調理実演:2004年11月28日


二代目海王丸の船首像/2003年10月25日、富山県新湊市:海王丸パークにて。

製作は依然、船体左舷の外板モールドの修正中です。


船の船首像(フィギュアヘッド)は航海の安全を祈念する象徴として
紀元前はるか以前から船に取り付ける慣習がありました。
大きさやデザインは時代や船に求められた役割によって様々でしたが、
19世紀に入ると次第に小さく簡素なものになり
現在では練習帆船の船首にその名残を留めるのみになっています。

初代海王丸/日本丸の船首像はシンプルな唐草模様でしたが、
1984年に竣工した二代目の日本丸には女性を形取った像が掲げられ
初代海王丸も現役最後の4年間は船首に同様の像を掲げて活動しました。
そして1989年の引退の際に二代目に移設した経緯があります。

以前にも書いた記憶がありますが、
私自身はこの船首像のデザインがあまり好きではなく、
特に初代に付けられていた時代は違和感がぬぐえなかった印象があり、
その関係もあって二代目は数年前まで関心を持つ船ではありませんでした。

しかし、先月の富山港での座礁事故の際に
この船首像は船からもぎ取られて行方不明になってしまいました。
一つ間違えば横転転覆で多数の犠牲者が出てもおかしくなかった事故で
船首像は荒れ狂う海神に身を捧げることで全乗員の命を救い、
紀元前から受け継がれてきた「役目」を最後に立派に果たしたといいます。

その話を聞いて、私はこの像が少し好きになりました。


←2004年11月7日 ↑調理実演の最新メニューへ →2004年12月20日