持統天皇
            新古今集

春すぎて夏来にけらし白妙の
         衣ほすてふ天の香具山

春も過ぎて、もう夏が来てしまったらしい。采女が夏衣をさらして干す天の香具山にも、白い衣があのように干してあるよ。

大弐三位
        後拾遺集

ありま山ゐなの笹原風吹けば
       いでそよ人を忘れやはする

有馬山からの風が猪名の笹原へふきおろすと、そよそよと笹が揺れなびきますが、どうも心許ないのはあなたの方で、わたしはあなたをどうして忘れることができましょうか。