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単語
svenska
発音
スヴェンスカ
意味
スウェーデン語
文法
svenskは、「スウェーデンの」「スウェーデン的な」という意味の形容詞。-skは、英語の-sh、ドイツ語の-schに相当します。
解説
 スウェーデン語のことを、スウェーデン語でsvenskaといいます。スウェーデン語は、他の北欧語とどのような関係にあるのでしょうか?そもそも「北欧」とは、どのように定義されるのでしょう?

 北欧学者が「北欧」と呼ぶのは、一般に、「北欧理事会」という組織に理事を選出するスウェーデン、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、フィンランドの5か国と、グリーンランド(デンマーク自治領)、フェロー諸島(デンマーク自治領)、オーランド諸島(フィンランド自治領)の3地域です。これらの政治的区分に加え、文化的区分としての「北欧」は、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアのうち、サーミ(サーメとも。以前は「ラップ人」と呼ばれていましたが、現在は蔑称とされています)の居住地域である「ラップランド」を含みます。


▲北欧地図


▲9つの国・地域の旗

 それぞれの国・地域の公用語は以下の通りです。
  • スウェーデン:スウェーデン語
  • デンマーク:デンマーク語
  • グリーンランド(デンマーク自治領):グリーンランド語。デンマーク語は公用語ではないが全島で通じる。
  • フェロー諸島:フェロー語、デンマーク語
  • ノルウェー:ノルウェー語
  • アイスランド:アイスランド語
  • フィンランド:フィンランド語、スウェーデン語
  • ラップランド:サーミ諸語を伝統的に母語とする人が多いが、公的な扱いは国やサーミ諸語の中の言語によってさまざま


    ▲北欧語系統図

     スウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語、アイスランド語、フェロー語は「インド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派北ゲルマン諸語」に属し、お互いによく似ています。特に、スウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語はお互いがお互いの言語で通じ合えるくらいです。アイスランド語は古い文法がかなり残っており、他の言語との差異が大きいとされます。西ゲルマン諸語との関係は、何人かのドイツ人曰く、「勉強していなくても半分くらいわかる程度」に似ているようです。
     フィンランド語とサーミ語はウラル語族。多くのヨーロッパ言語が「屈折語」であるのに対し、ウラル語族は日本語と同じ「膠着語」です。グリーンランド語はエスキモー=アウレト語族で、カナダやアラスカのイヌイットと同系統の言語です。
     なお、「言語が同じ系統である」ことは、「血統」「民族」の同一性は意味しません。

    言語だけでなく、これらの国・地域には、多様な産業、歴史、生活様式、文化があり、EUとの距離をはじめとする外交のあり方も様々です。


    ▲9つの国・地域の人口・面積・独立年もしくは内政自治開始年・EUとの関係・言語、独立国の主要産業

     この表からは国・地域全体のことしかわかりませんが、同じ国・地域の中にも多様性があります。これらの多様性に加え、国によっては、近年は移民が増加し、多言語との接触も頻繁に行われています。たとえば、2015年現在、スウェーデンには「移民の背景を持つ住民」が15%以上暮らしています。スウェーデン全体の人口は神奈川県と同じくらい、そのうち15%は川崎市の人口に相当します。移民たちが話す、英語や各母語の影響を受けたスウェーデン語も「スウェーデン語」です。スウェーデンには、ラップランドのサーメや、タッタレと呼ばれるロマ系の少数民族など、元来はスウェーデン語を母語としない人々もいます。こうした人々に対してはスウェーデン語を強制する「同化政策」が行われた歴史もあり、その結果、現在その人たちはスウェーデン語を話します。また、かつてスウェーデンの一部であったフィンランドでは、現在も5.5%程度スウェーデン語を母語とする人たち(「フィンランド・スウェーデン人」もしくは「スウェーデン語系フィンランド人」)が暮らし、フィンランド語とスウェーデン語の二か国語が公用語となっています。フィンランドのスウェーデン語には、スウェーデンのスウェーデン語にはない独特の言い回しもあります。

     わたしは主に19世紀末から20世紀前半にかけてのスウェーデン文学を専門とし、直接知っているスウェーデン人はほぼ全員がアカデミックな階層にいます。したがって、今回ご紹介するのは、北欧全体ではなく、また、スウェーデン語の中でも限られた地域・時代・階層・文脈における言葉となります。
  • 参考文献関連業績
    ・中丸禎子「ヨナス・ハッセン・ケミーリ『片目は赤』」『今、世界で読まれている105冊』テン・ブックス、2013
    ・小澤実・中丸禎子・高橋美野梨編著『アイスランド・グリーンランド・北極を知るための65章』明石書店、2016