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Drei Orchesterlieder  
3つのオーケストラ歌曲

曲: ウェーベルン (Anton Webern,1883-1945) オーストリア ドイツ語


1 Leise Düfte (Anton Webern)
1 かすかな香り (ウェーベルン)

Leise Düfte,Blüten so zart
Träumend erschließt sich die Frau,
Mondesgluten,Küsse der Nacht
Weinend mein Glück ich schau.

かすかな香り 花たちはとても繊細だ
夢見心地で花開く 女
月のきらめき 夜のくちづけ
涙を流しながらわが幸せを 私は見る

2 Kunfttag (Stefan Anton George)
2 予兆のとき (ゲオルゲ)

Nun wird es wieder lenz . .
Du weihst den weg die luft
Und uns auf die du schaust --
So stammle dir mein dank.

Eh blöd der menschen sinn
Ihm ansann wort und tat
Hat schon des schöpfers hauch
Jed ding im raum beseelt.

Wenn solch ein auge glüht
Gedeiht der trockne stamm ·
Die starre erde pocht
Neu durch ein heilig herz.

今 再び春となった
お前は祝福する 道や大気を
私たちを見おろしながら
こうして口ごもりながら お前に私の感謝を

人間の頭が愚かにも
春に言葉や行為を結びつける前に
既に創造主の吐息は
あたりのすべてのものに魂を吹き込まれたのだ

もしもこのような瞳が燃え立てば
枯れ果てた茎も栄えて
頑なな大地も脈打ち始めるのだ
新たな聖なる心臓のもとで

3 O sanftes Glühn der Berge (Anton Webern)
3 おお 山々の穏やかな輝きよ (ウェーベルン)

O sanftes Glühn der Berge
Jetzt sehe ich Sie wieder.
O Gott so zart und schön,
Gnadenmutter,in Himmelshöhn.
O neige Dich,o komme wieder
Du grüßt und segnest - -
Der Hauch des Abends nimmt das Licht -
Ich seh's nicht mehr,Dein liebes Angesicht.

おお 山々の穏やかな輝きよ
今私はお前たちを再び見るのだ
おお神よ かくも優しくかつ麗しく
慈愛の御母は高きところにおわす
おお降り給え御身よ おお来たれ再び
御身偉大にして祝福されしお方――
夕暮れの吐息が光を奪って行く
私にはもはや見えぬ 御身の愛しきお顔も


オーケストラ伴奏の歌曲集、ウェーベルンの死後発見されたため初演も1966年と遅く、ほとんど知られていない作品となっておりますが、晩年のブーレーズがC.エルツェを独唱者にベルリン・フィルハーモニーを振った演奏の録音がDGにあります。3曲ともそれほど激しくなることもなく淡々と流れて行きます。2曲目のKunfttag(Advent)というのは待降節とも訳されることがありますが、これはクリスマスを待ちわびる11月、クリスマスの4つ前の日曜日から始まる一連の時ですので、ここで詩の中で述べられている命の目覚めとは時期的にしっくり来ませんのでここでは「予兆のとき」という訳を充ててみました。ゲオルゲにはこのKunfttagをテーマとした詩がいくつもあり、そのいくつかにウェーベルンは曲をつけていますがこれもそのひとつです。
この曲を挟んだ1・3曲は珍しく作曲者自身の詩。これらも春を思わせる輝きに満ちた詩です。

( 2018.04.28 藤井宏行 )