前大僧正行尊
             金葉集

もろともに哀れと思へ山ざくら
         花よりほかにしる人もなし

わたしがそなたをなつかしむように、そなたもわたしをなつかしいと思ってくれ、山桜よ。今のわたしには花よ、そなたよりほかに友もいないのだ。

前中納言匡房
          後拾遺集

高砂の尾上のさくらさきにけり
     とやまのかすみたゝずもあらなむ

あの高い峰のさくらが咲いたことだよ。人里近い山の霞よ、どうぞたちこめないでおくれ。