TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Fünf Ophelia-Lieder   WoO22
5つのオフィーリアの歌

詩: シュレーゲル,アウグスト・ヴィルヘルム (August Wilhelm von Schlegel,1767-1845) ドイツ

曲: ブラームス (Johannes Brahms,1833-1897) ドイツ ドイツ語


1 Wie erkenn' ich dein Treulieb
1 どうやって私は見分けるの あなたの本当の恋人を

Wie erkenn' ich dein Treulieb
Vor den andern nun?
An den Muschelhut und Stab.
Und den Sandalschuh'n.

Er ist lange tot und hin,
Tot und hin,Fräulein!
Ihm zu Häupten ein Rasen grün,
Ihm zu Fuß ein Stein.

どうやって私は見分けるの あなたの本当の恋人を
他の人たちから一体?
巡礼の帽子と杖
それにサンダル靴

あの方はとうに死んでいます
死んでいますよ お嬢様!
彼の頭のところには緑の芝
彼の足元にはひとつの石


2 Sein Leichenhemd weiß wie Schnee zu
2 彼の死装束は雪のように白く見えて

Sein Leichenhemd weiß wie Schnee zu sehn,
Geziert mit Blumensegen,
Das still betränt zum Grab mußt gehn
Von Liebesregen.

彼の死装束は雪のように白く見えて
花の祝福で飾られています
静かに濡れながらお墓に行かなくてはなりません
愛の雨に


3 Auf morgen ist Sankt Valentins Tag
3 明日は聖ヴァレンタイン様の日

Auf morgen ist Sankt Valentins Tag,
Wohl an der Zeit noch früh,
Und ich 'ne Maid am Fensterschlag
Will sein eur Valentin.
Er war bereit,tät an sein Kleid,
Tät auf die Kammertür,
Ließ ein die Maid,die als 'ne Maid
Ging nimmermehr herfür.

明日は聖ヴァレンタイン様の日
まだとても早い時間に
私は窓辺に立つひとりの乙女
あの人のヴァレンタインになりましょう
あの人は仕度して 朊を着て
部屋のドアを開けて
乙女を中に入れました そして乙女のままでは
彼女はもう出てこなかったのです

4 Sie trugen ihn auf der Bahre bloß
4 人々はあの人をむき出しの担架で運びました

Sie trugen ihn auf der Bahre bloß,
Leider,ach leider!
Und manche Trän' fiel in Grabes Schoß --
Ihr müßt singen: «'Nunter,hinunter!
Und ruft ihr ihn 'nunter.»
Denn traut lieb Fränzel ist all meine Lust.

人々はあの人をむき出しの担架で運びました
悲しい ああ悲しい!
そしてたくさんの涙が流れ落ちたの お墓の奥底へと
あなたたちは歌わなくてはなりません 「倒れてしまった!《と
そしてもしもあの方に呼びかけるのなら 「倒れてしまった!《と
とても好きなフレンツェルは私の喜びのすべてなのです

5 Und kommt er nicht mehr zurück?
5 それではあの人はもう戻ってこないの?

Und kommt er nicht mehr zurück?
Und kommt er nicht mehr zurück?
Er ist Tot,o weh!
In dein Todesbett geh,
Er kommt ja nimmer zurück.

Sein Bart war so weiß wie Schnee,
Sein Haupt dem Flachse gleich:
Er ist hin,er ist hin,
Und kein Leid bringt Gewinn:
Gott helf' ihm ins Himmelreich!

それではあの人はもう戻ってこないの?
それではあの人はもう戻ってこないの?
あの人は死んでしまった おお悲しい!
あなたの死のベッドの中に行きなさい
あの人はもう二度と戻ってこないのだから

あの人のひげは、雪のように白かった
その頭は亜麻と同じ色をしてた
あの人は逝って 逝ってしまったの
嘆いたところで無駄なこと
神さまお助け下さい あの人が天国に行けますように!


シェイクスピアの悲劇「ハムレット《から、狂気にかられたヒロイン・オフィーリアの歌う歌のほとんどすべてにブラームスがメロディをつけています。ドイツ語訳詞のシュレーゲルはこのハムレット全体を訳していたようで、その翻訳台本からブラームスは必要な部分を取り出しています。悲劇の真っただ中でもあり、またオフィーリアが狂気している場面なのですが、音楽は暗くなることもなく(第1曲目だけ短調ですが)淡々と流れて拍子抜けしてしまうほどですが、素朴な民謡のようなメロディは美しく、印象に残る歌曲集です。各曲はみな1分そこそこで終わりますので全体でも5分ほどという短さです。

( 2016.02.21 藤井宏行 )