Poëme d'hiver |
冬の詩 |
1 C'est au temps de la chrysanthème
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1 今は菊の季節
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Qui fleurit au seuil de l'hiver Que l'amour profond dont je t'aime Au fond de mon cœur s'est ouvert. Il est né doux et solitaire, A ces fleurs d'automne pareil Qui,pour parer encor la terre, N'ont pas eu besoin de soleil. Sans redouter les jours moroses Qui font mourir les autres fleurs, Il durera plus que les roses Aux douces,mais frêles couleurs. Et si,quelque jour par caprice, Ton pied le foule,méprisé, En même temps que son calice, Tu sentiras mon cœur brisé ! |
冬の境目に咲く あなたを愛するこの深い愛で 私の心の底で花開いている それは穏やかで孤独に生まれた 秋の花たちと並んで この大地に再び現れるのに 太陽の光を必要ともせずに 恐れることもなく 陰鬱な日々を 他の花たちを死なせることになる日々を それはバラたちよりずっと長く咲く やさしいけれど はかない色で そしてもし いつか気まぐれに あなたの足がそれを踏みつけ 蔑むなら その花びらと一緒に あなたは感じるでしょう 私の傷ついた心を! |
2 Mon cœur est plein de toi
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2 私の心はあなたで一杯です
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Pleine d'un vin qui grise. Si jamais doit finir le rêve qui l'endort, Dieu veuille qu'il se brise ! Mon cœur est plein de toi comme une coupe d'or ! Mon cœur est sous tes pieds,comme une herbe foulée Que Mai va refleurir. Si jamais loin de moi doit,fuir ta route ailée, Puisse-t-il se flétrir ! Mon cœur est sous tes pieds,comme une herbe foulée ! Mon cœur est dans tes mains comme un oiseau jeté Par l'aube en ta demeure. Ah ! ne lui rends jamais sa triste liberté, Si tu ne veux qu'il meure. Mon cœur est dans tes mains,comme un oiseau jeté ! |
琥珀色のワインに満たされた もしもいつかこの眠れる夢が終わらねばならないのなら 神様 どうかそれを壊して下さい! 私の心はあなたで一杯です まるで金の杯のように! 私の心はあなたの足元です まるで踏まれた雑草のように でも五月にはまた咲くことでしょう もし私から遠くへと あなたがまた翼広げ飛び去ったなら 再び萎れるでしょうけれど 私の心はあなたの足元です まるで踏まれた雑草のように 私の心はあなたの手の中です まるで見捨てられた小鳥のように 夜明けがあなたの家に射す時の ああ!その鳥に悲しい自由を与えないでください もしも鳥を死なせたくないのなら 私の心はあなたの手の中です まるで見捨てられた小鳥のように! |
3 Noël
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3 ノエル
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En voyant dans ses langes L'enfant radieux que tu fus, On m'a raconté que les anges Ont cru voir renaître Jésus. De l'azur déchirant les toiles, Ils volèrent du fond des cieux !. A leur front portant des étoiles, Des fleurs dans leurs bras gracieux ! Devant ton seuil fermant leur aile, Ils chantèrent si doucement, Qu'on eût dit une tourterelle Qui soupire après son amant. Et le long de ta porte close, Ils couchèrent,en s'en allant, Le cœur entr'ouvert d'une rose, L'urne penchante d'un lys blanc. On les porta près,de ta couche, Sans savoir qui te les offrit ! La rose resta sur ta bouche Et sur ton sein le lys fleurit !... Moi,je ne suis que l'humble pâtre Après les anges et les rois, Qui vient s'agenouiller à l'âtre, Une fleurette entre les doigts ; Prend-la ce pendant,car peut-être Tout souvenir nous vient du ciel. Et,dans ce jour qui te vit naître, C'est mon cœur qui chante Noël ! Noël ! |
産着に包まれたその姿を見る 輝かしき御子でした あなたは 皆が私に告げました 天使たちが 見たと信じていると イエス様の復活を 紺碧の空のキャンバスを引き裂いて 天使たちは天から降りてきました! その額には星をつけて 花をその優雅な腕に抱えて! 戸口の前でその翼をたたみ 彼らは歌いました とても甘美に それはまるで一羽のキジバトが その恋する相手に焦がれて歌うかのように そして閉じられた戸口のところには 置かれていたのです 彼らが去って行った後には 半ば開いたバラの心と 白いユリの釣り花瓶が それらはあなたの寝床のそばへと運ばれました 誰があなたにそれらを差し上げたのかも分からずに! バラがあなたの口に そしてあなたの胸の上にはユリ!... 私はつつましい羊飼いです 天使たちと王さまのあとにやって来て 暖炉のそばにひざまずきます 一輪の野花を手に持って お受け取りください これはたぶん すべての記憶なのですから 天よりやって来た そして、あなたがお生まれになったのを見たその日 私の心なのです こう歌っているのは ノエル! ノエル! |
4 Tu l'as bien dit: je ne sais pas t'aimer.
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4 あなたの言われる通りです:私は分かっていない あなたを愛していることを
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Tout ce qu'un cœur peut enfermer d'ivresses, Cacher de pleurs et rêver de caresses, N'est pas encor digne de te charmer. Tu l'as bien dit,tu l'as bien dit: je ne suis pas t'aimer ! Tu l'as bien dit : mes tendresses sont vaines, A moi,vaincu,que ta grâce a dompté, Qui ne sais rien qu'adorer ta Beauté Et te donner tout le sang de ses veines. Tu l'as bien dit,tu l'as bien dit : mes tendresses sont vaines. Tu l'as bien dit : ce n'est pas de l'amour, Le feu qui seul se consume dans l'âme Sans allumer ailleurs une autre flamme Et sans brûler une autre âme à son tour. Tu l'as bien dit,tu l'as bien dit : ce n'est pas de l'amour ! |
心が囚われているすべてのもの 酩酊に 秘めた涙に 抱擁の夢に それがまだあなたに惹かれるまでにはなっていないのです あなたの言われる通りです:私は分かっていない あなたを愛していることを! あなたの言われる通りです:私の愛は無意味だと 私は 打ちのめされ あなたの慈悲に屈しました 何も知ることなく あなたの美しさを崇拝することを そしてあなたにすべてこの血を捧げることを あなたの言われる通りです:私の愛は無意味だと あなたの言われる通りです:それは愛ではないと ただ魂のうちだけで燃える炎が 別の場所で別の炎を掻き立てずに 別の魂を燃え立たせることもない あなたの言われる通りです:それは愛ではないと! |
5 Ah ! du moins,pour toi je veux être
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5 ああ!せめてあなたのための私でいられたなら
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L'ami qui cherchera ta main, Qui t'empêchera de connaître La lassitude de chemin. Cet ami qu'on dédaigne à l'heure Où tout rit comme un printemps vert, Mais qu'on retrouve quand on pleure, Fidèle et le cœur grand ouvert. Sois heureuse ! que tout soit charmes Pour ta jeunesse et ta Beauté. Mais,du moins,garde-moi tes larmes... Mon amour l'a bien mérité !... |
あなたの手を求める友で あなたに行かせないようにするのです 苦悩への道へと この友は鬱陶しいかも知れません すべてが緑の春のように微笑んでいる時には けれど分かってくれるでしょう 涙にくれることになった時には 誠実で心が広いのだと お幸せに!すべての人が魅了されますように あなたの若さとあなたの美しさに だけど せめて私には残しておいて下さい あなたの涙だけは 私の愛はそれを喜んで受け取りましょう!... |
1882年の出版ということで、マスネの季節ものの歌曲集ということでは一番あとのもの。「四月の詩《と同じシルヴェストルの詩につけています。こちらは歌なしのピアノ伴奏によるプレリュードのあと5編の詩、季節感あふれる詩の中に愛の歌を散りばめてしみじみと美しい歌曲集にしています。確かに詩のテーマとしては統一感はないのですが、全体をひとつの動機で繋いで、それが表情を変えつつ繰り返し現れることで音楽としての一体感が出るように工夫しているので、音楽として通して聴いてみると実にいい味わいなのです。また前奏曲から最後まで切れ目なく歌われるのが普通のようです。
冬の寒い朝の情景を描写しているかのような透明感あふれる前奏曲(プレリュード)に続いて、その余韻が消えないうちに最初の「菊の季節《が始まります。もちろん日本の菊とは違う品種なのでしょうけれども、バラの花との対比で清楚な花のイメージで穏やかに、切々に訴えかけるように流れて行きます。訴えかけと言えば次の曲で一層激しくなり、最初のクライマックスを形作ります。続いては「古い旋律(Air ancien)《の副題を持つ「ノエル(クリスマス)《。伴奏の訥々とした中世風の響きに乗せて朗唱風の歌が淡々と流れますが、それは熱く盛り上がった気持ちを冷ますかのよう。もっともこの曲も別の意味で感動的なクライマックスを作りますが。続いてはダイナミックな愛の歌。熱烈ですが報われない愛がテーマなのでどこかやるせなさが漂っています。最後の愛の詩も実に洒落ています。音楽も控え目でとても好印象。全体を通してマスネのメロディメーカーとしての美質が生かされた素敵な歌曲集としてお薦めです。
録音はOPUSレーベルにバリトンのRichard Byrneのテンポをゆったりと取ったしっとりと渋い歌が、AUVIDISレーベルではDamien Topのちょっと荒っぽいけれども若々しく情熱的な歌がいずれも全曲盤として聴けます。あまりに対照的な解釈なので同じ曲とは思えないほどですがいずれもそれぞれに魅力的。どちらかと言えば歌の技巧がしっかりしているOPUS盤の方が聴いていて心地よいですが。
( 2015.12.22 藤井宏行 )