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北欧文学の訳者10選・10
訳者
大塚勇三(おおつか・ゆうぞう、1921~)
一言でいうと
リンドグレーン『長靴下のピッピ』はじめ、多くの北欧児童文学を翻訳。語学に優れ、「スーホの白い馬」など中国文学の翻訳も。
解説
 岩波の「リンドグレーン作品集」の前半は、大塚勇三の訳です。小学生のころ、このシリーズを読んで、北欧文学者になろうと思いました。後書きに、「スウェーデン語を独学し、ドイツ語訳と英語訳を参照しながら訳した」と書いてあって、それではわたしも大学ではドイツ語をやろうと思って、独文科に行きました。この人がいなければ、今のわたしはなかった、そんな翻訳をたくさんされた方です。
 また、北欧文学ではありませんが、「スーホの白い馬」は、幼稚園のころに一度読んで、死んだ馬の皮や骨を楽器にするというのがすごく怖くて二度と読まないと決心したのですが、小学校二年生の時、国語の教科書に掲載されていたので仕方なく読んだのでした。しかし、年を取って(8歳ですが)読んでみると、ああ、自分にとって、死者を悼むというのは火葬してお墓参りをすることだけれど、スーホにとっては、楽器にして弾くことが白い馬を一番愛する方法だったんだ、愛の形は一つではないのだ、と(はっきりと言語化してではありませんでしたが)感じました。今から振り返ればそれは、最初の「異文化体験」だったし、嫌いだった本でも時間をおいて読むと好きなこともある、という最初の体験でもありました。
 大塚は、1921年、旧満州の丹東(現在の安東)生まれ。昭和の初めに内地に戻って武蔵高校から東京帝大に進学するものの、卒業後に兵隊にとられます。病気になって送られた病院に「俳句の上手い衛生兵」がいると聞いて会いに行くのですが、なんとこの衛生兵が瀬田貞二だったとか。この時は特に何もなく別れてしまうのですが、戦後、嘱託社員として働き始めた平凡社で瀬田貞二と再会します(でも、同じフロアにいるのに、二年間気づかなかったらしい)。
 瀬田の企画「北極星文庫」の刊行に関わり、みすず書房からウーリー『ウル』の共訳を出したのがきっかけで、大塚は、翻訳の仕事を広く手掛けるようになります。一九五〇年代後半から六〇年代にかけては、翻訳児童文学の需要が非常に高い時期で、大塚は平凡社を辞めて翻訳業に専念、これまでに手掛けた翻訳は七か国語に昇ります。
 大塚の経歴は、いろいろ調べても分からなかったのですが、2011年に福音館の雑誌『母の友』でインタビューが掲載されています。若いころに歌舞伎や文楽、落語が好きだった話、「細工が見えたらダメです。翻訳にも修行も訓練もあるけれど、苦労が見えちゃあ芸じゃないから」という翻訳哲学、どれも面白かったです。写真も初めて見たのですが、一目見て好きになるようなすてきな方。バックナンバーはもうありませんが、古本で買えるので、お勧めです。
主な著書・訳書
訳書は膨大なので、北欧文学を中心に紹介します。
・『リンドグレーン作品集』1~7&別巻1~7、岩波書店、1964~1982
『長靴下のピッピ』、『やかまし村の子どもたち』、『やねの上のカールソン』シリーズ、『はるかな国の兄弟』など。岩波少年文庫にも収録。
・アルフ・プリョイセン『スプーンおばさん』シリーズ、学習研究社、1966~1979
・ルーネル・ヨンソン『小さなバイキング』、学習研究社、1967
・「絵本作家の書斎④ 大塚勇三」(雑誌『母の友』2011年1月号、福音館書店、36~43ページ)
リンク
福音館書店のブログ「母の友でゆっくり子育て」内「今月の”立ち読み”絵本作家の書斎 大塚勇三さん