トリマラン船型の検討



はじめに

商談中の22m上海観光船の主要寸法を検討する。小型客船のデータが無いので、類似
船としてヨーロッパおよびアメリカの50FT以上のプレジャーボートデータを流用し
72FTクラスの観光船の主要寸法を検討する。                 
1. 全長、全幅(L/B)

トリマラン船型はモノハル船型より抵抗が少なくなるのは確実であるがメインハルと
デミハルとの浮力割合は横安定の良否により判断すべきである。満載排水量でGM値は
1.5mを確保する。                             

メインハルとデミハルの形状(MaxSurf使用) 各喫水線におけるそれぞれのハルの浮力と浮力比率は次のとおりである。     
 
  ケース1とケース2 ケース1はデミハルとメインハルのキール部分の高さをそれぞれ0.2m、0.4m差を つけた結果である。                             
ケース1、ケース2の評価 ●計画喫水0.8mでは浮力が若干不足ぎみで満載喫水は0.9m程度になりそうである。 ●メインハルの幅は拡大できないとするとできるだけ軽量化が必要である。     ●完成重量33.5tは重過ぎる可能性がある。同型船のデータを収集する必要がある。  ● ケース1は計画喫水付近でGMが不足気味なのでケース2を改良した方が良い。      ケース3                                   ケース3はデミハルの浮力を増すためにベースラインを0.3WLとする。      
    ケース3の評価 ●重荷状態(0.9WL)でまだGMが不足しているので改良が必要。            ケース4                                   ケース4は0.8mWLでデミハルの浮力を増すためにデミハル幅を10cm拡大する。
    ケース4の評価 ●ほとんど効果が無いことが分かった。            ケース5                                   ケース5はこれ以上デミハルの浮力を増すと抵抗が増えるので対策として全幅を5mか ら5.5mに拡大して検討してみる。                      
    ケース5の評価 ●効果は大きく、重荷状態でもGMは1.5mをクリアできる。               結論と今後の検討 トリマラン船型はメインハルとデミハルの高さ方向の差異や横方向の位置により横安 定が大きく変化し、現段階では観光船の全幅を5mから5.5mに拡大すると横安定も満 足することが判った。今後、水槽試験により船体抵抗と必要馬力が計画より少なけれ ば軽量化が可能となり全幅の拡大幅も5mに戻せる可能性は残されている。この結果を 元に一般配置を至急再検討し仕様を早く決定することが重要である。