『“復讐”からの解放~グアンタナモ その後』(In Search of Monsters)['21]
 https://www.nhk.jp/p/wdoc/ts/88Z7X45XZY/episode/te/1ZL8LWN3K9/
BS世界のドキュメンタリー

 凄い番組だった。二年前にモーリタニアン 黒塗りの記録を観た際にスラヒよりもカウチのほうが気になってしまうと記していた、グアンタナモ収容所元担当検察官スチュアート・カウチの証言のみならず、想定さえできなかった、スラヒの尋問を担う特別プロジェクトチームを統括した元主任分析官シドニーの証言や、直接指揮した特別プロジェクトチーム元主任リチャード・ズーリーの証言、シドニーの口からも名の出ていたラムズフェルドが承認した“強化尋問技術”を使って直接拷問を行った人物X【顔も音声も隠さずに出ていた】の証言までもが、生々しく映し出されていた。

 シドニーとズーリーは、今もなおスラヒがテロリストであったことを確信しており、長年かけて収集した証拠や分析がポリグラフ検査の結果だけによって覆されたことに憤慨していることが露になっていた。尋問手段の不当は認めていても、尋問調書の内容は正当だと確信していたように思う。

 製作国はドイツながら原題が英語になっている本作の「Monsters」という複数形になっているのは、誰を指しているのだろうと思わずにいられなかった。作り手は、そこにスラヒをも含めている気がしてならない。なんだか『ゆきゆきて、神軍』['87]を観たときのような驚きがあった。

 それにしても、各人が取材者に向かってきちんと言葉を発するばかりか、シドニーとXにおいては、スラヒともネット対談をしていて、恐れ入った。シドニーは尚もスラヒに問い質し、Xは、非を認め謝罪をしていた。重大事に関与した者として、逸らさずに向き合う勇気を持つ人という点では、皆人が通じており、そこに人としての誇りを感じるとともに、このレベルには到底及ばないような事態でも少し都合が悪いと逃げ回る公人、とりわけ政治家が近年とみに目立つ我が国を思うと、実にみっともなく感じた。同時に、取材者に対して言葉を発することを避ける理由の一つに、取材者やメディアに対する不信感というものがあることも窺えるような気がした。
by ヤマ

'23. 9. 9. NHK BS1録画



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