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児童雑誌「良友」のための作品より  


詩: 三木露風 (Miki Rofuu,1889-1964) 日本

曲: 山田耕筰 (Yamada Kousaku,1886-1965) 日本 日本語


円いお月


日暮れの空のあかるさに
かつぽん かつぽん 啼く鳥よ
あまり良い月 お月ゆゑ
かへる塒(ねぐら)をわすれたか

青い野の花白い花
そよそよ小風にうごいてる
お星の子供か白い花
ピカピカ露に光ります

羊も 犢(こうし)も みな帰り
草の小径(こみち)はすゞしいな
まァるいまァるい月にまだ
かつぽん かつぽん なく鳥よ


ほととぎす


朝も早よから
ほとゝぎす
ほつとん かけたか
なきまする

昼は青葉に
ほとゝぎす
ほつとん かけたか
なきまする

山でも 森でも
啼く鳥よ
声はあるけど
声ばかり

夏の夜空を
飛んでゆく
ほつとん かけたか
ほとゝぎす


小鳥と蝸牛


ゆさ ゆさ 揺れる
小さな枝は
小鳥よ 小鳥
啼き 啼き 飛べよ
谷から谷へ
さらさら水の
小川をこえて

匐(は)へ 匐へ 匐へよ
蝸牛(ででむし) 匐へよ
枝から枝へ
お家をつけて
朝日が照らす
静かな時に
蝸牛 匐へよ


母鳥子鳥


聖寺(みてら)の鐘が
鳴りました
かん かん かん かん
なりました
森の日暮の樹のかげに
かさかさ音する
何鳥か

青い寝床に
こんもりと
休む 子鳥よ 母鳥よ


秋の夜


きれいな空の紅い雲
見る間に消えて月が出る
黄ろい 黄ろい お月様

波の寄せくる音がして
しづかに映る影法師
昼間のやうにあかるいな

聖堂(みどう)の上にも照る月よ
草葉に露がおきだした
チロチロ虫もないてゐる





夕の空にそよいでる
青い木の葉よ 木の枝よ
聖堂(みどう)のあたりは青葉して
お星の光が涼しいよ

幼き御子(おんこ)を抱きます
慶(めで)たき御星(おほし)のマリア様
金の冠(かむり)をいたヾいた
奇(くす)しき玖瑰花(ばら)の おん母よ


漁り火


水色空よ
あかるい空よ
流れのうへに
映つたそらよ
お山の 林の 上に出た
円るいお月は 樹の蔭に

むかうに見ゆるは
漁り火よ
星より白い
いざりびよ


ちんころ小犬


ちんころ ちんころ小犬よ小犬
小鈴をつけてあそべよあそべ
チヤラ チヤラ チヤラ

ちんころ ちんころ小犬よ小犬
尾をふり尾をふりあそべよあそべ
家(うち)のご門の雀が見てる
チユツチヨン チユツチヨン チユ

ちんころ ちんころ小犬よ小犬
尾をふり尾をふりあそべよあそべ
山にも 海にも 町にも野にも
天のはてから小雪がふるよ
サラ サラ サラ


春の磯辺


うらうら 照つた
朝日の光
海の大波 小波も寄るよ
春の磯辺に
のつたり のたり
風が吹く吹く
そよかぜがふく
花も散らうか
さざなみの上に


春の唄


はやく桜がさけばよい
鳥も来るだろ 鳴くだらう
山にうぐひす 野に鶉

桜 さいた さいた
 町にもさいた
空もかがよう春の日に

お馬ゆるゆる来ればよい
きのふもけふも明日もまた
春が天気であればよい

さくら さいた さいた
 山にもさいた
春の景色は まっ白な


よしきり


青い蘆原 よしきりが鳴く
キリゝ キリゝ よしきりがなく
夏のあつさにそよかぜふいて
岸の浜荻
よしきりがなく



1922年から23年にかけて露風がたくさんの詩を寄稿していた児童雑誌、その22年8月号から翌年の6月号までに毎月1曲ずつ耕筰の作品が掲載されたのだそうです。
ここでは掲載順に並べましたので
1922年8月号 円いお月
1922年9月号 ほととぎす
1922年10月号 小鳥と蝸牛(ででむし)
1922年11月号 母鳥子鳥
1922年12月号 秋の夜
1923年1月号 星
1923年2月号 漁り火
1923年3月号 ちんころ小犬
1923年4月号 春の磯辺
1923年5月号 春の唄
1923年6月号 よしきり
おそらくもう既に雑誌の発売月は1か月早く出る習慣は根付いていたのでしょう。明らかにクリスマスが題材の「星」(1月号)や桜の描写の「春の唄」(5月号)などは1か月前倒しだとタイミングが合いますし、毎号季節感あふれる選曲となっていたのでしょうね。やはりまだ耕筰の本領発揮とは行っていないようで、どの曲もほとんど今では取り上げられることもないようです。

( 2015.09.26 藤井宏行 )