『寄生獣』 『寄生獣 完結編』
監督 山崎貴


 山崎貴は、やはり古沢良太と組んだ作品がいいなと思った。赤ん坊や幼子の笑顔の最強ぶりを実感する機会に僕が恵まれていることも作用しているのかもしれないが、完結編の最後のほうでの田宮良子(深津絵里)の長口舌も全く鼻につかず、むしろ、大学の文系学部の廃止や縮小を安倍政権が企てていると報じられた昨今にあって、生きることの意味や自分の存在を問い直すような思索の意義を訴えかけているように感じられて、大いに好感を覚えた。

 岩明均の原作漫画を家族そろって読み耽ったのは、もう二十年近く前のことになる。とても面白かった覚えがあるのみで、話のほうは、ほとんどすっかり忘れている。前編ともいうべき『寄生獣』を観たときには、原作には、もっと深みがあったような気がしてならなかったのだが、完結編を観て、けっこう盛り返しているように感じた。ビジュアル主体の山崎作品なのだから、ここまで挽回していれば充分だろうという気がする。

 真っ当に出所できるとは思えない浦上(新井浩文)の思い掛けない登場により里美(橋本愛)が危機に見舞われる場面は、なんだか取って付けたような感じで少々興を削いだが、里美と新一(染谷将太)が重ね合わせ、絡み合わせた、手と指の官能性を秘めた美しさに思いを改め、納得することができた。

 それにしても、浅野忠信をいいと思ったのは、本当に久しぶりのような気がする。広川(北村一輝 )が「人間こそが寄生獣だ」と指摘するメッセージ自体は、三十年近く前においても既に格別斬新なものではなかったように思うが、その部分をも踏まえて「人とは一体いかなるものなのか」との問い掛けが読んでいるうちに自ずと湧いてくるような触発力に魅力があったような気がしている。
by ヤマ

'15. 1.14.& 6. 5. TOHOシネマズ9&3



ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―

<<< インデックスへ戻る >>>