『荒野の七人』(The Magnificent Seven)['60]
『大脱走』(The Great Escape)['63]
監督 ジョン・スタージェス

 一年前に続編を続けて観た際には再見を逸していた第一作の『荒野の七人』が、映友たちとの合評会の課題作となったことから、久しぶりに観ることができた。タイトルの「The Magnificent Seven」が映し出される前にクレジットされるのは、クリスを演じたユル・ブリンナーの次が無法者集団の首領カルヴェラを演じたイーライ・ウォラックで、その次がクリスの片腕ヴィンを演じたスティーヴ・マックィーンとなる三人だった。主宰者によればこのポスターなんか、アメリカではIntroducingだったホルスト・ブッフホルツが出てきてて、マックイーンは居らんもんね。とのことだ。日本版でそうなっていたとは驚いた。確かに顔だけで比べたら普通にブッフホルツのほうが二枚目だとは思う。マックィーンにはまだ然程の人気はなかったということなら、日本での人気を決定づけたのは、やはり『大脱走』だったということだろうか。なかなか貴重なポスター資料だと感心した。

 そして、アイルランド人とメキシコ人の混血だというオライリーことベルナルド(チャールズ・ブロンソン)が子どもたちに諭す“真の勇者”とは、しっかりと責任を負う者のことだという言葉を、現今の政治家や経済人に聴かせたいものだと改めて思った。

 もっと軽快にテンポよく運ぶ物語だったような印象があったのだが、それは専らエルマー・バーンスタインによる名高いテーマ曲が植え込んでいたもののようだ。また、物語の運び以上に役者が醸し出し造形しているキャラクターがものをいっている作品だと再確認した。続編の評価が実際以上に低くなっているように感じられるのもそれ故で、やはりキャスティングの冴えた映画だったように思う。


 三年後になる『大脱走』のほうのタイトルクレジット前のキャスト三人は、スティーヴ・マックィーン【アメリカ陸軍航空隊大尉“独房王”バージル・ヒルツ】に、ジェームズ・ガーナー【イギリス空軍大尉“調達屋”ヘンドリー】、リチャード・アッテンボロー【イギリス空軍少佐ロジャー・“ビッグX”・バートレット】だった。スティーヴ・マックィーンが堂々たるトップに躍り出ている代表作だ。

 三時間近い長尺だけれども何度観ても面白い。“トンネル王”ダニー(チャールズ・ブロンソン)の閉所恐怖症ネタは、いつ観ても妙に釈然としないところがあるが、実際に埋もれてしまったことが及ぼした影響に多大なるものがあったということなのだろう。敵軍捕虜であってもあくまでも将校として、一定の敬意を払って遇していたドイツ軍大佐ルーゲル所長(ハンネス・メッセマー)の配置が、今の映画にはないクラシックスタイルとして好もしい。

 また、面の割れている“ビッグX”のために身を挺していたエリック少佐(デヴィッド・マッカラム)や、“偽造屋”コリン(ドナルド・プレザンス)に義侠心を見せていた“調達屋”のヘンドリー大尉が印象深かった。本作もまた、『荒野の七人』同様にエルマー・バーンスタインによる名高いテーマ曲が忘れがたい映画だ。


 男ばかりの三人しか集えなかった合評会では、両作ともに名品であることに異論はなく、どちらをより好むかを確認したところ、二人が『大脱走』で、主宰者は甲乙つけ難く直近に観た作品のほうが好く思えそうな気がするとの絶妙の回答だった。彼が持参した何度目かの劇場公開時パンフレットの『大脱走』のほうに、五大スターと記されていたことが目を惹き、どの五人なのか確認したら、スティーヴ・マックィーン、ジェームズ・ガーナー、チャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーン、デヴィッド・マッカラムとなっている画像を探し出して、見せてくれた。確かに5大スターが叩きつける超巨篇!となっている。オープニングクレジットのトップ三人のうちのアッテンボローが消えて、米国版BRDだと、パッケージの表に記載もされていないデヴィッド・マッカラムが記されている。『荒野の七人』で、クールな賞金稼ぎのリーを演じていたロバート・ヴォーンが主演のテレビ・シリーズ『0011ナポレオン・ソロ』でイリヤ・クリヤキンを演じて人気を博していたからだろう。

 メンバーそれぞれに両作でのお気に入りキャラクターを挙げてもらったら、ブロンソン好きの主宰者は『荒野の七人』ではブロンソンの演じたオライリーだが、『大脱走』ではコバーンの演じた自転車で悠悠と逃げていたセジウィックで、もう一方は、両作ともマックィーンの演じた人物だった。僕は『荒野の七人』では主宰者と同じくオライリーだが、『大脱走』では、ガーナーの演じたヘンドリーが気に入っている。合評会を主宰する映友が、大いに語ろう、男たちの映画と言っていた両作が、“誇り高き男たちの心意気”を描いていた、いかにも'60年代ハリウッドのエンターテインメント巨篇であることを三人で大いに懐かしんだ。




推薦テクスト:「やっぱり映画がえいがねぇ!」より
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by ヤマ

'24. 1.10,14. BSプレミアム録画



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