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3 Lieder   Op.48
3つの歌

詩: ハーリンガー (Jakob Haringer,1883-1948) ドイツ

曲: シェーンベルク,アルノルト (Arnold Schonberg,1874-1951) オーストリア ドイツ語


1 Sommermüd
1 夏の倦怠

Wenn Du schon glaubst,
Es ist ewige Nacht
Hat Dir plötzlich ein Abend
Wieder Küsse und Sterne gebracht.

Wenn Du dann denkst
Es ist Alles,Alles vorbei
Wird auch einmal wieder Christnacht
Und lieblicher Mai.

Drum dank Gott und sei still,
Daß Du noch lebst und noch küßt
Gar mancher hat ohne Stern
Sterben gemüßt.

もしもお前が信じているのなら
それが永遠の夜だと-
お前に突然 夕暮れは
くちづけや星たちを持って帰ってくれるだろう

もしもお前が思っているのなら
すべてが すべてが終わったのだと
すぐにまたクリスマスの夜になる
そして素敵な五月に

それゆえに神に感謝せよ そして静粛であれ
お前はまだ生きていると まだキスしていると-
多くの人々は ひとつの星をが持つこともなく
死なねばならなかったのだ

2 Tot
2 死んだ

Ist alles eins
Was liegt daran,
Der hat sein Glück,
Der seinen Wahn.
Was liegt daran!
Ist Alles eins,
Der fand ein Glück!

みんな同じことだってのなら
そいつが何だって言うんだ
ついてる奴もありゃ
思い悩む奴もいるのさ
そいつが何だって言うんだ
みんな同じことだってのなら
奴はついてたのさ
俺はだめだったけどな

3 Mädchenlied
3 娘の歌

Es leuchtet so schön die Sonne
Und ich muß müd ins Büro,
Und Ich bin immer so traurig,
Ich war schon lang nimmer froh.

Ich weiß nicht,ich kanns nicht sagen,
Warum mir immer so schwer,
Die anderen Mädchen alle
Gehn lächelnd und glücklich einher.

Vielleicht spring ich doch noch ins Wasser,
Ach,mir ist alles egal,
Käm doch ein Mädchenhändler
Und es war doch Sommer einmal!

Ich möcht ins Kloster und beten
Für andre,daß's ihnen besser geht
Als meinem armen Herzen,
Dem hilft kein Stern,kein Gebet.

輝いてるわ とてもきれいに太陽が
なのにあたしはとってもうんざりして職場にいかなくちゃなんない
あたし とっても悲しい
ずっと長いこと楽しい思いなんてしてない

分からないし 言えないの
どうしていつもあたしにはこんなに難しいのか
他の女の子たちはみんな
ほほ笑んで楽しそうにしてるのに

たぶんあたしは飛び込むことになるのね 水の中へ
ああ あたしにはどうでもいいわ
結婚斡旋人がやって来ようが
もう一度夏が巡って来ようが!

あたしは修道院に行きたい そして祈るの
他の人のために それはその人にもいいし
あたしのこのあわれな心にもいいのよ
どんな星も どんな祈りも救ってくれない心にも


作品番号は48と大きいですが作曲時期は1933年、まだヨーロッパを脱出していないぎりぎりの時期ということで詩はドイツ語です。彼にとってはそれでも最後のピアノ伴奏による独唱歌曲になります。亡命のバタバタの時期ということもあってでしょうか、彼はこれらの曲を書いたことをすっかり忘れていて、アメリカ亡命後に弟子のレイホヴィッツによって発見され、作曲者の許可を得て出版されたためにこの作品番号となったものです。
詞のナイトリンガーはどういう人か経歴は調べられませんでしたが、1883年生まれで1948年没ということで、日本での著作権は切れているようなので取り上げることとしました。今の蒸し暑い時期にぴったりの何だか狂気をはらんだ(ただのイジケのようにも読めますが)詩が3篇。十二音技法の無機質な響きに乗ってとても怖い歌が3曲続きます。1曲目の気だるさの描写は特に秀逸。中間部はちょっと急きたてられているようですが...
2曲目の投げやり感もこれを12音でやっているのか、と思うとなかなか面白いです。
3曲目は女の子らしく繊細ですがやはりちょっと妙な味わい。
詩を読みながら3曲続けて聴くと良い暑気払いになります。

( 2014.08.16 藤井宏行 )