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『ディア・エヴァン・ハンセン』(Dear Evan Hansen) | |||||
監督 スティーヴン・チョボスキー
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チラシに記された惹句「思いやりでついた嘘。そして、たどりついた本当。」で言えば、孤独な高校生エヴァン・ハンセン(ベン・プラット)は、“思いやり”で嘘をついたわけでも、“本当”にたどりついたわけでもないような気がした。「思いやりというよりは流されて」であり、「“本当”に辿り着いたのは、エヴァンではなく、観客だった」というような物語だった気がする。 セラピー治療や服薬を要するようになったのは、本来のパーソナリティを正当に認めてもらえないことから生じているのではないかという気がしてならなかったエヴァンが、自分の家にはない“理想の家族”を見出したマーフィー家なのに、そういう家で育ったコナーが自殺しているのが実に現代的だと思った。しかも彼が「変わってしまった」と言われるようになっている現在においてなお、生前、普段はついぞ見せなかったであろうリラックスした表情で歌っている姿があり、「変わってしまった」のが全てでは決してないところに、現代の“家族の抱える孤独の深い闇”があるように感じた。 もう一つ現代的と言えば、存在を認められるためには何事かを為さなければならないという強迫に若者が晒されている度合いが、僕らが若い時分よりもかなりキツいような気がした。息苦しく生きづらい世の中になっているのは、日本ばかりではないわけだ。そういう思いが募ったせいか、エヴァンが勇気ある告白を果たす場面にカタルシスを覚えられなかったように思う。前作『ワンダー 君は太陽』は、とても気持ちのいい映画だったが、そうはいかなかった。 それにしても、エイミー・アダムスが老けていて驚いた。二年前に『バイス』の映画日誌に「これまでの経験から、エイミー・アダムスの出ている映画にハズレはない」と記したように、作品的にはハズレではないけれども、エイミーは精彩を欠いていた気がする。 | |||||
by ヤマ '21.12. 8. TOHOシネマズ1 | |||||
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