緊急声明
環境大臣が設置した「水俣病問題に係る懇談会」は,本日,提言を取りまとめました。
この提言は,公健法上の行政認定に関する基準である昭和52年判断条件につき,司法がこれまで指摘してきたとおり,補償協定による手厚い補償を受ける患者を判断する基準というべきであって水俣病の全被害者を救済するものではないと指摘しています。つまりは,行政認定基準に合致していなくても水俣病患者が存在することを認めています。そして,同提言は,未認定の水俣病患者の救済が必要であることを明らかにし,未認定の水俣病患者の救済については,国が前面に立つべきこと,将来的に補償・救済の門戸を閉じるべきでないと述べています。すなわち,環境省が現在実施している新保健手帳による対策は,水俣病患者としての救済策ではなく,補償内容的にも不十分であるとの認識が示されたものと言えます。
環境省は,これまで,行政認定基準に合致するものだけが水俣病でありそれ以外の者は水俣病患者ではないとしてきました。今回の懇談会の提言は,環境省のこれまでの姿勢を厳しく批判するものといえるのであり,環境省に対し水俣病対策の変更を迫るものです。
環境省は,懇談会の同提言を尊重し,国の責任で未認定の水俣病患者の救済を早期にはかるべきです。
未認定の水俣病患者の救済をはかるに当たっては,平成16年10月15日最高裁判所水俣病関西訴訟判決,確定判決である昭和60年8月16日福岡高等裁判所水俣病第2次訴訟判決をふまえた補償であるべきです。すなわち,チッソ,国及び熊本県の賠償責任に基づく救済であること,司法が認めた判断基準に基づく補償であること,司法が認めた補償額であることが必要です。平成7年の政府解決策による解決は,最高裁判所判決以前のものであり,法的責任を前提としない不十分なものであって,到底正当な補償とはいえません。
私たちは,紛争を終局的に解決するため,憲法上公正な紛争解決機関として位置づけられている司法の場において,司法基準に基づく全面解決がなされるべきであると考えます。
私たちは,あくまで司法の場において,司法救済制度による解決をめざしていく決意です。
国民の皆様のご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。
2006年9月1日
水俣病不知火患者会
ノーモア・ミナマタ国賠等請求訴訟原告団
ノーモア・ミナマタ国賠等請求訴訟弁護団