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Night of the Four Moons  
4つの月の夜

詩: ガルシア=ロルカ (Federico Garcia-Lorca,1898-1936) スペイン

曲: クラム (George Crumb,1929-) アメリカ スペイン語


1 La luna está muerta
1 月は死んだ

La luna está muerta;
pero resucita en primavera.

月は死んだ
けれどよみがえるのだ 春には

2 Cuando sale la luna
2 月が昇るときには

Cuando sale la luna,
el mar cubre la tierra
y el corazón se siente
isla en el infinito.

月が昇るときには
海は大地を覆い
そして心は感じるのだ
島を 無限の中に

3 Otro Adán oscuro está soñando
3 別の暗いアダムは夢見ている

Otro Adán oscuro está soñando.
neutra luna de piedra sin semilla.
donde el niño de luz se irá quemando.


別の暗いアダムは夢見ている
種のない石でできた中性の月のことを
そこには光の子が燃えている

4 Huye luna,luna,luna.
4 逃げろ 月よ 月よ 月よ

Huye luna,luna,luna.
Si vinieran los gitanos,
harían con tu corazón
collares y anillos blancos.

Niño déjame que baile.
Cuando vengan los gitanos,
te encontrarán sobre el yunque
con los ojillos cerrados.

Huye luna,luna,luna,
que ya siento sus caballos.
Niño déjame,no pises,
mi blancor almidonado.

El jinete se acercaba
tocando el tambor del llano.
Dentro de la fragua el niño,
tiene los ojos cerrados.

Por el olivar venían,
bronce y sueño,los gitanos.
Las cabezas levantadas
y los ojos entornados.

¡Cómo canta la zumaya,
ay como canta en el árbol!
Por el cielo va la luna
con el niño de la mano.

逃げろ 月よ 月よ 月よ
もし ジプシーがやってきたら
やつら お前の心臓を
ネックレスと白い指輪にするかも知れない

坊や 私に踊らせておくれ
もし ジプシーがやってきたら
お前をやつらは見つけるだろう 金床の上で
小さな目を閉じているのを

逃げろ 月よ 月よ 月よ
もう聞こえるよ やつらの馬の音が
坊や 行きなさい だが踏まないで
私の糊のきいた白さの上を

馬に乗った者たちが近づいて来た
ドラムをたたきながら 平原を
ふいごの中で 子供は
目をしっかりと閉じていた

オリーブの林を抜けてやつらはやって来た
ブロンズと夢 あのジプシーどもが
頭を上げ
目を細めて

何て鳴いてるんだ フクロウめ
ああ 鳴いているよ あの木で!
空では月が去って行く
あの子の手を引いて


この曲を歌っているドーン・アップショーのCDの解説に「1969年夏 アポロ11号の月面着陸があった この歴史的な出来事に対するジョージ・クラムの答えが<<四つの月の夜>>であった《と書かれておりました。スペインの作曲家ガルシア=ロルカの月にまつわる詩の断片を集めてきて歌を作ることが一体どのような答えなのかは私にはさっぱり分かりませんが、このクラムという人、ロルカの詩による声楽作品を結構たくさん書いておりますのでその流れとしてここでも取り上げられたということもあるのでしょう。またこの歌曲集、Moonsと月が複数形となっているからでしょう。邦題が「四つの衛星の夜《とされていることがよくありますが、月の色々な様相を表すがゆえの複数形でしょうから、ここはやはり「月の《としたいところです。
バンジョーを伴奏に用いておりますが、これをまるで三味線のように響かせ、そこにピッコロを低音で鳴らし、義太夫調の声に絡ませているものですから、まるで邦楽のような雰囲気です。その言葉がスペイン語というのも何とも奇妙。聴いていてとても面白い音楽となりました。

( 2016.10.30 藤井宏行 )