童謡百曲集 第3巻 |
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41 お米の七粒
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父さん貧しいその時は、 お米が七粒、銭は無い、 一羽の雀に粒一つ、 七羽の雀に粒七つ、 雀は啼き啼き食べてゐた。 父さん雀と遊んでた。 |
42 日永
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雛(ひよこ)のあたまをまろめてる。 雛のあたまはまろめられ、 お眼々をあけよと待ってゐる。 お眼々をあけよと待つ雛、 雛の親鶏、ぬくめ鶏。 雛の親鶏、ぬくめ鶏、 日向をまじまじながめてる |
43 竹取の翁
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(竹取の翁だ、竹取の翁だ。) いつも竹取、笹かつぎ。 (いい翁だ、いい翁だ。) ある日、ありやりやと驚いた。 (ピカリピカリ光つた。ピカリピカリ光つた。) 竹の根方に豆の人。 (ちつちやい姫だ、ちつちやい姫だ。) その子ひろうて、お爺さま、 (ほくほく帰つた、ほくほく帰つた。) 鳴くは鶯、よい日和。 (ホウ、ホケキヨよ。ホウ、ホケキヨよ。) これよ婆さま、眩(まば)ゆかろ、 (家まで光るぞ、家まで光るぞ。) おお、おお、かはいい、お爺さま。 (かぐや姫だ、かぐや姫だ。) それからしあはせ、篠の藪、 (いつ行つてもだ、いつ行つてもだ。) 竹のふしぶし、金のつぶ。 (ホウ、ホケキヨよ。ホウ、ホケキヨよ。) むかしむかしのお爺さま、 (竹取の翁だ、竹取の翁だ。) お伽ばなしのかぐや姫、 (それから、きかして、それから、きかして。) (括弧の中は合唱で歌われます) |
44 仔馬の道ぐさ
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早よ駆け、仔馬。 かるかや、桔梗、 すすきの原を。 とつとと走れ。 お母さんの馬は こちら向いて待つに。 追ひつけ、仔馬、 秋風吹くに。 とつとと走れ。 |
45 郵便くばり
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唐黍畑の入日どき、 つくつくほうしも鳴き立てる。 郵便くばりの来る影は いつでもぽつつり、山のすそ、 帽子のひさしが光ります。 郵便くばりの来る道は、 さやさや黍の葉、紅い房、 両手をふりふりまゐります。 郵便くばりの小父さんは いつもの鞄で、青い鬚、 お鬚の中から笑つてる。 郵便くばりは日に一度、 唐黍畑の入日どき、 「はいはい、坊や、またあした。」 郵便くばりは待ち遠い。 つくつくほうしよ、まだ来ぬか、 誰かの手紙が来はせぬか。 |
46 あわて床屋
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蟹が店出し床屋でござる。 チヨツキン、チヨツキン、チヨツキンナ。 小蟹ぶつぶつ石鹸(しやぼん)を溶かし、 親爺自慢で鋏を鳴らす。 チヨツキン、チヨツキン、チヨツキンナ。 そこへ兎がお客にござる。 どうぞ急いで髪刈っておくれ。 チヨツキン、チヨツキン、チヨツキンナ。 兎ァ気がせく、蟹ァ慌てるし、 早く早くと客ァ詰めこむし。 チヨツキン、チヨツキン、チヨツキンナ。 邪魔なお耳はぴよこぴよこするし、 そこで慌ててチヨンと切りおとす。 チヨツキン、チヨツキン、チヨツキンナ。 兎ァ怒るし、蟹ァ恥よかくし、 爲方(しかた)なくなく穴へと逃げる。 チヨツキン、チヨツキン、チヨツキンナ。 爲方なくなく穴へと逃げる。 チヨツキン、チヨツキン、チヨツキンナ。 |
47 この道
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ああ、さうだよ、 あかしやの花が咲いてる。 あの丘はいつか見た丘、 ああ、さうだよ、 ほら、白い時計台だよ。 この道はいつか来た道、 ああ、さうだよ、 お母さまと馬車で行つたよ。 あの雲もいつか見た雲、 ああ、さうだよ、 山査子の枝も垂れてる。 |
48 風
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山の小鳥を連れて来る。 風はお窓に置いてゆく。 パンとポプラの葉をひとつ。 風はやさしい母さんの 朝のお声を持つて来る |
49 J・O・A・K
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しろいお家(うち)をたてました。 しろいお家のかたつむり、 角のアンテナ出しました。 ここは樺太(からふと) 眞岡道(まおかみち) 馬の背よりも高い蕗。 角のアンテナかたつむり、 J・O・A・K きいてます。 |
50 ちんちん千鳥
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啼く夜さは、 硝子戸しめてもまだ寒い。 まだ寒い。 ちんちん千鳥の啼く聲は、 啼く聲は、 燈(あかり)を消してもまだ消えぬ。 まだ消えぬ。 ちんちん千鳥は親無いか。 親無いか。 夜風に吹かれて川の上。 川の上。 ちんちん千鳥よ、お寝(よ)らぬか。 お寝らぬか。 夜明けの明星が早や白む。 早や白む。 |
第3巻で再び北原白秋の詩による童謡が10曲取り上げられます。歌のテーマの選択でも、音楽のスタイルでもかなり意欲的になってきて(かぐや姫を題材とした「竹取の翁」ではついにバックコーラスまで登場します)実に面白い10曲です。中には耕筰の代表作にも挙げられる「あわて床屋」と「この道」が含まれていますね。「この道」は私はそんなに秀逸とは思わないのですが「あわて床屋」は大傑作だと思っております。しみじみとした味わいの「お米の七粒」や愛らしい「日永」、「竹取の翁」は真面目に歌われるとちょっと噴き出してしまいそうですが、素朴な「仔馬の道ぐさ」にロシア民謡のような味わいの「郵便くばり」、さわやかな「風」にテーマが斬新な「J・O・A・K」(今のNHK・ラジオ第一放送の東京放送局のコールサインです。NHKラジオの代名詞としてJOAKが使われたのかも。ちなみに当時サハリンにあった放送局(豊岡:現在のユジノサハリンスクはJDAKだったのだそうです)、そして近衛秀麿のつけた曲が圧倒的に有名なものの、それに決して遜色ない(というか非常に良く似ている)「ちんちん千鳥」と、有名曲以外の8曲もなかなか捨てがたい魅力です。残念なことに滅多に聴くことはできないのですが。
( 2015.10.23 藤井宏行 )