『ちはやふる -上の句-』『ちはやふる -下の句-』『ちはやふる -結び-』
監督 小泉徳宏

 公開時に観逃していたのだが、ネットの映友から、結びまで観てほしいとの声をもらい、TV録画をしておいたはずが、下の句しかできてなくて、よくよく縁がないのだと思っていたら、娘が上の句を借りてきてくれたので、三作続けて観ることができた。

 「上の句」序盤のほうで、どうも演出の間合いというか調子が自分と合わないように感じたのだが、今を時めく広瀬すず【綾瀬千早】は流石に溌剌としていて、これほど暑苦しいキャラクターを演じても、まるで厭味がないと大いに感心した。'70年代半ばに高校生だった僕は、当時、大人たちから「シラケ世代」と呼ばれ、三無主義だの四無主義だのといって物事に熱くなることや真面目に振舞うことがかっこ悪いとされる時代的気分のなかで過ごしたこともあって、綾瀬千早のような一途に過ぎるキャラクターは、今だに苦手なところがある。僕にも確かな覚えがあるが、同じく漫画で言うならば、時代のヒーローはジョージ秋山の描いた“浮浪雲”だった。だから、当時の感覚ではカルタ部に負けず劣らずのマイナークラブに落ちぶれていた新聞部・文芸部・生徒会などという“時代遅れ”の部活の掛け持ちをしていた稀少種の僕にあってさえそう感じるほどに、綾瀬千早が暑苦しくて仕方がなかった。

 にもかかわらず、三作通して観終えると、カルタであれ、何であれ、単なる趣味の領域を超えたライフワークとも言うべきものと出会い、それを分かち合い切磋琢磨できる伽を得ることの幸いが沁みてくるようなところがあって、なかなか気持ちのいい作品になっていた気がする。役者たちの若さが眩しく、実に美しかった。僕もそういう歳になっているということだとしみじみ思った。

 綿谷新(新田真剣佑)が「これを続けていれば、いつか千早(広瀬すず)と太一(野村周平)に会えるはず」と取り組んできていたカルタを辞めたと「上の句」で言っていた理由について、病床にある祖父を置いて大会に出場した隙に事故でもあって亡くなったことに対する自責の念などを予想していたのだが、ストレートに喪失感のみだったので「祖父ロスでカルタ辞めんの?」と些か拍子抜けしてしまった。

 それでも「下の句」は、全国大会でのクィーンの若宮詩暢(松岡茉優)と千早の対戦場面がよく、とりわけ詩暢を演じる松岡茉優の見せた嬉し気な表情が気に入った。好敵手を得た手応えに喜んだ彼女が「早う上って来るよう千早はんに伝えといて」と新に告げていたので、「-結び-」での対決場面を楽しみにしていたら、肝心のその場面を駆け足のアニメーションで済ませていたことに些かはぐらかされた気になった。

 やはり「演出の間合いというか調子が自分と合わない」と上の句を観て感じた部分が最後まで付きまとっていたような気がする。原作漫画未読ながら、おそらくは漫画にありがちな“ウルトラマンとウルトラマンキッズ的なキャラ変化”によって笑いを取っていると思しきものを実写映画においても踏襲している感じのするキャラ遣いがしっくりこなかった。
 でも、一連の作品に関して、レンタルディスクで「上の句」を観、地上波放送録画で「下の句」を観てからのスクリーンでの「-結び-」観賞を続けざまになる形で果たしたことによって、改めて「やっぱり映画観賞は劇場だよなぁ」と感じることができたように思う。

 
by ヤマ

'18. 4. 4. レンタルDVD
'18. 4. 5. 地上波放送録画
'18. 4. 8. TOHOシネマズ5



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