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『マトリックスの衝撃 -仮想現実に覆われる社会-』 (THE MATRIX GENERATION)['23] https://www.nhk.jp/p/wdoc/ts/88Z7X45XZY/episode/te/PK88G11V7J/ | |||||
BS世界のドキュメンタリー
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昨年のフランス番組だが、めっぽう面白かった。二十年前に、ネットの映友と「映画の変容」についての談議を始めた際に「そこに大きな流れがあるとしたら、ひょっとするとその口火は『マトリックス』なのかもしれません。」と述べた覚えがあって「むろん決定的な一作ということでもないのでしょうが、象徴的な一作ということでは、あれかなって気が僕はしています。ちょうど物語性の復権みたいなとこでの“ドキュメンタリーと劇映画の相互乗り入れの動勢”を象徴する意味でのモニュメンタルな作品として『友だちのうちはどこ』が想起されるように。」と添えたことを思い出した。 それからすれば、『マトリックス』の場合、映画の変容に留まらない大きな影響があったことを納得感のある語り口で証していて大いに観応えがあった。番組で紹介された『マトリックス』四部作すべてを観ていながら、第一作は映画日誌に残していないことが残念だ。第四作『マトリックス・レザレクションズ』['21]の日誌に「第一作の持っていた“その後の映画を変える作品になるかもしれない”と感じさせるインパクトは、望むべくもなかったように思うが、あくまで“復活”なのだから当然だとも言える気がした」と記している四部作を通して再見してみたい気になった。 映画に限らずあらゆる創造がそうであるように完全オリジナルなものなどはなく、先人の残しているものの影響を受けているわけだが、本作に関して言及された各作品が興味深く、また納得感があった。アクション娯楽のなかの哲学性としての『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』['80]。メカニカルなディストピア的近未来としての『ストレンジ・デイズ』['95]、『トゥルーマン・ショー』['98]、『ブレードランナー』['82]、『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』['95]、『ゴースト・イン・ザ・シェル』['17]。アクションやCGの視覚効果としての『狼 男たちの挽歌・最終章』['89]、『フェイス/オフ』['97]、『ターミネーター2』['91]、『ジュラシック・パーク』['93]。 そして、『マトリックス』が影響を与え、引用され、パロディー化されている作品として『チャーリーズ・エンジェル』['00]、『300』['07]、『WANTED ウォンテッド』['08]、『ドラゴン・タトゥーの女』['11]、『最終絶叫計画』['00]、『ザ・シンプソンズ』、『シュレック』、『バビロン』['22]が挙がっていた。 「監督は“新しいストーリーの伝え方と視覚効果の使い方”があると気づいた」(『マトリックス』プロデューサー、ジョエル・シルヴァー)との弁が核心を突いているように感じたが、手法とは異なる領域における関連作品として『白昼の幻想』['67](サイケ・LSD)、『不思議の国のアリス』['51](サイケ世界の元祖)、『2001年宇宙の旅』['68](サイケデリック文化とコンピューター革命)が目を惹き、初めて観た『Macintosh CM』['84]に驚いた。 また、社会に対する問題意識の部分を継承した作品として挙がっていたように思う『ファイトクラブ』['99]、『スピード・レーサー』['08]、『クラウド・アトラス』['12]、『Vフォー・ヴェンデッタ』['05]によって、ウォシャウスキーの描き出す世界の底にある'70年代の精神と'90年代のテクノロジーへの不信感に触発された社会観を示すとともに、『アニマトリックス』['03]などに窺える真実と噓の混乱を助長したとの指摘が、現実世界の政治状況との同一性とともに語られていて興味深く、更には現実と仮想とのトランスに加えて、ジェンダーのトランスにおいてもウォシャウスキー姉妹が先進的表現を果たしていることに言及していて面白かった。 『バウンド』['96]は観ているけれども、未見の『スピード・レーサー』['08]、『クラウド・アトラス』['12]、『ジュピター』['15]を観てみたいものだ。 | |||||
by ヤマ '24. 2.14. NHK BS録画 | |||||
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