ハウスボートを提案!!


 はじめに
マリンレジャーの中でプレジャーボートの楽しみはマリンスポーツの面がどうしても
強調されてしまうがボートで生活することを追求してみたら楽しいのではないだろう
か。                                    
個人的には週の大半を生活できるハウスボートを持ちたいと考えている。     
天気が良ければ少し沖合いに出る程度で良いと考えればハウスボートが最適だ。  
現在のハウスボートの外観は魅力的ではないが船上生活をしてみたいとか別荘が水面
を移動できるとの発想でならスタイルには特にこだわらなくても良いのかもしれな 
い。                                   
キャビンクルーザーも居住性を重視しているが船としての性格が強くハウスボートと
は少し性格は異なるが同じジャンルと考えられる。               
ハウスボートで何を楽しむか別荘が移動する考えでマリンレジャーとしてどんな遊び
があるだろうか。                              
ハウスボートに乗り込めばまずは忙しい実生活からの解放され、クルージングに出か
けなくても一応満足できるかもしれない。                  
ボート遊びの良さは乗ってしまえば周囲をあまり気にしないですむ開放感だろう。 
気の合った仲間だけで集まり時間を忘れて語り合うのも良い。           
これが実社会では意外とむずかしいのである。                 
昼間はデッキで昼寝でも良いし室内で読書や音楽やビデオ鑑賞でも良い。    
PWCで遊びたければハウスボートに搭載すれば良い。              
しかし別荘ならば同等の設備は当然必要であるがはたしてこれは可能であろうか。   
新ハウスボートを提案                         
10年前に開発したハウスボート次に紹介するハウスボートは10年前ヤンマー事業開
発室の依頼で私の設計事務所アルファクラフトで開発監修したハウスボートである。
実用化を前提とせずショーモデルとして製作したがボートとしてよりも動く別荘を意
識して開発した。                              
台湾で製作したこの2隻のカタマランハウスボートは全長11m、全幅は5mあり幅広な
室内は前部がラウンジ、中央はギャレー、後部はマージャン卓、後部両側にはドレッ
シングルームやトイレシャワールームが完備していた。             
しかも電気焼却式トイレは汚物を外へ排出することもなく環境へも配慮していた。 
もちろんエアコンも完備していた。                      
停泊状態では問題はないのだが実際にボートとして運用するとなるといろいろ問題は
あった。                                  
電気焼却式トイレの為に装備した12KWの発電機出力は何とも贅沢であったし、巨大
な前部ガラスは外観から判るように外からの手入れは事実上不可能であった。   
離接岸や係船するにも前部でのロープワークはかなり難しかった。        
離接岸時の操船性の悪さはもちろんこのような外観であるから耐航性は期待できない
など実用性には問題はあったがスタイリングと室内配置は現在の感性でも新鮮さを感
じる。                                   

●新ハウスボートのコンセプト そこで魅力的な外観イメージを引継ぎ更に発展させた新ハウスボートを検討してみ た。                                     ◎外観および船型            魅力的な丸みを帯びた外観は踏襲したが船型はかなり変更している。        厳密に言えば今回はトリマラン船型である。双胴の船体はハウス部分より若干外側に あり乗員がメンテナンスや係船作業で移動できる通路を設けている。        ハウス部分の前部下部船体は波の衝撃をV型船型で緩衝し耐航性を改善できるように 考えてみた。                                 ◎主機および補機            現在、大型キャビンクルーザーはディーゼル船内機を主機として、別に発電機を装備 している。                                  これはキャビンクルーザーは居住性を重視するので電力使用量が大きく別に発電機が 必要であるからだ。                              今後、乗用車のエンジンは時代の流れとしてハイブリット化や燃料電池が採用される だろう。                                   自動車のエンジンブロックを利用しているマリンエンジンも影響を受けるのは必至だ が電力消費量の大きなプレジャーボート特にキャビンクルーザーやハウスボートには ハイブリット化や燃料電池の採用は多大のメリットをもたらすはずだ。       エンジンコントロールも容易になるし騒音や振動も格段に改善され居住性も向上する ことになるはずだ。                              ◎推進装置およびサイドスラスター    高速で効率の良いウォータージェットは低速のハウスボートでは不適当な選択に思え るかもしれないが喫水が浅い水面でも航行が可能となるし、水中に回転部分がないの で安全であるし、大直径のプロペラと違い直径が小さく高回転のウォータージェット は振動が少ないなど居住性の面で有利である。操縦性が悪いなどのデメリットはサイ ドスラスターと組み合わせれば充分解決できるはずだ。              ◎速力性能                実際にキャビンクルーザーで遊んでみると静穏な海面で航行できる機会は意外と少  なく滑走状態で航行中の室内は乗員が身体を保持するのに大変である。       それよりもハウスボートでは非滑走領域で使用すると割り切れば10?15ノットの速 力でも十分である。                              ◎居住性                中型のハウスボートに別荘の居住性のすべてを満たすことは不可能であるが50FTク ラスのハウスボートともなればかなりの居住性の充実が可能なはずだ。       大事な点は家族が乗って楽しめることだ。                    1?2家族が簡単なパーティーが可能で、できれば4?5人が1泊できるとバースも確保 できたら良い。                                特に女性が乗るとなると冷暖房設備、除湿装置、シャワー室、ギャレー等への生活空 間の充実は是非必要である。                          例えばシャワーを使用すると50リッター/人では済まない場合もあるしヘアドライ ヤーも1kw以上の電力を消費するのでバッテリーではとても賄えないので主機とは別 の電力源と水量の確保が重要である。                      舶用部品は耐久性には優れているが感性の部分ではまだまだ無骨であるので、居住性 を高めるには感性の高い陸上建築物のインテリア部品や自動車用部品を多く採用した い。                                     室内であれば最近の陸上部品は品質も高く結構使えるようである。         ◎電力と水の確保            プレジャーボートの電力問題はハイブリッドエンジンや燃料電池が実用化されると一 気に解決できるはずだ。                            しかしそれまでは発電機と陸電装置は不可欠であるが最近の舶用発電機は静粛でコン パクト化されており搭載スペースは是非確保すべきだ。              清水タンク容量を大きくすれば良いがそれでもそのスペースを確保するには限界があ る。                                     海水を真水に変える造水機もあるがより低価格になれば是非採用したい。      清水がふんだんに使えるならば今までのプレジャーボートでは考えられなかったジャ グジーバスを考えてみたいものだ。                       ◎環境問題に配慮            船体材料としてFRPはプレジャーボートの発展に随分寄与したが今後は再処理の方法 が実用化されないと船体構造にFRPを使用しにくくなる可能性がある。       今後はアルミ構造の採用やFRPを使用する場合も廃船(解体)しやすい構造やリサイ クルが可能な艤装品の開発が必要である。                    また日本のプレジャーボートの汚水はブラックウォーター、グレーウォーターをきち んと区別して排出し環境に配慮すべきでありこれに関連して必要な陸上設備(マリー ナ)も早く整備すべきだ。                           それまでは取り合えず汚物に関しては電気消却トイレや生ゴミはバクテリアで分解で きる設備を採用してはどうだろうか。                      ゴミは持ち帰るのが原則であるがボート内で再処理することも考えてはどうか。   ◎航海設備、航法装置          最近は航法装置が発達しクルージングは随分楽になったが離接岸はいまだに技量が必 要である。                                  これだけ電子制御が発達した時代である。どこか自動着岸装置を開発するメーカーは ないのだろうか。                               おわりに 乗り物好きの私は20代、30代はスピードにあこがれハングオンさせながらモーター サイクルを乗り回し、1日に1000kmを乗用車で移動してもタフだったがさすがに最 近はマリンレジャーにおいて時間を楽しむ精神状況が多少は判るようになってしまっ た。                                     私は長年ボートデザイナーとして実現はしなかったがさまざまなストックデザインを 企画検討して来たが今回のハウスボートは現役をリタイヤしたら是非所有してみたい と考えて検討中である。                            検討中の項目はとても個人的には解決できない問題もあるが現在の技術水準でも工夫 すれば結構実現できる部分も多い。                       このコンセプトに共感し実現するボートビルダ?がどこかいないものだろうか。