『許されざる者』(The Unforgiven )['59]
監督 ジョン・ヒューストン

 これがオードリー唯一の西部劇との『許されざる者』か。つくづく彼女には西部劇が似合わないと思った。加えて役どころは、先住民娘と来ている。誰の発案だったのだろう。こういうのをお門違い、見当違いという気がしてならなかった。しかも先ごろ王になろうとした男['75]を観たばかりのヒューストン作品だ。

 いくら草ぶき屋根だとしても、住家の屋上で牛が草を食んでいるなどというシュールな場面がのっけから登場するヘンな映画で、ガンで始まりガンで終わる作品だけれども、ガンと言っても銃ではなく雁であったわけだが、そのことが、隊列を組んで飛ぶ姿を見ながら空を飛べるだけで、人間と変わりがないとレイチェル(オードリー・ヘプバーン)が言っていたことと繫がり、最後で腑に落ちてくることもない、素っ頓狂なエンディングだった気がする。

 いかにも話の運びの乱暴な荒業師の印象があるヒューストン作品とはいえ、誰の誰に対する誰による「許されざる」なのかも、まるで腑に落ちてこない奇譚だった。西部劇でグランドピアノの野外演奏場面が現われ、モーツアルトの名が出てくるとは意表を突かれたが、オードリーに先住民娘役をあてがうだけのことはあるとも思った。

 ヒューストン作品は、他には『マルタの鷹』['41]黄金['48]アスファルト・ジャングル['50]『アフリカの女王』['51]荒馬と女['61]天地創造['66]『ロイ・ビーン』['72]『勝利への脱出』['80]『女と男の名誉』['80]と観ているが、概ね奇譚ばかりだったような印象がある。

 旧友ケルシー(ジョセフ・ワイズマン)の逆恨みを買って、その謀略により殺されたと思しきウィリアム・ザカリー、この地で殺されるとの墓標の因縁が、レイチェルが兄と慕っていたベン・ザカリー(バート・ランカスター)と死屍累々の数多の犠牲のうえに結ばれることで解決するとは到底思えないが、とりあえずここで終えておこうといったラストに呆れた。お話はともかく、マリリン・モンローを撮った二作品では、女優の魅力を引き出していたように思うだけに残念だった。
by ヤマ

'24. 7.10. BSプレミアムシアター録画



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