速力性能の検討
速力性能の検討 速力性能の検討は、アルファクラフトが独自に開発したから速力性能予測法を利用し 検討した。基本計画の初期段階では機関の選定や速力性能を推定することが重要であ る。船型を決め抵抗を知るには模型を製作し水槽試験を行う場合が多いが、小型船で はコストや時間的にも簡易な方法で性能を予測することが求められる。類似船や同型 船のデータが豊富であればこれらの性能データをチャートにし推測するのであるがV型 船型であればサビツキー法によりかなり高い精度で抵抗を計算できるので計算プログ ラムを使用し性能を推定した。 1. サビツキー法 サビツキー理論の詳細は述べないが要点は次の通りである。サビツキーは船底がV型滑 走体の基本的特性について述べており、滑走体の揚力、抵抗、接水面積、圧力中心、 速度、トリム角、上半角、荷重等の関数として記述する実験式について述べている。 サビツキー法による抵抗計算では艇のある状態での速度Vに対して走行トリムを複数設 定し、各々の釣合方程式を計算、内挿法で釣合方程式が0になる走行トリムを求める。 すなわち、艇の重量重心等を入力して走行トリムを計算し、その走行トリムにおける 抵抗を計算している。更にこの理論を用いてV型滑走体の必要馬力、走行姿勢等を計算 していく簡単な手法についても述べている。 ●サビツキー理論による抵抗計算 サビツキー法で抵抗を計算について概略手順は次の通りである。 1)速度Vを設定する。 2)速度Vに対しトリム角τを複数設定し各々にA式を計算し内挿法でA式=0となる τ0を求める。3)求めたτ0に対して抵抗、圧力中心等を求める。 注)(ただしサビツキーのチャートはフィートポンドであるから換算が必要であ る。) ここでV型滑走体の定義を次の通りである。 インプットデータは チャイン幅:b デッドライズ:β 排水量:Δ プロペラ軸位置:fおよびε 重心位置:KGおよびLCG である。 釣り合い式(A式)を解く手順のフローを下記に示す。 2. 速力性能の推定 本船の速力推定は、より現実的に推定する方法として造波抵抗と摩擦抵抗はこのサビ ツキ?理論を応用し、高速艇では無視できない空気抵抗や付加物抵抗を加えた抵抗を 推定し必要馬力や走行姿勢を計算するプログラムを用いておこなった。 (1) 抵抗計算 高速艇、特にプレジャーボートはディープVと呼ばれるV船型が主流でありサビツキー 理論を応用するのに適している。 サビツキー法では全抵抗を造波抵抗と摩擦抵抗から なると想定しているが、推定する実艇の抵抗を実際に少しでも近づける為に付加物抵 抗や空気抵抗を追加した修正式を使用した。 修正式 Dt=Dw + Df + Da + Dad 全抵抗 :Dt(kg) 造波抵抗 :Dw(kg) 摩擦抵抗 :Df(kg) 空気抵抗 :Da(kg) 付加物抵抗 :Dad(kg) 速 力 :V(kt) 全 長 :L (m) 軽荷重量 :W(kg) 重心位置 :LCG(m) トランサム後端からの距離 :VCG(m) キール下端からの距離 滑走面幅 :b(m)トランサム後端で計測 デッドライズ角 :β(deg)トランサム後端で計測 BL-推力軸角 :ε(deg) 推力軸-重心 :f (m) 水中付加物前面投影面積:() 水中付加物抵抗係数:0.12(形状により異なる) 船体前面投影面積:() 船体空気抵抗係数:0.50(形状により異なる) (2) 速力計算結果 図は、本船の重荷状態の主要なデータを入力して得られた最高速力の計算例である。 本船の抵抗成分は滑走領域に移行する過程で造波抵抗が最大となるハンプが存在し、 その後は次第に摩擦抵抗の割合が増し、さらに高速になると水中付加物の抵抗が無視 できないほど増大する。 本船の走行トリムは走行開始後、速力が増加すると大きなハンプがあり滑走領域に入 ると走行トリムは極端に小さくなり更に速力が増加すると少しずつトリムが小さくな ることを示している。 これらの抵抗推定ソフトを発展させて同時に4種類までの状態をシュミレーションする 速力性能検討表を使えば数種類の状態で性能を検討することができ便利である。 例はAX54に4種類のエンジンを搭載し検討した結果を示す。