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Songs for Ariel  
アリエルのための歌

詩: シェイクスピア (William Shakespeare,1564-1616) イングランド

曲: ティペット (Sir Michael Tippett,1905-1998) イギリス 英語


1 Come unto these yellow sands
1 来て この黄色い砂のところへ

Come unto these yellow sands,
Then take hands:
Curtsied when you have and kissed,
The wild waves whist:
Foot it featly here and there;
And,sweet sprites,the burthen bear.

Hark,hark!
Bow-wow.
The watch dogs bark;
Bow-wow.
Hark,hark!
I hear the strain of strutting Chanticleer
Cry,Cock-a-diddle dow.
 来て この黄色い砂のところへ
 そしたら手を取り合いましょう
 ご挨拶して キスしたなら
 荒波も静まる
 踊りましょう 上品にあちこちで
 そしたら 愛らしい精霊よ 歌を歌って

 聞いてよ 聞いてよ!
 バウ ワウ
 番犬が吠える
 バウ ワウ
 聞いてよ 聞いてよ!
 気取った雄鶏の金切り声が
 叫ぶ--コックァドゥール ドゥー

2 Full fathom five
2 五尋の深い海底に

Full fathom five thy Father lies,
Of his bones are Corrall made:
Those are pearles that were his eies,
Nothing of him that doth fade,
But doth suffer a Sea-change
Into something rich and strange
Sea-Nymphs hourly ring his knell.
ding-dong,
Harke now I heare them,
ding-dong,bell.
ding-dong,bell.

深い深い海の底にあなたのお父上は眠っています
骨は珊瑚になりました。
両目は真珠になりました。
お体は朽ち果てはしませんでしたが
海の不思議な力を受けて
貴くも不思議な宝となりました。
海の妖精は毎時に弔いの鐘を鳴らします
ディン・ドンと
ほら、聞こえるでしょう。
ディン・ドン・ベル
ディン・ドン・ベル

3 Where the bee sucks
3 ミツバチが蜜を吸うところで

Where the bee sucks there suck I:
In a cow-slip's bell I lie;
There I couch when owls do cry.
On a bat's back I do fly
After summer merrily,
Merrily,merrily shall I live now
Under the blossom that hangs on the bough.

ミツバチが蜜を吸うところで私も吸う
サクラソウの釣鐘の中に横たわり
私はうずくまる フクロウが鳴く時には
コウモリの背に乗って飛び回る
夏のあとを 陽気に
陽気に 陽気に 私は今を暮らそう
枝に垂れ下がってる花たちの下で


シェイクスピア最晩年の戯曲「テンペスト」より。妖精アリエルの歌う歌を3つ、ティペットが取り上げています。実際はもう少し歌はたくさんあってそのすべてを集めて歌にしている作曲家もいるのですが、ティペットは語調の良い3篇を選んでなかなかに愉快な歌にしています。1曲目は第1幕第2場より。犬と雄鶏の鳴きまねが強烈です。2曲目も同じ1幕2場で、とても有名なのでたくさんの作曲家による付曲があります。これはしっとりと穏やかに。最後は第5幕第1場。おもいっきりおどけています。
ティペットのつけた曲はかなり前衛的なメロディながらこんな曲想でまとめていますのでとても面白く聴けます。いくつか録音は聴けましたが、テノールのエインズリーが歌ったSignum盤が、彼のしなやかな美声と熱演でとても面白かったです。

( 2016.01.02 藤井宏行 )