Songs of Sorrow Op.10 |
悲しみの歌 |
1 A coronal
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1 花の冠
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Into a frail,fair wreath We gather and entwine: A wreath for Love to wear, Fragrant as his own breath, To crown his brow divine All day till night is near. Violets and leaves of vine We gather and entwine. Violets and leaves of vine For Love,that lives a day, We gather and entwine. All day till Love is dead, Till eve falls,cold and gray, These blossoms,yours and mine, Love wears upon his head. Violets and leaves of vine We gather and entwine. Violets and leaves of vine Poor Love,when poor Love dies, We gather and entwine. This wreath,that lives a day, Over his pale,cold eyes, Kissed shut by Proserpine, At set of sun we lay: Violets and leaves of vine We gather and entwine. |
はかなく 美しい花輪を われらは集め 巻きつけるのだ: 愛が身に着けるための花輪を 愛自身の息のように香ばしい花輪を その神々しい額の冠として載せるために 一日中 夜が近づくまで スミレやブドウの葉 われらは集め 巻きつけるのだ スミレやブドウの葉 一日生きるだけの愛のため われらは集め 巻きつけるのだ 一日中 愛が死んでしまうまで 夜の帳が降りるまで 冷たく暗く この花たちを あなたと私の 愛はその頭に着ける スミレやブドウの葉 われらは集め 巻きつけるのだ スミレやブドウの葉 哀れな愛 哀れな愛が死ぬとき われらは集め 巻きつけるのだ この花輪を 一日だけ生きる その青白い 冷たい目の上を プロセルピナがキスをして閉ざした 太陽が沈む時 われらは横たわり: スミレやブドウの葉 われらは集め 巻きつけるのだ |
2 Passing dreams
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2 束の間の夢
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Love and desire and hate: I think they have no portion in us after We pass the gate. They are not long, the days of wine and roses: Out of a misty dream Our path emerges for a while, then closes Within a dream. |
愛も 願いも そして憎しみも 我らの元には留まることはないだろう 我らが天国の門を通りすぎたあとには 長くは続かないのだ ワインとバラに満ち溢れた日々も 霞のような夢の中から 我らの歩む道がほんの一瞬現れても やがて消え去る ほんの夢のうちに |
3 A Land Of Silence
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3 沈黙の地
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Where pale stars shine On apple-blossom And dew-drenched vine, Is yours and mine? The silent valley That we will find, Where all the voices Of humankind Are left behind. There all forgetting, Forgotten quite, We will repose us, With our delight Hid out of sight. The world forsaken, And out of mind Honour and labour, We shall not find The stars unkind. And men shall travail, And laugh and weep; But we have vistas Of gods asleep, With dreams as deep. A land of silence, Where pale stars shine On apple-blossoms And dew-drenched vine, Be yours and mine! |
そこで蒼ざめた星たちが リンゴの花や 露の降り注ぐブドウの上に輝くところが あなたの そして私のものなのか? 沈黙の谷間 われらが見つけるであろうところ そこにはあらゆるの声 人間の声が 取り残されている すべてそこに忘れ すっかり忘れられて われらはわが身を休める われらの喜びを 視界の外に隠して 見捨てられた世界 そして心の外の 吊誉と苦役 われらは見つけることはなかろう 上実な星は そして人々は苦労するだろう そして笑い 泣くのだ だがわれらは視座を持っている 眠れる神々の 深々とした夢と共に ひとつの沈黙の地 そこで蒼ざめた星たちが リンゴの花や 露の降り注ぐブドウの上に輝くところが あなたの そして私のものなのだ! |
4 In spring
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4 春には
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Are green bedecked and the woods are blithe, The meadows have donned their cape of flowers, The air is soft with sweet May showers And the birds make melody: But the spring of the Soul,the spring of the Soul Cometh no more for you or for me. The lazy hum of the busy bees Murmureth thro' the almond trees; The jonquil flaunteth a gay,blonde head, The primrose peeps from a mossy bed, And the violets scent the lane, The violets scent the lane. But the flowers of the Soul,the flowers of the Soul, For you and for me bloom never again. |
緑に飾り立てられ 森は陽気なことかを 牧場は花のケープをまとい 大気はやさしき五月の雨とともにやわらかく そして小鳥たちは音楽を紡ぐ だが魂の春、魂の春は もう二度と君のもとにも ぼくのもとにも帰ってはこない 忙しいハチたちの物憂い羽音が アーモンドの木々の間に響く 黄水仙は揺する 陽気なブロンドの頭を 桜草は苔むすベッドより顔を覗かせ そしてスミレは小道に香る スミレは小道に香る けれどこの魂の花は、魂の花は 君にもぼくにも 二度と再び咲くことはない |
ダウスンの詩、けっこう歌曲に向いた響きの良いものがあるように思うのですが意外とメジャーな作曲家が取り上げたものは多くありません。その中ではこの詩人を偏愛していたディーリアスは別格として、このクィルターの4曲からなる歌曲集「Songs of Sorrow《は注目すべき出来栄えの傑作です。ダウスンの詩の中でもかなりよく知られたものを選んでおり、第2曲と第4曲はディーリアスの大作「日没の歌《に取り上げられた詩とかぶっています。「悲しみの《とはありますがそんなに暗い曲想ではなく(クィルター自身があまり暗いメロディは書けない人ではありますが)、陶酔的なメロディはダウスンの翳りのある詩に絶妙にはまっていてなかなかに心動かされます。とりわけ第4曲のメロディアスな諦観は素晴らしいです。深みのあるミュージカルナンバーといった趣の聴きやすさも魅力でしょう。
( 2018.02.06 藤井宏行 )