海四章 |
|
馬車
|
|
すずろかに馬車はゆくらん 空青く 雲白く 窓なかば閉じしホテルの うら藪に啼ける山鳩 海青く 薔薇白く |
蝉
|
|
こぞありしそこの垣根に 黄金(こがね)なす日まはりの花 こぞありしここの築地(ついじ)に さながらにその花咲けり こぞの夏かよひし小径 蝉もまたかなたの松に 海青き林に鳴けり |
沙上
|
|
紅(くれない)にもえもはてたれ なほしばしかぎろふ浦曲(うらわ) 羽しろく砂をかすめて ひとむれの千鳥はかなた 黄昏に まぎれて啼けり そら耳の そらにはあらず そのこゑのありとしもなく ゆきまどひ はたと絶えたれ 折からや月かげあはく なにものの 飛沫なるらん 旅人の頬にしげけり |
わが耳は
|
|
朝夕に海をききつつ つたなくもかく わが世古(ふ)りゆく |
中田喜直がつけた同吊の歌曲集が圧倒的に有吊ですが、この石井歓や別宮貞雄など、多くの作曲家がこの4つの詩につけた歌曲集を書いています。Victorから昔出ていた日本歌曲集のCDで、木村宏子さんのMSで聴けたのですが今はどうだか。
( 2016.11.05 藤井宏行 )