前口上が長くなりました。まずは評価表から。
|
項 目 名 |
内 容 |
ジャンル |
近代艦船・旧日本海軍戦艦 |
名 称 |
大和(武蔵) |
メーカー |
田宮 |
スケール |
1/700 |
マーキング |
艦名・夜間歩行帯・艦載機の日の丸、ほか(旗は紙製) |
モールド |
★★★★ |
甲板の滑り止めの表現に疑問あり。他は良好。 |
スタイル |
★★★★★ |
特に問題となる所はないようです。 |
難 易 度 |
(現時点では評価不能) |
おすすめ度 |
★★★★★ |
これを買わずしていったい何を… |
コメント |
内容の割に安過ぎる。2隻共作りたいものです(^_^v)。 |
|
キットの状態は大和が1945年4月の最終時、武蔵は1942年8月の竣工時となっています。部品割は以下の通り。
・船体
・艦底板
・バラスト
・デカール
・旗
・ポリキャップ(砲塔・測距儀旋回用)
・Bパーツ
錨甲板/主砲塔/高角砲座/マスト前部/デリック/艦橋防空指揮所/
15m測距儀 /航空機作業甲板端部+カタパルト支柱/ほか
・Cパーツ(2枚)
副砲/主砲砲身/探照灯/シールド付高角砲/3連装機銃(シールド有無)
/シールド無3連装機銃座/副錨/副砲砲座/機銃射撃指揮装置/ほか
・Wパーツ(2枚、WL大型艦用ディテールアップパーツに同じ)
その中から以下の部品を使用するよう指示されている。
22号電探/シールド無高角砲/60cm信号灯/菊花紋章/主錨/
カタパルト/ 零式水上観測機/零式三座水上偵察機/
9mカッター(台座付)/内火艇
|
戦艦大和部品一式。
Aパーツの右側がカットされている事に注意。
|
|
キットはさすがに最新の資料を基にしたというだけあって、旧作で問題とされた錨甲板の幅や1番主砲前の甲板のレイアウトは修正されていますし、大和/武蔵の相違点である艦橋背面の張り出しや階段は別部品になっています。また大変複雑な曲線で成り立っている主砲塔や、改装の際に組み替えられたマスト上部の構造の違いやマスト基部の形、艦橋背面の信号甲板の形、艦尾周辺の形状や甲板のモールドなど、これまでのキットでは資料や金型技術の不足で再現されていなかった部分も全てクリアしています。現時点における大和型戦艦の組立キットの決定版と言って間違いないと思います。
個人的に嬉しかったのは、シールド付3連装機銃の形がほぼ資料の通りに成形されている事でした。実はWL全てのキットも、ピットロードの武装パーツも、この部品に関しては満足な形のものは一つも無かったので、これは有り難いことでした。また、組立説明書とは別にカラーの塗装図と裏に日英併記の実艦解説が書かれた紙が一枚入っていて、メーカーの力の入れようがわかります(翔鶴型空母とはえらい違いだ
^^;)。
ただ、問題点が無い訳ではなく、滑り止め甲板のモールドが英国の軍艦に見られる逆ハの字型になっているのは、気になる人には問題かもしれません。 ※注1
|
\ / \ / \ / \ \ \ \
\ / \ / \ / / / /
\ / \ / \ / \ \ \ \
\ / \ / \ / / / /
\ / \ / \ / \ \ \ \
キットのモールド 実艦のモールド(推定)
|
|
またカタパルトはムクのまま、クレーンはアームが水平状態でモールドされていますがトラスはムクとなっています。まあ、これは気になる人ならエッチングパーツや真鍮線のハンダ付けで作り直すでしょうが。また艦尾の艦名は武蔵の竣工時も大和の最終時も戦時中のため付いていなかったはずです。それと、部品割で示したように大和と武蔵でそれぞれ中央構造物の形が別々になっているため、新造時を作る場合は武蔵が、最終時を作る場合は大和をそれぞれベースとする必要がありそうです(旧作は大和でどちらにも作り分
けができた)。
ざっと見た限り他に問題点は見当たらないようです。※注2 恐らく誰が作っても最新の戦艦大和/武蔵が組み上がると思います。余る部品には他に転用可能なものも多く、これで2400円なら絶対にお買い得です。2隻共に作って飾りたい所です(^_^)。
|
船体形状の比較
上から田宮1/700WL旧作、日模1/700、田宮1/700WL新作。 |
|
長い文章ですが、今回の発売に関して、もう少し。
まず、空母「信濃」の発売の可能性について。
27年前は信濃に関する情報はソ連の軍艦並み、つまり大和型戦艦を改造した航空母艦という以外にほとんど何もわかっていないに等しいものでした。ですからWL信濃のキットは想像に近い内容に留まっています。現在も多くの部分が謎とされていますが、写真や当時の関係者の証言などで外形や武装に関してはかなり判明してきましたし、少なくとも戦艦大和の船体に格納庫を乗せて飛行甲板をかぶせても空母信濃にはならない、という事もわかりつつあります。
最新の資料を基に信濃を作ろうとするなら、船体を完全に別設計する必要が出てきます。これがリメイクでなければ、田宮の1/350がそうであったように無理してまで出すこともないと思うのですが、WLの中で信濃だけが内容的にとり残されてしまいますし、このキットがある限り旧作大和の船体の金型を維持し続けなければなりません。それで、私自身は空母信濃もリメイクの対象に入っているだろうと見ていますが、いくら田宮でも信濃用に船体を再設計するとは思えないので、船体を共通にして上部構造のみを正確にする程度に留めるのではないかと考えています※注3
(この段落は全て個人的な憶測です。確証は皆無です)。
次に、今回の新作のアナウンスで一番驚いたのは「価格」でした。これまでの旧フジミ製品のリメイクでは倍前後の価格が付けられていたので、もし大和型戦艦をリメイクするとすれば4000円を切る事はないだろうと考えていたのですが、それが2400円。モールド的にも考証面でも問題の多かった翔鶴級空母よりも更に300円安い事になります。安いことは非常に有り難いことですが、いくらデフレ傾向で物価が下降気味とかミニ四駆で儲かっている?といった理由を考えても、少し引っかかるものがあります。
これも個人的な憶測に過ぎないのですが、ひょっとしたらこの価格にはピットロードの「ハイモールド高価格」に対するWL陣営の牽制の意味があるのでは、という気がするのです。誰もがみんな知っている日本海軍最大の戦艦が2000円台の前半なら、それより小さい艦艇のインジェクションキットを3000円も4000円も出して誰が買うのか、という事です。また、田宮が大和型戦艦のリメイクを行った事で自社製品のリメイクという「タブー」は無くなったのだから、他のメーカーからも同様のリメイクの可能性は充分に考えられます。
ピットロードは98年度のラインナップで愛宕型重巡の発売をアナウンスしていますが、もしそれより先、もしくは同時にアオシマが、むらさめ級護衛艦と同程度の内容で1500円前後の価格で発売するような事態にでもなれば、艦船模型ファンにとっては非常に難しい選択になると思います。また、陽炎型駆逐艦や長門型戦艦など、ピットロードの「優れてはいるけれど、高い」キットに対抗して「少しモールドは落ちるけど、外形は正確で、半額以下」でアオシマがキットを連発したら、ピットロードの「モールド最高、価格も最高」という路線にも修正を余儀なくされる可能性が出てくるかもしれません。その意味でも他の2社、特にアオシマの動向に注目したい所です。
|
1998/05/30 記 |