| |||||
『喜劇 団体列車』['67] | |||||
監督 瀬川昌治 | |||||
7時間18分もの『サタンタンゴ』['94]を観た翌日は、短めの喜劇映画がいいと思って、高知ロケのある作品として録画していた本作を観てみたら、松竹の『男はつらいよ』に二年先立つ東映作品でキャラクター造形がほとんど車寅次郎と変わらぬ山川彦一を渥美清が演じていて吃驚した。 人の好さも、独り合点の独り相撲ぶりも、訳知り顔の説教好きも含め、仕事こそテキ屋ではなく国鉄職員だけれども、余りの似通い方に唖然とした。舟橋和郎脚本の本作があって誕生した車寅次郎のような気がして仕方がなかった。おまけに彦一の母親をミヤコ蝶々が演じ、彦一が敬意を払う元国鉄職員を演じているのが笠智衆だったりするから、尚のことだ。 協力が国鉄四国支社となっている愛媛を舞台にした作品ながら、観光地紹介は、高知が最も充実していて、はりまや橋、桂浜の坂本龍馬像、龍河洞、土佐犬、五台山からの眺望、鳴子踊りとなっていたのは、当時、♪南国土佐を後にして♪が大ヒットしていたからなのだろう。愛媛は、観光資源的には松山城や宇和島城こそ映し出されたものの、奥道後が少し登場しただけだったように思う。それでも、奥道後が金閣寺やフラミンゴで人寄せをしていた時代性が興味深かった。香川などまるで無視されていて、徳島も阿波踊りの一本押しだったから、高知の特別扱いがえらく目立つように感じた。 聞くところによると、瀬川昌治は蓮實重彦がずっと評価している監督なのだそうだ。山根貞男、山田宏一、金井美恵子あたりも皆好きらしいとのこと。僕の観賞記録には『トルコ行進曲 夢の城』['84]と『次郎長社長よさこい道中』['61]、『喜劇 よさこい旅行』['69]しか残っていないが、僕自身にはまだ瀬川監督に対して確たるどころか漠たる作家イメージも抱けてない状態だから、蓮實重彦らが彼のどういうところを評価しているのか興味深く感じられた。 | |||||
by ヤマ '24.10.20. BS松竹東急よる8銀座シネマ録画 | |||||
ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―
|