水俣病は終わっていない


1 当事者
@ 原  告  水俣病未認定患者
          第1陣から第20陣まで,合計2500名
   原告代理人 40名(熊本・福岡・大阪・東京の弁護士)
A 被  告  チッソ株式会社,国,熊本県

2 請求
 各原告から,チッソに対して金850万円,国及び熊本県に対して金212万5000円(不真正連帯)及び平成16年10月16日から完済まで年5分の遅延損害金を請求。
 ※ 第20陣の377名については,請求額は330万円。

3 事案の要点
@ 原告らは,平成16年10月15日の最高裁判決を基本に据え,その後の行政の対応の不適切ないし不十分さから,水俣病問題の最終全面解決の道を司法に求め,水俣病患者として,慰謝料等の請求をするもの。
A 水俣病の病像
 現在の行政認定基準(昭和52年判断条件)は,複数の症状の組合せを認定の条件とする厳しいものである。裁判所は,昭和60年の水俣病第2次福岡高裁判決以降平成16年の水俣病関西最高裁判決に至るまで,この基準に対し,狭すぎると厳しく批判してきた。にもかかわらず,行政は,現在まで上記基準を維持している。水俣病の多彩な症状,病型の多彩さ等に鑑みると,病像を限定的に捉えるべきではない。従来からの司法認定基準である疫学条件プラス四肢末梢性感覚障害,あるいは2点識別覚の異常があれば水俣病と認定すべきであり,この司法の基準によれば原告らはいずれも高度の蓋然性をもって水俣病と認定される患者である。
B チッソの責任(民法709条に基づく不法行為責任)
 チッソ水俣工場がアセトアルデヒド廃水を放流し,これを放置した行為を原因として原告らは水俣病に罹患した。
C 国と熊本県の責任(国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任)
 国は,昭和34年12月までに,水質二法に基づく規制権限を行使してチッソの廃水を規制すべき作為義務があり,熊本県は,同月までに,熊本県漁業調整規則に基づく規制権限を行使してチッソの廃水を規制すべき作為義務があったにもかかわらず,いずれも昭和35年1月以降においても規制権限を行使しなかったことは国家賠償法1条1項の適用上違法である。国と県は,当該不作為により原告らを水俣病に羅患させ,その健康被害を拡大させた。
D 請求する損害の内容
 チッソに対しては,慰謝料として800万円,弁護士費用として50万円。
 国と県に対しては,それぞれその4分の1(上記最高裁判決から)。
両請求は不真正連帯の関係。