(土)を指定してきた。この日なら全員の都合がつく、ような話であった。

――良く見りゃクリスマスイブじゃん。――クリスマスイブの前夜の土曜日であり、次の日曜日がイブであることを考えると、実質的なクリスマスイブとも言える。
現実として街の雰囲気はそのようになっていた。

六本木の街頭には、クリスマスケーキとジングルベルが溢れかえっている。騒ぐウルサイ軍団は、新乱入者の荒川町屋のユーコを連れて来ていて、一層ウルサクなっていた。

SSのリマッチメンバーは“取って食われる”と、逃げ腰のサーさんを除いて、カトちゃん、オガチを補強として、横浜駅西口に集合した。

風邪気味というキーコも何故か、駅に姿を見せていたのでちょっとびっくりした。六本木の待ち合わせ場所のコージーコーナーでコーヒーを飲み終わり、メンバーは手持ち無沙汰になり1人2人と表の道路へ偵察に出たりしていた。

その時、“軍団”はバラケタ隊列となって悠々と現れた。それぞれ、お洒落にリキを入れていた。ミーコたちはあそこに居ると、ジャンボに指を指されたが、雑踏の中にかき消されて姿は見えない。やがて先着のジャンボたちに合流したミーコは、真赤なミニスカートに毛皮?のような半コートを着て、ナンカみたい?だった。

 

ロアビル向いのナントカ居酒屋へ入り、囲炉裏風の席に座ると、すぐにギャーギャー、ワアーワアーと始まった。いや店に入る前から、あっちだ、こっちの席が良い、電話だ、トイレだ、マミが遅れるといった風にやかましく、ハチャメチャなのである。

こんなグループを相手にしては、注文をとるお姉さんも、もう大変な仕事である。一旦出した注文を変更するヤツ、決まらないヤツ、2人が同時に注文の品を言い出したり

とにもかくにも久しぶりに会った勢いで話も弾み、次第に盛り上がってゆく。初顔ではあったがオガチはこんな席には手馴れている。というより得意の分野に入るかもしれない。

 

すぐに話を面白くし、十八番のエッチエリアに於いて本領を発揮する。軍団の中でこうした話にあっけらかんと応じ、隠しだてしない感じで喋るのはカッコである。明るいカッコの表現は、かなりきわどいものだが嫌味は全くない。

一種のおふざけで終わって、「ハイそれだけ」みたいなものである。やがて遅れていたマミもやって来て、防衛庁前のデイスコへと乱入して行った。この時、ユーズはコンサートに出演していた。

「行ければ後から行く」ということだったので、「いさご屋」かデイスコ「ラ・チェスタ」に居るからと連絡を入れてあった。
しかし急遽、他のデイスコに行くことになったので、オーさんは急いで「ラ・チェスタ」まで迎えに行っ
た。
フロントドアボーイにしつこく聞いたが、そんな人物は来なかったとのことである。皆で入ったデイスコで一番奥の暗いテーブルに席を占めると、スーさんがクリスマスプレゼントをやおら取り出して皆に配った。

得難いキャラクター(優しい)なのだ。その店はテキトーな広さの、テキトーな雰囲気のデイスコだっ
た。入口を入ると左側にカウンターが配されていて、そのカウンターに沿って奥へ進んで行くとテーブルが並んでいて、その左側がダンスフロアーになっている。ダンスフロアーには一段高い円卓状のフロアがあり、照明が散乱・噴射される壁へと連なっている。

 

この壁には円筒状の孔が蜂の巣のように開いていて、そこに様々な色の照明がはめ込んである。かかっているミュージックがうるさくて、ウエイターの声などは全く聞こえない。ウエイターがチケットを持って来て、何やら説明しているのだがサッパリ分らない。こんな所に一日居たら、間違いなく耳が麻痺してしまうだろう。

面倒くさいので「分った分った」と返答しておいた。徐々に分ってきたのだがチケットを持ってカウンターに行き、食べ物と交換してくるシステムのようだ。テーブル席で一頻り盛り上がった後は、思い思いにフロアへと踊りに行く。

 

中でもオザはダンスフロアーに居ることが多かった。照明壁の下の方からは、ミュージックの盛り上がりに合せて、時々スモークが噴射されエキサイティングムードを演出している。
がんがん耳をつんざくような、ミュージックの長い連続でも時たま、ふっと空白になるような一瞬がある。

そんな時、ごったがえす円卓の上でも、じわっと人が少なくなる。その時、踊りの上手い1人か2人か
が、軽やかにソロでのステップワークを演じて見せる。呼吸を計ったように照明係がスポットライトで追いかけ、ダンサーをその輪の中に浮かび上がらせる。

つられて見ている周囲の人から拍手が湧き起こる。周りは暗くスポットライトが当った人だけが見えて、目立っちゃうのダ。一人が円卓を降りると、次にスポットライトの輪の中に浮かび上がったのは、マンボステップ&ゴーゴーで踊るカトちゃんだった。

ちょっと意外な人物が一瞬のヒーローになったのであった。
何と言っても今日はクリスマス・イブである。イブのディスコのムードは一種独特なものを持っている。
暗いフロアー、レーザー光線、スモーク、大音量のミュージック、煙草の煙、酒の勢い。

多勢、入っている客は皆このムードに浸り、解放的になっている。六本木の女王と言われたリョウコが、夜な夜なディスコに出陣し、終電(バス?)で帰宅する日課を取り入れたのも、さもありなんという気がする。

 

スーさんとオガチは殆ど踊らずにテーブルの守備についている。踊りつかれたオーさんはカウンターに行き、フルーツ皿に盛ってあったバナナをバーテンから貰って食べていた。そこへ可愛い女の子の2人連れが来て、「バナナってメニューあるんですか?」等と聞いてきたものだ。

オーさんは気軽にバーテンを呼んで、又バナナを貰って女の子に渡すと美味しそうに食べた。今夜は最後まで居ると言う。一緒に来たオトコ共は、同伴の美人には眼もくれずフロアーで踊っているらしい。

「どうせナンパしているんじゃないっ」と意地悪を言ってやった。そこへオガチがやって来てオーさんの横に座り、女の子たちと束の間の会話を楽しんでいると、電話番号の収集に余念がなかったオザが目ざとくやって来た。

 

真ん中へ割って入るようにカウンターのL字型の、角っこの部分に肘を付き女の子に質問会話?のようなものを始めた。暫くすると今度は焼き餅を焼いたらしく、ジャンボがその場にやって来た。

S・Sのメンバーはかくて、ジャンボに連行されるカンジで自分たちのテーブル席へ戻った。ディスコの空気を堪能した一同は、カラオケスナックへと流れて行った。最初に行った店は満席だった。今日は何処も同じようなものらしい。

空いていそうな店を紹介して貰い、何トカ着席することができたが、学生と見える男女のグループが大騒ぎしていた。そのうち、やおら立ち上がった1人は、もう1人にスラックスを引き摺り下ろされそうになりながら、よれよれのトランクス1枚だけの姿になった。

歌にフリをつけながら、仲間が手渡した割り箸を、たくし上げたトランクスに挟み“尻圧”で割ろうとしている。

2度目か3度目にバキッと折れるとやんやの大喝采である。学生の余興は面白い。オーさんは2〜3年前に山下公園で、踊って騒いでいた学生?の内の1人がパンツ1枚になり、そしてすっぽんぽんになり、海に飛び込んだのをみたことがあった。周りに居た女の子たちは「狸みたいっ」と言っていた。

皆は、いささかくたびれてきて、スーさん、ミーコ等はうつらうつら始めていた。カトちゃんはカッコ良く、「メリージエーン」を歌う。ミーコも眠っていたが、自分の番が来るとサッと起きて歌うのであった。

明日は仕事だと言う忠実屋・ジャンボは、電車がなくなったため何やらぶつぶつ言いながらタクシーで帰って行った。残った9人の酔っ払い共は所在無く、トボトボと深夜の町を歩いて行く。防衛庁前のビジネスホテル・アイビスの1階入口に、行き場のなさそうな若者が何人か屯していた。

 

 其処では、他に数人が座り込んで睡眠を貪りつつあるようだった。
終夜営業なのか、おでん屋や焼き鳥屋、コンビ二酒店も店を開けている。オーさんは、ケーキ屋の店先で売っているクリスマスケーキを買った。

何処かで皆で食べようと思ったが当てはない。駅近くにちょっとした広さの喫茶店を見つけて入った。流石に騒ぐ軍団も疲れてきたようだ。ぼそぼそと喋っている内に、長かった夜の終わりがやってきた。

この店ではケーキを食べる許可はおりなかった。駅頭で別れを惜しむ、ミーコとオガチの2人だけが活き活きとしているように見えた。

12月24日、日曜日は雨模様であった。熱海からテニスをするべく、出て来てしまったユーミは横浜に着くとオーさんに電話を入れた。オーさんは、雨だったのでテニスは中止と決め込んでまだ寝ていた。

 ユーミは次いでカトちゃんに電話を入れ、オザ、サーさんをも呼び、4人でドライブがてらベイブリッジを見に行った。小雨に煙るベイブリッジ兼?クリスマスのベイブリッジは若いカップルで埋め尽くされている。

 オザは「クリスマスなのに、何で俺たちは4人で来なけりゃならないんだ」と、ぼやいた。大黒パーキングエリアでケーキを食べている間中、そのぼやきは続いたというコトでした。
S・Sのテニキチ軍団はこの年、正月を目前にした12月30日にも、船員病院のコートを借りてテニスに興じ89年の打ち納めとした。

 

でも31日と正月の2日間を休んだだけで、3日にはもう有志が集まり打ち初めを致しました。この新年打ち始めに来たメンバーは、ユーミ・キーコ・リョウコ・サーさん・オーさんであった。



 アンヌプリのダイヤモンドダスト

スキーはニセコでリッチに

 

「空気を運ぶよりは安くても人を運ぶ」と、航空会社が言って、北海道スキーツアーを格安で売り出していた。この「でっかい道スキー」が近年人気になってきて、料金もじわりじわりと様子を見ながら上がり始めていた。

ここ1〜2年が安く行けるラストチャンス、第4コーナー?と思われた。8月から計画して、ユーミの骨折りで、9月のチケット発売と同時に獲得したANA機に乗ったのは、1月14日である。

747機はおよそ500人ほども乗れる大型機なので、高空を飛び大きく揺れることはまずないと言える。晴れて見通しのよい時に機上から遥か遠くの、地上の景色を眺める気分は何ともいえない。

山々の膨らみが連なっている様、川や道路、田、家々などの全体像が掴め、立体模型を見ているようだ。時折眼下に薄い雲が流れ、海面と陸地の境界線がはっきり分る。海上の白い泡が、帯状の緩い流れとなっているのがはっきりと分り、黒潮の流れと認識できる。

 

地上や海上にあっては、海流があることなどは、まず分らないが高空からは社会科の地図を見ているようにそれと分る。オーさんは飛行機が福島あたりに差しかかった時、窓から地上を見るため後部の方の席へ行った。

747機の場合、後部トイレの前にスチュワーデスの簡易シートがあり、その前の窓際に外に向かって膨らんだ部分がある。ここが地上ウオッチィングの特等席なのだ。スチュワーデスは殆ど席には居ないし、後ろの席には誰も居ないから何の迷惑にもならないし、気を使うこともない。

その内側に出っ張ったカウンターのような部分に肘をつき、ちょっと身を乗り出すようにすると、窓枠一杯にパノラマが広がってきて、次々と変化する地上の景色を堪能できる。下が海であれば白い航跡を引いて航行する船なども見えて、20分位見ていても飽きることはない。陸地の上を飛んでいる時には、地上に綺麗なハート型の湖を見ることが出来た。

 ハートの形を左右から少し圧迫し、縦長になっているものの、岸辺がギザギザになっている所はなく、湖面の周囲の線は綺麗なハートの線を描いていた。幾ら考えても湖の名前に思い当たるものはなかった。

少し気になったので後で確認してみると、それはどうやら渡良瀬遊水池のようだ。飛行機が津軽海峡に差し掛かる頃、再び特等席へ(シートはない)海を見に行った。遥か後方に大きな田沢湖が見えていた。

やがて海が見え雲の切れ間から、下北半島が見えてきた。地図で見るあの独特の形、斧の形そのままの海岸線がくっきり見える。地図の形ってホントなんだなあと、子供のような感慨に耽った。

鹿児島の大隅半島を見た時も、同じような感慨に浸ったことを思い出した。高度はおよそ6千メートルか7千メートル位だろう。俯瞰図とはよく言ったものである。

 

何の抵抗もなく空中に浮かんで立っている自分、下にある雲と陸地を見ている状態は何とも妙なものである。機体の壁に囲まれて守られてはいるけれども、この床の下は紛れもなく空中なのだ。鳥になったような、異次元に来ているような不思議な感覚である。

やがて津軽海峡を渡り、函館に差しかかる頃になると、席に戻りシートベルトを着用するようアナウンスが流れ、着陸の態勢に入る。空港のロビーを出るとツアーの係員が待っていた。ANAのパックなので、添乗員などは居なかったが、結構親切なものになっているらしかった。

ただこの現地の係の女性は、S・Sの一行を待機しているバスの所ではなく、間違えて他の場所へ連れて行ってしまった。天気は良いがヒンヤリとした冷気が、体の表面から芯の中へと染み込んでくるような寒さだった。

そんな冷気の中を一行はスキー板を担いだまま、ぶつぶつ言いながら歩いた。カトちゃんが時折、立ち止まり男8人、女2人の一行の表情、動作などをビデオに撮っている。フージなどはカメラを向けられるたび、何かしらのパフオーマンスを演じている。

この一見添乗員風係員嬢は、一緒にバスに乗り込みホテルまで同行してくれた。バスに同乗したのだからして、やっぱり添乗員?。車内でも点呼をしたり、チケット・クーポンの説明をした後は、もうすることは何もないというムードが蔓延し、ドラマ「北の国から」のパートUだか、Vだかのビデオを見せてくれるのだった。

オーさんはテレ放送を見ていなかったので、このビデオ上映を見ながら車窓の外に広がる雪景色を眺め
た。隣に居たユーミはやがて眠ってしまった。冬の北海道には色はなく、「白と黒」のモノトーンの世界というカンジだ。

 

積雪はそう多くはなく、バス道路の雪は溶けて舗装路が黒々と見える。その上をスノータイヤなのか、バスがジーッと独特の音を立てて走って行く。雪国に独特の走行音である。道路の多くは平地であり、家々の屋根や田圃と思しき所に40センチ程の冠雪がある。

田舎に見られるような小さな蛇行した川があり、橋を渡る時にすかさず川面を見やると、流れの瀬まで、積もった雪が迫っていて白くなっている為か、水流の部分は黒っぽく眼に映る。途中右手の雑木林の陰に支笏湖が拡がっているのが見えた。

湖面は全面結氷することはないという。宿のすぐ横から、スキー場へ連絡する昔ながらのシングルのリフトに、カタカタと揺られながら登って行く。いよいよ北海道での初滑りである。リフトを降りた所から、緩いスロープが60〜70メートルあり、そこを滑り降りると平坦地があり次のリフト乗り場がある。

 

この目の前の短いスロープが滑降の第一歩となる。1人1人順番に間を取って滑り降りる。雪面の感じが掴めず、スキーの勘も戻ってこない第一歩は、初心者に戻ったようなぎこちなさがある。

下では先に滑り降りたカトちゃんがビデオを回している。サーさんはスロープは難なく滑ったものの、平坦な雪面になった所で転げた。カメラのすぐ横に来てからこけたので、ビデオには写らなかったかもしれ
ない。

平らな所なので中々立ち上がれない。笑いこけていたオーさんが、ひっくり返ったてんとう虫みたいなその姿を、ビデオに撮るようにカトちゃんに言った。スキーの授業で足を折ってしまった為、それ以来殆どスキーを履いていないというオザがスロープを降りて来る。腰が引けて前かがみになったボーゲンである。

“恐い”といった感じが染み出ているが、こけることもなく降りて来た。続いてリフトを2本程登った所から一人ずつ滑降してビデオで撮影した。カトちゃんとフージはバッジ一級の腕前であり、スーさん、バタ、ユズもウェーデルンのレベルである。

 

 オザは暫く滑ると宿舎へと引き上げて行った。ニセコの雪質はパウダーと呼ばれ、さらさらしている。湿り気が少なくスキー板の裏で踏みしめるたびに、キシッキシッと鳴り、スーッと滑らかに軽やかに滑れる。

 まるで片栗粉の上を滑っているようでもあり、パウダースノーとは的を得た言い方であると思えた。滑り降りて来る度に“もう一本”と、つい滑り過ぎてしまうようだ。夕食後もスーさんとオザはホテルに残ったが、他のメンバーはナイターのゲレンデへと出て行った。オーさんは2〜3本滑っているうちに、他のメンバーとはぐれてしまった。

 

氷点下19度というアナウンスが流れていた。夜ともなれば気温は更に低くなっている。リフトに乗っている時は、耳が冷たくなって痛い程である。ナイターの時間も終わる頃、これが最後と思い、最上部にあるペアリフトに乗った。リフトの下にあるゲレンデは幅が狭く、ほぼストレートのコースでかなりの傾斜がありスピードが出そうだ。

上級コースであり時間も遅い為、殆ど人影は見えない。山の高度もかなり上がってきたので、風は強くなり雪は横からも下からも吹き付け、吹雪の様相を呈してきた。幸いこのリフトはフード付きなので、山の上方から顔面に吹き付ける風雪はある程度カバーできる。

それでも時々、突風が襲ってきてU字形のゲレンデ上を、雪がサーッと走る。ゲレンデの両側・土手の部分、リフトの右側の(せつ)()の所は雪煙を舞い上げ、あたかもドライアイスの煙が頂上から、一斉に降りて来るようだ。積雪は3メートル、風が木々を揺らし枝の雪を空中に巻上げる。

リフトはまだ終点に着かず、ふと不安に襲われる。左手に流れて行く狭いゲレンデコースには、既にスキーヤーの姿はなく、たまに上から1人が滑り降りて来るかな、という状況である。

そして暫く前に滑り降りて行ったスキーヤーのあとは、もう誰も見ていない。皆が下山を終りつつあっ
た。「雪山」「遭難」という文字が脳裏をよぎる。乗っているリフトの後ろを振り返って見た。

下の方に延々と続いている、見える限りのリフトにはもう誰も乗って居なかった。前方のリフトには誰か乗っていないか、吹雪の中をためつすがめつ眼を凝らして見たが、雪煙に阻まれて良くは見えない。

観察したところでは、上の方にも下の方にも誰も居ないようだった。長く孤独なリフト登山は、まだ延々と続いていた。もうこの辺で降りたいと思うがリフトは止まらない。出来れば何処かでリフトから飛び降りたいのだが、幾ら探してもそんな場所は見つからない。

 

上の方に終点が今見えるか、今見えるかと眼を凝らして見るが、リフトの終点はまだ見えない。さっき迄滑っていた下の方では、風もこんなに強くなく、こんもりと雪を被った木々が照明に照らされて、幻想的だったのに別の世界に迷い込んでしまったようだ。

このゲレンデは今日来たばかりで、まだコースの全容を把握していなかった。U字形の狭い滑降コースは、強風で走る雪がさざ波のような形を作り、砂丘の風紋のようでもあった。

 

 アンヌプリのダイヤモンドダスト

 

 15日は東山のゲレンデを滑ることにした。前の日は「ひらふ」を滑ったからである。両ゲレンデは山の頂上直下で繋がっているものの、リフト券が共通になっていない。

視界が悪く頂上から下、二番目のゲレンデの樹氷の中を滑った。そして高速リフトの終点に居た時に、一瞬の晴れ間が訪れた。

スーさん、ユーズ、オーさんなどは、すかさず頂上直下まで登る最高高度のリフトに乗った。リフトの終点で降りる場所は、既に急斜面になっていて一人が立ち止まるスペースがやっとある状況だった。

 

あとは圧雪されていないかのような、新雪の深雪が60センチほどの厚みを作っている。山の頂上はすぐそこで、本当に手の届きそうな所に円錐形を作って、青空の中に伸びている。新雪にすっぽり包まれたアンヌプリ山は、ふんわりとした柔らかい感じを漂わせながら、朝の陽光に輝いていた。

後からリフトを降りて来る人の為に、新雪の中に数歩移動し自分の居場所を作ったとき、空気中にキラキラ光るものが拡がった。空気中の水分が低音のために凍りついた、ダイヤモンドダストであった。

 

キラキラと輝くその様は確かにダイヤモンドに見える。頭上からの太陽光線にキラキラ輝き、足元までゆっくりと無数に舞い降りてゆく。初めて見るその光景は、幻想的で実に感動的なものであった。

氷点下の北の高山でしか見られない現象である。我々の正面には更に素晴らしい、大パノラマが広がっていた。はるか下にある平野部を挟んで、正面に雪化粧を施した富士山が対座しているのである。

 

 左右両側に長く裾を引き、円錐形の上に平らな頂上を載せている。ホントの名前は羊蹄山であるが、何処を見ても本当に富士山にそっくりである。富士山を二回りくらい小さくすれば、そのまま羊蹄山になると思えた。

リフトを降りた地点から、平坦なゲレンデまでは僅かに、二本のシュプールが刻まれているだけである。今日はまだ二人しかこの斜面を滑走していないようだ。ここのところ、4〜5日は降雪が続いていると聞いていた。

 

雪崩も2〜3回あり、スキー場の近くでも起こっていた。この寸時の晴天は偶然の産物であり、ラッキーな出来事であったという他ない。オーさんは二度ほどこけながら、新雪の斜面を降りて行った。

3日め更衣室で着替え、帰り仕度をしているとキーヤの飛行機のチケットが落ちているのが眼に入った。空港へ向かうバスの中で、荷物を点検して紛失に気がついたキーヤは青くなっていた。

 

可笑しくなったオーさんは、暫く間を置いてからチケットを渡してやった。オーさんと隣り合わせに座っていたユーミはすぐ眠ってしまった。オーさんの肩に頭が乗っていた。それと気がついたユーミは「済みません」と言って軽く頭を下げた。

そして「人と上手く付き合うのにはどうしたらいいんですか?」と尋ねた。オーさんは「女の子と?男と?」と聞いてみたが、まともに答えると偉そうな、説教的な、クサイ、長い話になりそうに感じて、沈黙のなかに逃げ込んだ。


 交流試合には勝たない「S・S」?
 納会は合同コンパでドンチャカ     
 第七試合は山荘のバーベキュー
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