項 目 名 |
内 容 |
ジャンル |
近代艦船・旧日本海軍軽巡洋艦 |
名 称 |
大井 |
メーカー |
ピットロード |
スケール |
1/700 |
マーキング |
艦名、日章旗、軍艦旗 |
モールド |
★★★★ |
ピットロードスタンダード。不可もなく可もなし。 |
スタイル |
評価不能 |
キットの内容を判断する根拠は私にはありません(;_;) |
難 易 度 |
★★★ |
単なる「組立モデル」として作るなら。 |
おすすめ度 |
★★★ |
スクラッチに挫折した人なら星5つ。他は? |
コメント |
いま、これ以外に出すキットは本当に無いのですか? |
|
キットが再現しようとした時期は、まったくわかりません。
部品割は以下の通り。
・船体(A-1)
・艦底板(A-2)
・デカール
・B部品(B1-69、B49欠番)
|
総部品数 112個 |
|
船体は一体成形で舷外電路のモールドは無く、舷窓は陽炎型駆逐艦と同じくややだるいモールドが付いています。煙突頂部の部品付近に1ヶ所切断跡があり、ここに(2月発売予定の)重雷装艦北上用の部品が入ってくるものと思います。魚雷発射管はシールドなしの形でモールドされています。また、同型艦の北上は後に回天搭載母艦に改造されましたが、部品割を見る限りこのキットの部品替えで出てくる可能性はまずないと思います。以上、キットに関しては他に書くことがありません。
実は大井と北上は重雷装艦時代の写真がただの1枚も残っていないらしく、充分な資料も公表されていないためにキットの内容がどの程度正しくてどの程度誤っているのか模型愛好者のレベルでは判断ができないのが現状です。魚雷発射管に駆逐艦のような密閉されたシールドは無かったらしいという事は学研の「特型駆逐艦」などで提示されたものですが、その正否すら正直わかりません(キットの説明書ではシールドの有無は両論併記、シールド有の説に従いたい場合はパーツセットより使用する旨指示されています)。ベルリンの壁が崩壊する以前のソ連の軍艦を作るようなもので、むしろ、写真も資料も残っている回天搭載艦時代の北上の方が(同型艦はありませんが)考証的なリスクは少なかったのではないかと思います。それに、個人的にはこの大井の発売は高雄級重巡の開発延期という、ピットロードにとって重大な選択ミスを犯したように思えてならないのです。
年の終わりに、もう少し。
今年の艦船模型の最大の話題は田宮のWL新作戦艦大和発売に尽きる感がありますが、それ以外でも重要な動きが数多く見られた1年だったように思います。
WLは田宮の大和型に続いて青島が長門型戦艦のリメイクを発表した事で、対フジミから製品開発の方針転換がより明確になったと感じます。そして、青島がむらさめ級護衛艦を同時にぶつけたり、長谷川が(これはドラゴン製ですが)インビンシブルをぶつけたり祥鳳級空母(?)を開発中と、その方向は対ピットロードをかなり意識したものだろうと見ています。「艦船模型は数が少ないからメーカー同士でバッティングしないで欲しい」という意見も通信の場で良く聞きますが、私は必ずしもそれが良い方向に向かうとは考えていません。競争のない世界が独占と傲慢とそして衰退を招くのは世の常ですし、艦船模型が他のジャンルに比べ製品の絶対数が少ない事を差し引いても、80年代がそうであったように、メーカー同士の競争がある程度なければ新しいものは何も生まれてこないのではないかと思うのです。正式発表はまだありませんが、青島が高雄級重巡や空母蒼龍のリメイクを計画という「噂」も、インジェクションやレジンキットの可能性という脅威がなければ生まれてこない事だと考えます。WLシリーズ開始から28年間も放置されてきた問題に「いま」取り組もうというのですから。
WL陣営が対フジミから対ピットロードに方針を転換しつつある現状にもかかわらず、当のピットロードの商品開発には相変わらず明確なコンセプトが見えません。特に重雷装艦大井の発売を優先させたために高雄級重巡の開発が1年近く遅れるという噂が事実なら、信じられないの一言に尽きます。青島が自社製品のリメイクに取りかかる可能性を考えれば、そして過去の例から見て新作なら青島もピットロードも価格差ほど内容の差は無い現状を考えたら、何をさて置いても高雄級の開発を進めて青島より先に市場に投入する時期ではなかったのかと考えます。
仮に価格が青島の倍だったとしても、旧作に対して決定的なアドバンテージを持つ製品であれば買う側の印象は当然強くなりますし、その後青島がリメイク版を安い値段で出してきてもピットロードよりも印象は弱くなります。しかし、むらさめ級護衛艦のように発売時期が同時なら買う側は価格と内容を比べて考えるでしょうし、もし青島のリメイクが先になるようなら、ピットロードの製品は仮に高品質なものであったとしても価格がネックになってくるように思うのです。そして(これは結果論になりますが)当初の予定通り1998年末に発売されていれば光人社の「重巡高雄図面集」との相乗効果でかなりの売上が見込めたのではないかと思うのです。
ピットロードがWL3社を脅かす存在であり続けるのか、それとも単なる「補完勢力」に留まるのかということは、2000年以降の艦船模型の動向を占う上で非常に重要な要素の一つになってくると考えます。そのためにも、ピットロードにはもっと明確な方針と長期的な視野で市場開拓と製品開発に当たって欲しいものです。
|
1998/12/28 記 |