ノーモア・ミナマタ訴訟(熊本)での
勝利和解成立にあたって1 本日,ノーモア・ミナマタ国賠等請求訴訟の熊本地裁第10回和解期日において,2492人の全原告につき和解が成立した。
さる21日の原告団総会での決定に基づき,昨日24日には東京地裁でも和解が成立し,28日には大阪地裁でも和解成立の見込みである。これにより,2005年10月の第1陣提訴以来5年半に及ぶ私たちの訴訟は,決着を見ることとなる。
2 私たちのたたかいは,「すべての水俣病被害者の救済」を掲げ,司法制度を活用して大量迅速な被害者救済を目指すものであった。私たちは,被害者を掘り起こし,原告を拡大しながら,地域や年代の制限の突破にも挑戦してきた。
この度の和解では,熊本・近畿・東京の原告2993名のうち,一時金等の対象者が2773名(92.6%),医療費(被害者手帳)のみの対象者が22名(0.7%),あわせて93.3%の原告が救済対象者となる。一部に救済対象から漏れた方が出たことは残念でならない。
しかし,@四肢末梢性のみならず全身性の表在感覚障害などを救済対象として救済要件を拡大したこと,A救済要件の判定機関として被害者側・加害者側の医師を同数含む「第三者委員会」方式を実現し,行政の判定権独占を打ち破ったこと,B医師団による共通診断書を公的診断と対等の判断資料とさせたこと,その結果として,C3000人に迫る大原告団の9割を超える救済率での大量救済を5年半で勝ち取ったこと,D天草をはじめ従来「対象地域外」とされてきた地域でも,対象地域の拡大や立証の努力によって相当の救済率を実現したこと,E水俣病のたたかいの歴史上初めて昭和44年以降の出生者からも救済対象者を出したこと,は高く評価できると考える。
これらは,水俣病史上初の裁判上の和解によってこそ勝ち取れた成果であり,私たちのたたかいが,訴訟外の被害者のたたかいと広く結びついて,特措法上の救済制度を新設させ,その救済水準をも引き上げたこと,また,未救済被害者を励まし4万人以上が立ち上がるに至ったことも誇りに思うものである。
3 私たちのたたかいは,水俣病被害者の救済を大きく前進させたが,被害地域全住民の健康調査が未了のまま,不知火海沿岸でも全国でも多数の未救済被害者が残されており,水俣病特措法等による救済が図られるべきである。また,水俣病の病像は未だ解明し尽くされておらず,加齢等による症状の悪化の研究・施策の充実が不可欠である。そのような問題があるもとで,加害企業チッソのみが分社化で責任逃れをすることは認められず,引き続き監視を続ける必要がある。
私たちは,この和解による決着を前進のための大きな一歩と捉え,今後も「すべての水俣病被害者救済」のためにたたかい続けるものである。
以上
2011年3月25日
ノーモア・ミナマタ国家賠償等請求訴訟原告団 同 弁護団