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『劇場版 アナウンサーたちの戦争』 | |||||
演出 一木正恵 | |||||
テレビドラマ版がどれだけの分量だったのか知らないけれども、ダイジェスト版のような構成と編集のように感じられたことが残念だった。だが、単に実話を基にしたと最初にクレジットされるばかりか、実名モデルの当時の写真やプロフィールが劇中で示されて感心した。もはや亡くなっている人ばかりだとしても、なかなかの思い切りの良さだ。 そのうえで造形された戦時の日本放送協会のアナウンサーたちの思いの強さが感慨深く、いまのテレビ報道に携わっている人々のイメージとの落差の大きさに項垂れた。やっていることややらされていることが、八十年を経てほぼ同じような状況になっているだけに、尚さら暗澹たる気持ちが湧いてくる。少なくとも当時の彼らは、ラジオ放送に使命感を抱き、言葉を大事にしているように感じた。 メディアが国家の片棒どころか、お先棒を担ぐようになると、どんどん国がオカシクなっていくことは、日露戦争時にも先の大戦時にも、日本が散々経験していることであると検証されていると思われるのに、今また酷い状況になってきている気がする。折しも日本原水爆被害者団体協議会がノーベル賞を受賞したことが伝わってきたが、日本人がノーベル賞受賞などというと挙って大騒ぎの報道を一斉に始めるテレビ局が揃って驚くほど冷淡な報道をしていることに、彼らの行っている、原爆被害への国家補償要求や対米忖度の政府が批准しようとしない核兵器禁止条約への参加要求といった活動が影響しているような気がしてならない。 深酒三昧の熱血アナウンサー和田信賢を演じた森田剛は、三十年近く前の大河ドラマ『毛利元就』で目を留めた覚えがあるけれども、その後、あまり観る機会がなかったが、台詞回しになかなか味があるように感じた。 作品的には、数ある愚劣な戦時トピックのなかでも二大亡国作戦だったと僕が感じている、学徒出陣と特攻隊に焦点を絞って取り上げているところが大事だと思った。アカデミズムを軽んじ、若者に犠牲を強いる社会が再び作り上げられていることに呼応して焦点を当てている気概が感じられた。 すると、インタビューで森田剛が「劇場版にはドラマでは放送されなかったシーンもあり、より濃くなった。」と話している記事が地元紙に掲載されていた。なかなかしっかりした意見を述べていて感心した。 | |||||
by ヤマ '24.10.13. あたご劇場 | |||||
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