夜に詠める歌 |
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1 T
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2 U
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ほろんで行つた 草木らが どうして 美しい ことがあらう 昼を私らの手にかへす つめたいありあけの光のなかで 私が どうして 否定しよう |
3 V
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花よ 花らの光を野にかへせ ――たたへられた 水に 夜が去る その最後の 影よ ちひさい波のさざめきを のこせ! あこがれられた瞳に |
若き日に抒情的な歌曲集「優しき歌」を書いている柴田が、同じ立原の詩を用いて1963年に発表したこの作品は、前衛技法(ミュージック・セリエル)を駆使して書かれており、とても前の歌曲集と同じ作曲家が書いたものとは思えないほどです。ソプラノ独唱にヴィブラフォン・ヴィオラ・クラリネットの伴奏がつくというまるでウェーベルンを思わせる編成。研ぎ澄まされた伴奏の響きは見事です。長大な散文詩は第1部で朗読され、そこに各楽器が絡みつきます。引き続いてのU・V部では立原の「反歌」とされるソネットが、前半の2節が第2部で、後半の2節が第3部に当てらています。ここでは12音の音列でソプラノが歌い、第2部ではヴィブラフォンが大活躍するゆったりとしたテンポ、第3部はもう少しダイナミックにテンポを揺らして演奏されています。NaxosでリリースされているNHK「現代の音楽」アーカイブシリーズの中で、この1963年初演の録音を聴くことができました。
( 2017.03.05 藤井宏行 )