『ブランカとギター弾き』(Blanka)
監督 長谷井宏紀

 恒例となったシネマの食堂、十年目のオープニングとなるという紹介のされた野外上映だったが、空模様もそれを祝してか、今までで最も天気に恵まれていた気がする。寒くもなく、宵闇の程もよく、路上の流しのギター弾きの映画にふさわしい野外感に包まれていたように思う。

 なんだか無性に懐かしい映画を観ているような気になった。イタリア映画だからか、土地に暮らす人々を起用していたからか、はたまた貧困を描いていたからか、映画史に輝く一時代を画したネオレアリスモを観ているようだった。「大人は子供を買うのに、子供は大人を買っちゃいけないのか」とのブランカ(サイデル・ガブテロ)の台詞も痛烈な、フィリピンのストリート・チルドレンが盲目のギター弾きと出会う物語だ。

 ドキュメンタリー映画忘れられた子供たち スカベンジャー(四ノ宮浩監督)で、スモーキーマウンテンに暮らす子供たちの生活を垣間見たのは二十年余り前になるが、経済格差が解消ではなくどんどん拡大方向にある今世紀にあって、フィリピンの貧困児童の暮らし向きがよくなるはずもなく、スカベンジャー(ごみ拾い暮らし)ではなくて積極的に犯罪に手を染めて生きていた。だが、荒みではなく、かつて『スカベンジャー』を観て「不思議な美しさに満ちた映画になっている」と綴ったのと同じようなものが宿っているように感じられた。

 憧れの女優の養女になるチャンスよりも、自分の帰るべきホームは、盲目のギター弾きピーター(ピーター・ミラリ)の元であることに気づき、戻った路上にピーターとセバスチャン(ジョマル・ビスヨ)の姿を見つけ、得も言われぬ笑顔を見せるブランカを映し出していたラストカットが、こよなく素敵だった。
 
by ヤマ

'17. 9.29. 美術館中庭



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